イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

君のことが大大大大大好きな100人の彼女:第5話『効率的な彼女』感想

 四度目鳴り響く運命の稲妻! 今日のビビーンは効率重視のロボ系彼女だ!!
 矢継ぎ早に投入され得る新彼女に君は耐えられるか、止まったら死ぬ回遊魚系ラブコメアニメ、怒涛の第5話である。
 旧彼女三人を『明らかにそこ、三人で座るには狭いでしょ……』という理科室の座席にみっちり押し込め、目と目があった瞬間好きだと気付いた栄逢凪乃ちゃんと彼氏彼女になるまでを、一話でぶっちぎる回となった。
 この疾走感……人間なら大事にしなきゃいけない前フリとか余韻とかをどっかにぶっ飛ばした設計のおかげだが、一度刺さるとクセになるなやっぱ……。

 とはいうものの、溢れる作画力を主に眼の描写に山盛り投入し、凪乃を美しく可愛く描こうとする努力が良く効いて、急ながらも振り落とされない、イカレラブコメジェットコースターの楽しさも健在。
 バッチバチのまつげ、細く白く透ける髪の毛、クールな眼光が恋に狂っていく可愛らしさと、『この子はここが可愛いんですッ!』ていうプレッシャーが強い回だった。
 『AIなの』という、あまりにも属性ドリヴンな名付けからも分かるように、なんからなにまで記号論で回っている作品ではあるのだが、そうして貼り付けた個性とチャームポイントにどう血を通わすかに関して、パンパンにみなぎった気合を感じる。
 外見だけでなく、『わっち感情ないでありんす。なんもかんも計量可能でありんす』と取り澄ましているクールちゃんが、恋と出会った瞬間から超音速でバグり始めて、いかれて感情的な地金がモロモロ出る面白さ、可愛さも分かりやすく押し出してきた。
 眼というルックスの強み、秘めた感情という内面の武器が交錯する、『思いが溢れて涙を流す』瞬間をクライマックスに設定しているあたり、イカれた初期設定をゴリゴリに押し通すために、思いの外テクニカルな仕事もしてんだなー、と思った。
 俺はこういう、異様に研ぎ澄まされた技量を持つクレイジーが好きなんだ……。

 

 話の方は第5話四人目の彼女(イカれた算数だな、今更ながら……)にして、初の真っ当なデート回。
 出会いに今までの価値観と自分をぶっ壊され、見知らぬ感情に戸惑う凪乃の可愛さをたっぷり接種させた上で、非常にオーソドックスな遊園地デート(軽い狂気混じり

)で引き込んでくるの、無から生えた彼女を好きにさせる道作りが上手いなと思う。
 第3話もそうなんだけど、新彼女がファミリーに入るまでのお話はイカれっぷりをやや抑えめにして、真っ当にときめけるネタで殴りつけてくるの、緩急という意味でも感情の持っていきどころという意味でも、巧妙な手筋だ。
 まー静も凪乃も、心の底では暖かく人間らしい生活を求めつつも持って生まれた業がそれを許さない少女だったので、恋太郎との交流を通じて欲しかったものが手渡される描写があるのは、彼女100人ハーレムって狂気の在所に納得する上で、大事なことよね。
 どんだけイカれていても、そこでなら望むままの自分でいられるってんなら、ある程度の理と誠はあるじゃんねぇ……みたいな感じ。

 そして彼女一人ひとり違う『望むままの自分』を、引きずり出し受け止める所に恋太郎のダーリン力があるわけで、『自分は効率を求め続けるロボなんだ』と思い込もうとした凪乃に、自分じゃ見えない素敵な在り方をデートの中提示していくこととなる。
 彼女相手のイカれた献身を見ていると、いかに釣って理解らせるためであっても写真を焼くのは断腸の思いだったはずなんだが、苦悩を見せると獲物が逃げるのでクールな顔を作り続けるあたり、策士というか狂人というか……。
 今回の恋太郎はある種の図太さというか、衝撃的な出会いに脳髄揺さぶられ、触れ合う中で見えた”栄逢凪乃”こそが正しいんだという確信が分厚くて、結構新鮮な味わいだった。
 結果としてその強引さが凪乃の鎧をぶっ壊し、思いの雫を瞳から流させたわけで、相手に合った自分でいられる柔軟性ってのも、恋太郎の強みなのだろう。
 いやまぁ、そこら辺都合に合わせすぎるとキャラがブレる諸刃の剣だとは思うけどね!
 そういう落ち着いた判断は、どっかに置いて見る話だとも思うけどね!
 そういう保留した態度を時折横合いからぶっ叩かれて、『ナメててスイマセンした……』ってなるのが好きなんだけどねッ!

