戦ってるのはドス黒いハラワタ抱えた大悪漢、横槍もちゃぶ台がえしも当たり前!
予定していた戦術全部がひっくり返り、状況に応じた最適解を現場でこねくり回しながらの頭脳戦が展開される、ドクストアニメ三期第16話である。
『まー大体こうなるんだろうな……』みたいな見取り図を露骨に見せびらかしていた時点で、なんもかんもひっくり返されるのは予定の内って感じもあるが、小心で卑劣であるがゆえのイバラの抜け目のなさが、いい塩梅に危機を呼ぶ回となった。
ドローンでの綱引きも、フード軍団による詐術混じりの圧倒、モズとの呉越同舟もも瓦解したが、本丸をがら空きにして全土制圧を狙ってくるイバラの思惑を逆手に取り、軍事ではなく正統後継者ソユーズを活かした政治で勝ちに行く、新たな戦い。
首領は再生不可能なまでバラバラにされているし、イバラの悪行を暴露する素材としてもこのまんまじゃ使えないが、悪党にされるがまま諦めたんじゃ”少年ジャンプ連載”の看板がすたる。
不屈の闘志と付きない知恵、絶対の信頼と友情でどんだけ立ち向かえるのか、宝島決戦最終局面が加速する!! ……って感じのお話である。
事前に予定していた勝ち筋そのまんまやられても面白くはならなかったし、イバラが悪くて油断できない相手であるほど、立ち向かい乗り越えた時のカタルシスはデカい。
科学の申し子である千空が様々な閃きで大ピンチを乗り越えここまでたどり着いたように、邪悪な妖術使いたるイバラも斥候の残したヒントに勘づき、情報戦で上を行って、あと一歩で勝ちを拾える秘策を用意した上で牙を剥いてくるのだ。
この油断ならない感じは、長かった宝島編の幕を閉じる上で、とても大事だと思う。
自分たちが良いようにハメられてると気づくタイミングも良いし、一回テーブルに用意した戦術が全部ぶっ壊れた後、目の前の状況と戦力で可能な逆転の秘策をすぐさま編み上げるところも、天才児率いる科学王国らしい戦い方だ。
権勢欲に溺れたマグマの暴走ってイレギュラーもありつつ(巻き込まれたゲンちゃんはマジ不幸)、何も予定通りにはいかない戦争行為のリアリティを、油断ならない劇的展開に上手くまとめ上げ、次回に繋ぐ運びとなった。
銃も予定通りヨウの手には収まってないし、本当に事前に見せてた策が全部おじゃんになったのだなぁ……。
掟破りの全土石化は、島民のこと塵芥とすら思っていないイバラらしい秘策なのだが、本丸を殻にする諸刃の刃でもある。
知略に長けた悪党の策謀を、逆手に取って正しさで勝ちに行くルートを組み立て、2チームに分かれて突き進んでいく展開は、一糸乱れぬ信頼が前提にある。
これがない(どうでもいい)からイバラはメドゥーサっていう絶大な暴力装置を権力の前提にしているし、暴力の正面衝突では絶対勝てない科学王国最大の武器は、ピンチを恐れず為すべきことを為すチームワークとなる。
モズとの同盟が機能する前に破綻したのも、付け焼き刃のギブアンドテイクには命も未来も預けられず、地道に生活を共にすることで生まれる信頼関係こそが、主役たちの足場だって話なのかもしれない。
結局仲間とスクラム組んで、適材適所の以心伝心で立ち向かっていくのは、青臭い友情こそが最強の武器なのだと、堂々吠えるべき”少年漫画”らしくて好きだね。
イバラの抜け目なさは、手薄になった警戒を攻める千空の策に先んじているようにも見える。
バラバラに砕かれた頭首を蘇らせることは叶わないが、記憶を取り戻し熱い決意の涙を流すソユーズの思いは、はたして悪漢に引き裂かれた父の尊厳を取り戻すのか。
なかなかいい感じに、油断のならない状況になってきた。
何度も作中言われているように、正面から軍事力をぶつかり合わせても科学王国は勝てないし、死人が出る戦いは彼らの求めるものでもない。
知恵と勇気と正しさでもって、偽りの支配を終わらせ政治的な勝利を遂げるという目的が、目論見全部ひっくり返されたことでより分かりやすくなった感じもある。
此処から先も幾つものイレギュラーが飛び出し、混迷を極める状況の中で何が出来るのか、何をするべきなのか、即座に見通す知恵が勝敗を分けていくだろう。
しかし解っただけでは戦争には勝てないわけで、目的を現実に変えていくべく命がけのピンチに飛び込みチャンスに変える、烈火の如き実行力も問われることになる。
考え、実行し、掴んだ結果を元にさらに考える。
宝島を舞台に遂に戦争が始まったわけだが、それはお互いの思惑が交わる予測不可能なカオスであり、千空たちは今まで散々やってきた科学的方法論でそれに立ち向かっていく。
そんな限界ギリギリの戦争科学実験は、どんな答えを導き出すのか。
いい塩梅にグツグツいってきて、次回も大変楽しみです!