イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルバスター:第7話『シロ、暴走!閉じ込められた仲間を救えるか?ブルバスター初の市街地戦!』感想

 忠犬は二度死ぬッ!
 新入りとオッサンが強すぎる我をゴツゴツ言わせる中、アルミちゃんが悲しき涙を夕陽に溶かす、ブルバスター第7話である。

 今日も今日とて波止工業の空気は大荒れ、金はないし人間関係はガッタガッタだし事件は多いし、しかしそれなりに前進はあった。
 サンプル固体の思わぬ復活により、巨獣の市街地への流入を許したが二階堂社員の奮戦により駆除に成功、石部金吉に思えた鉛社員のIT社会活動により、ウェブを通じてより広い場所に巨獣駆除・災害復旧を持ち出せた。
 シオタバイオも水原研究員を室長に巨獣研究室が正式発足、湖底を調査して巨獣発生の謎に迫るのはこれからッ! って所まで来た。

 沖野くんの若く青臭い自我から棘を抜き、真実ヒーローにしていく物語はまだまだじっくりと続くが、全体的に障害として描かれてた所をジワジワ攻略し、中小企業ガッツストーリーらしい歩みで達成感を生んでいたと思う。
 閉鎖空間で描かれた、圧迫感のある巨獣アクション。
 用水路をヌボーっと突き進む不気味さが未来の惨劇を予測させた、市街地での激突。
 元番犬があんだけの起動を見せる驚きと併せて、巨獣戦の描き方も良かった。
 まぁ興奮ばっかもしてられなくて、愛犬との絆だったろう犬笛で隙を作って、怪物になっちゃった家族の目を見ながら水中銃でぶっ殺したアルミちゃんの気持ちを思うと、あんまりに哀しくはあった。
 この事件を経済効率一本槍で終わらせられない、島民という被害者の存在。
 アルミちゃんは波止内部でそれを代表できる唯一の存在なので、涙すら他人には見せれない悲愛を一身に背負うのは”役割”というやつなのだが、それにしたって辛すぎる……。
 ここら辺の湿っぽい感触は、ちっぽけな一企業が激ヤバクリーチャー案件に立ち向かってる、作品特有のサイズ感を見ているものに馴染ませる上で大事だと思う。
 『良い書き方だな』とメタ視点で評価する自分と、『アルミちゃんかわいそう……誰かが彼女の涙を受け止めんといかんでしょ!』と前のめりな自分、今二人いるな……。
 そういうスタンスで見れてるこのお話、結構良いアニメなんかもしれない。

 

 前回スーパー四角四面マシーンとして動いていた鉛くんは、今週も理論的すぎて一般的な感情のやり取りと噛み合わない。
 行動力がありすぎて、場面を停滞させたいときはベッドに縛り付けられている武藤さんの激情主義とは相性最悪で、さもありなん……って感じ。
 同時に表情から心情が伺えず、自分の感じていることを他人に伝える手段がないだけで、島流しにされた地の果てで色々感じ入るものはあり、他の社員が見つけられない突破口を、ソーシャルIT技術を駆使して切り開いてもくれた。
 武藤さんや片岡さん、より悪い形で猪俣のオッサンがぶん回す、古臭いスタイルと、鉛くんや沖野くんが当然と感じている新しめのやり方を対比し、対話させ、現代的な解決策につなげていくのが、多分このアニメの作風だ。
 オッサンたちが『良く分かんねぇ』で投げているIT技術を、酒を交えた寄り合いでは出てこない微かな本音引っ張り出すために使って、巨獣の存在を公にした上で対応していく、より自然で継続可能な営業体制を可能にしたのは、鉛くんのお手柄だ。