 

 多人数ラブコメのお約束に大真面目に向き合った結果、狂いきったポリアモリーで世界を包み込み、なぜだかほんわか日常テイストをまとい始めているこのお話。
 四人目彼女である凪乃はロボめいた効率重視を全面に押し出すことで、恋太郎の恋愛百人組手がどんな意味を持つのか、舞台設定に踊らされた狂ったノルマではないのかを、作品内部から問いただしていくことになる。
 明らか行き過ぎてるピーキーな設定を可能にするために、色んな物語的補助装置を貼り付けガタガタうるさい障害(”常識”の別名)を勢いでぶっ飛ばしているわけだが、そこらへんの補正がキツすぎるとラブコメのキモ……『眼の前の相手が好きだから、本気で向き合いたい』って柔らかさが消えていく。
 なので彼女たちは恋太郎相手だけでなく、彼女どうしでも過剰な仲良し感にガッツリ包まれ、『これは本気の物語なんです! どんだけイカれて見えても、私たちには唯一の人生なんです!』と実感を込めて叫びながら、きらら漫画みてーな距離感でキャッキャもしている。
 そこには彼女たち自身が彼女たちを大好きな、確かな実感がある……ように、強引ながら繊細に描写がねじ込まれていく。

 恋と感情を無駄だと切り捨てる凪乃が四人目に出てくることで、イカれ乱れた百人彼女の物語にどんだけの血が通っていて、その実感が凪乃を楽に自由にしていくかが、話の表にあぶり出されていく。
 恋太郎とのビビーンでスイッチ入ってしまった凪乃の人間の部分は、機械めいたクールビューティーとの対比で……あるいはそういうモノを置き去りに、凪乃がただただ真実凪乃でいられる尊さとして、良いものとして描かれ、受け止められていく。
 らしくない自分に戸惑う凪乃、らしさを維持しようとあがく凪乃はとてもチャーミングで、同時にらしさに縛られて不自由な苦しさもあって、『どうにか楽にならんかな、この可愛い生き物……』と見てて思う。
 そこに助け船を出す(出せる)のが恋太郎であり、物語のシステムが共用し補佐する恋愛の義務と特権以上に、恋太郎が好きになった人のことを真剣に考えれる恋太郎だからこそ、彼女たちは恋太郎が好きなのだと解ってくる。
 色々狂ってはいるのだが、その狂気を自覚した上でどうにか血の通った恋の質感、誰かの隣りにいることで満たされ自由になっていく自己実現の手応えを、作中に練り込もうと頑張っている様が、やっぱり僕は好きだ。
 それはテクニカルでありながらパワフルで、粗暴でありながら繊細で、作り物めいた匂いと本気の熱量を、不格好な力みの中で感じさせてくれる。
 そういうチャーミングな矛盾あるお話が、僕は好きなのだ。

 

 というわけで、四人目彼女の紹介&参入回でした。
 『俺たちは100人それぞれの個性と可愛さ、生きづらさと願いを持つ彼女たちの輝きを、本気で描き切る……』という、アニメスタッフの気合を感じられる仕上がりでした。
 めちゃくちゃシンプルに、可愛い女の子の可愛い所をたっぷり見れるのがありがたいアニメなの、ホント偉いと思うよ俺は。

 やっぱ参入回は新彼女にフォーカス当たるので、羽香里たちの出番は抑えめだったわけですが。
 珍奇なロボ彼女を身内に引き入れ、更に拡大していく屋上の聖域(サンクチャリ)がどういうタガの外れ方をするのか。
 クールに尖りすぎてて友達もいなかった凪乃が、同じ人を好きになった仲間とどういう関係作っていくのか。
 艶のあるアニメの描線が、彼女たちの水着をどんな塩梅のエロティシズムで削り出してくるのか。
 次回も大変楽しみです。