イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

星屑テレパス:第6話『乾杯イニシエーション』感想

 武じゃなくて同好会! 予算はゼロで顧問は素人!
 それでも記念すべき私たちの第一歩目なら、秘密基地でコーラを飲み干そう!!
 そんな感じの新章開幕、追いかけるべき具体的な目標が形になってくる星屑テレパス第6話である。

 瞬というブースター兼制御装置が作品にツッコまれて以来、なんかふんわかと自我にまつわるアレソレをこねくり回すのではなく、分かりやすい手応えが作品にガッチリ絡んできた。
 やっぱ彼女がもってる常識的な感覚、イライラ燃え盛りながら突っ走れるバイタリティというのは、いかにもきらら時空に適応したぽわぽわ生命体とはちと違う頼もしさを宿している。
 今回も部活の細かいところにギャーギャー言ったり、今後同好会が追うべき具体的な夢への道を拓いたり、ツンツンしつつも仲間との絆を太くしたり、八面六臂の大活躍。
 コレに引っ張られる形で、海果の形のない変化に芯が入る……というか、モデルロケット大会に挑む中で海果の人格、コミュニケーション能力が向上していく筋道が立った。
 ……フツーの青春部活モノの形をが整うまでに、1クールの半分使ったけども、話の中核はコミュニケーションだと思っているので、まぁ良いかなと個人的には思う。

 

 

 

画像は”星屑テレパス”第6話より引用

 同好会でも部費がなくても、海果にとって今の生活は光に満ちて眩しい。
 今までとちょっと違う、色彩の落ち着いた画面づくりの中でも、友達が待つ学校へと向かう朝の光は強く眩しく、海果を導くものとして描かれている。
 ちょっとずつでも昨日より望ましい自分になっている日々、灰色の宇宙で孤独なのだと思わなくて良い時間は一点の曇りもなく楽しくて、それを誰かに伝える手段も海果はちょっとずつ、自分のものにしつつある。
 この拙い自己表現を、OPが”点と線”……伴奏に交じるモールス信号音として描いているのは、なかなかに面白い。
 直接伝えるのではなく、複雑なコードを解読し復元する必要はあるのだけども、だからこそ手間をかけて相手を理解しようとしている真心が、形になりやすいコミュニケーション。
 そういうモノを、瞬が仲間に加わったことで具体性を増した同好会活動は生み出してくれる。

 それは海果の一方通行ではなく、要所要所で瞬が海果を視るッ!
 自分に向けて放たれた信号に、ドキッとした表情を浮かべる瞬間を切り取る!
 『”うみまた”……あるッ!!』と、おもわず力強く拳を握る描写が毎回あってありがたいが、ブツクサ文句たれつつポンコツ同好会活動、瞬にとっても喜びであり救いなのは間違いない。
 自分が周囲から浮くきっかけになった”好き”を笑顔で受け止め、共に高みを目指すための共通知識として、喜んで聞いてくれる。
 そういう環境を実は待ち望んでいたことが、「めっちゃモデルロケット語るやん……』な瞬先生の放課後授業から良く伝わってくる。
 メインテーマに据えたものが具体的にどういう難しさとやりがいがあるか、ガッチリ語ってくれるのは大事なことであり、ここら辺の説明役としても瞬優秀だなぁと感心ね。
 結構硬い話にもなるのだが、SD表現交えてポップに可愛く、肩の力を抜いて楽しめる感じでやってたのも良かった。
 マグカップのデザインとか、細かいところが毎回すげー冴えてるのはこのアニメの強みだと思う。

 ドタバタながら楽しい青春という風情で転がっていく話だが、おでこパシーが万能の武器ではないかも……つう微かな陰りも、勝手に見つけた。
 ユウは持ち前の気質と記憶の欠落の合わせ技で、海果が寡黙な熱意で理解できるロケット知識を全然飲み込めない。
 おでこパシーでチートしようとしても、情報を咀嚼して意味を引っ張り出す素地がないので、ノイズを受信するだけで終わってしまう。
 宇宙人の異能は孤独に悩む内気少女の特効薬にはなったが、それが解決できない問題も当然世の中にはあるのだ。
 ユウの苦手分野で海果が頑張れる描写があったので、壁にぶつかってユウが悩む……悩むことを許される一キャラクターになったときこそ、海果がずっと望んでいる恩返しのチャンスかなーと思う。
 おでこパシーがなくても、海果はユウが手渡す暖かさとありがたさをしっかり理解し、喜びを交流させるコミュニケーションが成立している。
 一方的に与えられるだけの関係性が、細かい計算や作業やんなきゃ話にならないロケット同好会に挑む中でどう変化していくかも、今後の注目ポイントだと思う。

