イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第40話『なかよち♡ エルちゃんけっこんしき☆』感想

 誓いは永遠、我々は家族!
 果たしてそれは本当か、幼くも健やかに育ちつつある心達の景色をスケッチする、ひろプリ第40話である。

 いやー……変な話だったねッ!(初手ブッパ)
 タイトルになってる結婚式はあくまでフリでしかなく、成長著しいツバサ君に置いていかれたような気分になった、これまた成長著しいエルちゃんがちょっとだけ可愛いワガママいって、ガキの戯言に真面目に付き合いすぎてる虹ヶ丘邸の面々が姿勢を正して、今日も明日も不思議な家族生活は続く……という。
 ひとつ屋根の下に暮らしつつ、下宿人でも家族でも恋人でも友人でも戦友でも、名前のつく関係が明瞭にはない虹ヶ丘邸の人たち。
 その曖昧さに真っ向向き合った結果、なんとも不思議な食感の話になっていて、しかし間違いなくひろプリでしか出来ない/やらない、嘘のない話ではあって、それを飲み干した感想を一言でまとめると『変な話だったねッ!』になる。
 僕はヘンテコであるかより、自分たちであること、積み上げてきた物語に嘘がないことのほうが大事だと常々思っているので、ひろプリらしくヘンテコだった今回はめっちゃ評価が高い。
 年齢も出身世界も未来の夢もバラバラで、でも同じ場所で生きて触れ合っている、名前のない関係。
 一年間紡いできたそのヘンテコ、結構悪くなかったなと思える回で良かったです。

 

 虹ヶ丘邸メンツのヘンテコなところは、ファンタジー要素を持ち込んだ結果『赤ん坊⇔妙齢の少女』とか『少年⇔ぷにバード』とか、在り方が自在に変容するメンバーがいることも原因だと思う。
 鳥だろうが人間だろうが精神的アイデンティティが変わらない、むしろキュートな鳥ちゃんであることが少年としての志に綿密に繋がっていると描かれてきたツバサくんはそこまで当惑しないのだが、プリンセスエルとしての幼い精神性と、キュアマジェスティ時の外見相応の発育がどう繋がっているのか、客観的にも主観的にも記述が薄いエルちゃんがどういう存在か、位置づけるのは正直難しい。
 その難しさもひっくるめて『まぁ、エルちゃんだしな……』でとりあえず飲み込むことを、マジェスティ三部作で自分は決めたわけだが、赤ん坊が二本の足で立ち、ミルクから離乳食を経て自分の手で噛みごたえある飯を食う所まで育つの見てきた中で、”エルちゃん”がどういう子なのか、心の置所にもやっぱ迷ってるな、と今回思った。

 一年という放送枠の都合上、赤ちゃんだったエルちゃんは特にファンタジーな成長促進にも言及されぬまま、尋常ではないスピードで心身を育んできた。
 それが今回、置いていかれる寂しさにツバサくんを突き放したり、彼を独占する付箋だらけのご本を隠そうとしたり(隠せてないのが可愛い)、いつまでも天使じゃねぇゆらぎを生み出している。
 そもそも騎士ってアイデンティティで最初の変身を果たして、戦士として少年として夢と理想にまっしぐら駆け抜けた結果、エルちゃんだけの手を握ってられなくなったツバサくんの成長が、微かな揺らぎの原因でもある。
 ガキの小ずるさに真面目に向き合いすぎてる感じもあるが、何事にも戯れが出来ないのがひろプリメンバーなわけで、健全な発育の結果色んなことを引き起こすエルちゃんに本気なのは、彼ららしく誠実で良かったと思う。
 アゲハさんのアシストもあり、自分とエルちゃんの正しい距離感を掴み直してツバサくんは、ナイトの誓いを再び立てて、エルちゃんの手をもう一度握る。
 『それナイトかぁ? お兄ちゃんじゃね?』ってツッコミもあるが、『お兄ちゃんナイトと立派な騎士だろうがッ! ”志”があろうがッ!!』と自分たちのヘンテコに気概があるのがひろプリの良いところなので、あれは立派な誓いだったと思うぞ。

 