 ロボ開発だけでなく広報や営業なんかにおいても、今回鉛くんがむっつり成し遂げた刷新は沖野くんにも出来そうな感じがあって、しかしすンゴイみみっちく情けない所にしがみついている彼は、そんな”らしさ”を開放できていない。
 陰気でコンプレックスまみれのナード野郎が、ようやく見つけた(と思い込んだ)会社という居場所が、追放されたいけ好かないエリートに横取りされてしまう危機感が、沖野くんをつまんねー人間にしとるのだろう。
 そういういらない荷物を自覚し、捨て去り、隣に立ってるムッツリ野郎が敵ではなく味方なのだと分かるお話は、今後の鉛くんパイロット特訓編で描かれるんだと思う。
 つーか主役がコンプレックスの泥まみれのまんま、話が進むと作品全体がメッチャ濁ってくるので、とっとと結び目解いて素直に飲めるようにしてくれ……。
 同時に酸いも甘いも噛み分けられはしない、21才の”若さ”の描き方としては結構嫌いじゃなく、今回鉛くんの内心を覗き込んだような手付きでここを解してくれると、いい感じのカタルシスも得られそうだ。
 最悪の関係から最高のパートナーシップが危機の中で生まれるドラマは、推進力が高い定番ネタでもあるので、鉛×沖野がどう転がっていくかは大変楽しみだ。

 

 そんな若人二人を横において、再生を果たしたシロが研究所で、市街地で大暴れ!
 凶悪なバイオクリーチャーの泣き声が、どこかフツーのワンコロの色を残しているのがなんとも物悲しくて、しみじみ『どーにかせんといけないだろ、巨獣災害……』という気持ちになった。
 動物で”泣き”を作る安易な作風……と言えなくもないのだが、一番の当事者であるアルミちゃんがタフな外装で涙をこらえる健気さをもっているので、あんまベタついた感じはないのが良い。

 良くねーよッ!!(自分の発言に激怒マン)
 島に立ち入って色々やる立場にありながら、愛犬が怪物になって実験動物扱いされ、死んで蘇ってもう一度殺すしかないやるせなさ、アルミちゃん一人に背負わせていいのかッ! という話よ。
 鉛くんと沖野くん見てれば分かるが、波止工業は腹割ってお互いの人生背負いあうような状況にはまだないので、アルミちゃんの哀しみに踏み込む余力は当然皆無なのだが、被災者代表でもある彼女を孤独にさせているってことは、会社が果たすべきミッションを放置しているも同然に思える。
 今後もクセの強い社員がバチバチぶつかりながら、ちょっとずつあるべき形に会社が、社会が、個人が整っていくと思うのだが、そこに二階堂アルミという人の心に向き合った対応を、ちゃんと果たして欲しいと思う。

 折り返しを過ぎて、乗り越えるべきノイズを長めに残響させる作風だとは解ってきたので、アルミちゃんの孤独を波止が抱きしめてあげる描写は、あるなら終盤だろうなー、とは思う。
 今はバチバチ衝突しているそれぞれの個性が、それぞれにしか出来ないやり方で突破口を生み出し、チームになっていく気配もいい塩梅で漂ってきているので、『やってくれる』つう期待感はちゃんとある。
 んだけども期待はあくまで期待でしかなく、スカされる時も多々あるわけで、早いとこアルミちゃんへのケアは欲しいわね……アタシ、あの子好きだから。
 『寡黙な表情の奥に、強い思いを秘めてる』って意味では、鉛くんと通ずる部分があると思うので、ここらへんを上手く共鳴させてなんかいい所に引っ張って言ってくれると、俺好みの展開で嬉しいかな。

 

 と言う感じの、巨獣シロ事変決着のエピソードでした。
 肝心な場面で水ぽちゃ行動不能になった、ブルバスターの改修フラグもしっかり立てて、ロボアニメとしてもキッチリやっとるなー、って感じ。
 あくまでブルバスターが重機であり、予算と技術的限界に縛られた道具としてのロボットであると書き続けているのは、作品の雰囲気を固める上でかなり大事な仕事していると思います。

 無敵のスーパーロボットが何もかも打ち砕いてはくれない、問題だらけのお仕事。
 その中であるべき自分を見つけ、為すべき課題に取り組む中で、人はどう変わりどう繋がっていくのか。
 噛み砕きにくいがコクが有る鉛くんを触媒に、チームモノとしての美味しさも出てきて、次週も大変楽しみです!