 

 

 

 

 

画像は”星屑テレパス”第6話より引用

 同好会という形を手に入れ、海果は自分たちが何をするのかを実地で見に行く。
 なーんも知らねぇけど『変わりたい……何者かになりたいッ!』という生徒の熱意を真摯に受け止め、顧問として同じ景色を見に行こうとする笑原先生はマジで偉い。
 ここでもうみまたはめっちゃキてて、専門知識が分厚い瞬に海果はイチイチ感心するし、そんな海果が新しく出会った憧れの形に、奇妙にこじれた感情を瞬が向けてる様子も感じ取れる。
 憧れの視線で見上げられること、そうして海果の思いを独占することに、コミュニケーションに飢えている瞬がズブズブハマってきてて、ちょっと幼い独占欲がメラリと燃え上がってきてる描写……俺は好きですよ。
 ここら辺の”乾き”はコミュニケーション強者であるユウや遥乃にはないもので、今海果が充実している現状の裏側でもあるので、主役の根源に近い場所にいるって意味でも、瞬はやっぱり特別だ。

 彗という具体的で大きな目標が物語におっ立って、コレを追いかける形で同好会活動に芯が入っていくのも、とても良いと思う。
 「やっぱ大会フォーマットは、学生束ねて扱う上で便利だなッ!』って、スレたメタ視点がないわけじゃないが、校外のロケットエリートの背中を追いかける展開になってきたのは、何かと湿りがちな同好会の風通しよくして、海果の世界が広がっているのだと示す上でいい手だと感じた。
 強い共感能力、あるいは宇宙由来の異能で”解ってしまえる”のは、コミュニケーション願望と現実の狭間で揺らいでいる海果が姿勢制御する上でとても大事なことで、同時に”解ってもらえる”心地よさに安住してしまう、危うい罠でもあろう。
 だから色んな気持ちよさをぶっ飛ばして、話を転がす推進力がある瞬が出てきたんだろうし……実際、彼女がいるからこそ話が転がってきてるしな。

 その瞬もキツいこと突きつけて話を転がすだけじゃなく、海果が不器用ながら発している真心の信号を、受け取って自分の喜びにしている当事者としての描写が、しっかりある。
 学校に来て、同好会で海果と触れ合ってどんどん心の深い部分に、陰気でウジウジしてて真剣で自分のことを褒めてくれる女が、入り込んでいっている。
 この海果-瞬ラインが太くなるほど、あんま他人に食い込めていない遥乃の浮きっぷりが目立っても来て、ここらで一発ドカンと強いの欲しい気持ちではある。
 『灯台下の秘密基地は青春が暴れまわる最高のロケーションなんだが、それを用意した以上の”お前”を物語の中で見せろよ! アシストするだけじゃなくシュートしろ!』って感じ。

 

 ここらへんがどう転がるか含め、具体的な目標が定まったロケット同好会の明日は明るい。
 みんなが優しく微笑んでいる夕焼けに、海果が見つけた光が眩しいエピソードでした。
 本気でなにかやるならゴツゴツぶつかる部分もあるはずで、ここを乗り越えていくことでまた一歩海果(と瞬)は成長するだろう。
 穏やかなコミュニケーション強者にも成長のボールが手渡されるチャンスがあるはずで、後半戦をどう展開させていくか、なかなか楽しみです。
 読心異能の助けもあって、初手から”仕上がってる”感じがあった”ユウうみ”の身体接触の近さに、間接キスを意識しおでこぱしーをツッコむ瞬の倫理が釘を差してきてるの……そうしてツッコむことであの間合いの意味が際だってきてもいるの、個人的にメッチャ面白い。
 次回も楽しみッ!