 仲良し家族にも変化はあって、しかしそういう揺らぎもひっくるめて悩んだり楽しんだりしながら、ずっと一緒。
 異世界人を多数含む彼らの共同生活が、放送枠終わった時どうなっているのか……えらく長くタメられてるエルちゃん出生の秘密を暴いた後、みんなどこへ行くのか。
 今回結論として描かれた幼子の優しい祈りもも、けして永遠ではなく揺らいでいくだろう。
 しかしそれは、けして悲しいことではない。
 愉快に誠実に、ドタバタも楽しみながらみんなで一緒に進めたら、きっと良いところへたどり着いていく旅だ。
 それが型どおりではなくて、なんかトンチキでヘンテコでも自分たちらしく、独自の形をしてて良いんだよと笑いながら告げてくれるような回で、僕は好きだ。
 スカイランド婚礼儀式の奇習っぷりは、正直かなりビビったがな……要所要所で、ハレワタールさんのズレた感じをふわっと許容して、楽しみながらパートナーシップを深めていくましろさんが描写されるの、俺大好き。


 ごっこだった結婚も本当に永遠の誓いになるかもしれないし、それとは違う未来がエルちゃんとツバサくんに開けているかもしれないし、何でもなれる可能性が二人の前には広がっている。
 キュアウィングとキュアマジェスティ、素敵なドレスを着込んだ二人だからこそ、あり得るかもしれないロマンティックを幻視できる構成でまとめたの、僕は凄く良いと思ったな。

 まーエル公、恋を知るどころか継続的な二足歩行も難しい立場なわけで、今後何がどうなっていくかなんてさっぱり解んねぇし、マジェスティ時に感じた複雑な思いが赤ん坊にどう焼き付いてんのか、作中の描写じゃ欠片も解んねぇから、自分なりの理解を落ち着けるのも難しいんだけど。
 エルちゃんとマジェスティの描写を見てると、思いの外身体的・社会的年齢と、そこに付随するだろう精神的状況を大事な鍵にして、他人との向き合い方を決めている自分を教えられる感じがあるね……。

 虹ヶ丘邸の暮らしは楽しいことばかりが起こる、生活の戯画……ある種のごっこ遊びな部分があると思う。
 それいったらプリキュア自体が現実の戯画ともいえるわけだが、しかし戯画だからこそ描ける理想というものがあって、それはこの物語をいつか思い出すだろう白紙の記憶に、確かに煌く導きの星にこのアニメがなって欲しいという、作り手の高望みが反映されたものだとも思う。
 ひろプリが家族とも友達とも戦友と恋人とも、名前がつかず不鮮明で、しかし一年間確かに結構本気でお互いを思いあって生活する様子を積み上げてきたのは、いつか自分と自分たちのなにかに名前がつかないことに悩むかもしれない誰かにとって、大きな価値のあることだと僕は思った。

 結婚式を扱いつつ恋愛要素は欠片もなく、メインカップルは赤ん坊と鳥で、彼らは騎士とお姫様に変身できる、血の繋がらない家族で……。
 何もかもヘンテコで、でもその繋がりに嘘はなく。
 素敵な二人の、40話積み上げてきたからこそ生まれる”今”をちゃんと書いてくれた回で、大変良かったです。
 プリキュアは毎回、それぞれの在り方でヘンテコなんだけども、俺はそここそが好きなんだなぁと今回思った。
 ”多様性”という綺麗で大仰になりすぎた言葉だと取りこぼす、ファニーで素敵な生の手応えが、今回描かれた虹ヶ丘邸の奇妙な婚礼にはあったと思うよ。

 

 そして次回は門田再び、待ってましたのましろさんメイン回!
 ……このペース、敵さんサイドの真相掘り下げは年末年始で一気にやり切る腹づもりだな……。
 バッタモンダーの生々しいクズっぷりをどう料理するかも気になるけど、地に足付いた夢を手に入れ”無敵”となりつつある虹ヶ丘ましろの人間を、どんだけ見せてくれるかが彼女のファンとしては楽しみです。
 俺は、虹ヶ丘ましろが好きだ。(幾度目かの宣誓)
 次回も大変楽しみです。