イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第41話『ましろと紋田の秋物語』感想

 秋風に散りゆく落葉に、少女と負け犬はそれぞれ何を見るのか。
 残りニヶ月ってタイミングでようやく来た、敵さんサイドの掘り下げ回。
 ひろプリ第41話である。

 季節の味わいが豊かなのはひろプリの好きな所で、今週も独自ののんびりした空気が漂っていてとても良かった。
 虹ヶ丘ましろメインってだけで、彼女のファンである僕は点数甘く付けるわけだが、天真爛漫でかわいいだけでなく、夢に向かって地道にシコシコ、時に思い詰めながら頑張っている様子がちゃんと描かれていて、なおのことありがたかった。
 あのまま家で張り詰めていたら、バラバラだからこそ美しい落ち葉にインスピレーションを受けることもなかったし、乾ききったバッタ野郎の心に希望の種を撒くことも出来なかっただろう。
 なのでグイグイ公園に引っ張っていったあげはさん&ソラちゃんは偉いのだが、めっちゃナチュラルにお体に触ってくるソラ・ハレワタール氏がスルッと出てきたの、かなり迫力あったな……。
 形ある手触りでもって愛する人の実在を確かめたがるソラちゃんの熱量、ましろさんだけに向いてる感じなの好きなんだよなぁ……。

 

 味方サイドはそんな感じに秋風にマッタリ過ごしていたが、敵さんはヒネた視線で負け犬人生贈ったり、顔色一つ変えねぇ暴力装置だったり、それがようやく自分たちのこと語りだしたりで、結構珍しい展開となった。
 『こういう話、もうちょい序盤でやっておくもんじゃね?』とはぶっちゃけ思うが、そろそろ話をたたみ出さないとおっつかない頃合い、ギリギリ間に合う点火タイミング……かなぁ?
 アンダーグ帝国が力こそ全ての超差別社会であり、そらー豚もバッタも他人踏みつけにして自分の立場を作りたがる、クズ量産国家だわなぁと解ったり、そこに個人的な忠愛込めてスキアヘッドがご奉仕していたり、色々理解ることが多かった。
 あのハゲ登場以来、徹底してドラマに尺を使わない暴力装置であることを貫いてきたので、自分を語る言葉もってたのは正直意外。
 まぁあのまんまバトルノルマを発生させる無言の機械でいても、欠片も面白くはなかったので、ゴリゴリ感情出して事情を喋ってくれるのはありがたい。

 ましろさんが素敵で綺麗だと感じた落ち葉を、バッタモンダーは自分と同じ薄汚れた敗者だと、視線を下に固定してつぶやく。
 怖がりで弱い素の自分だと、ただただ搾取され殺されるだけの最悪国家において、負けること、弱いことは許されざる悪徳だ。
 だからバッタは他人に悪辣に振る舞うことで自分を強い位置に押し上げて、生きるに足りる強者として飾り立ててきた。
 そういう立場からすれば、地面に落ちた葉っぱはただのゴミだ。

 

 しかし地面に落ちることにもまた意味があるべきで、散りゆく弱さに趣を見つける絵本作家見習いの視線は、非常に素直にあるがままの弱さを肯定する。
 それはけして強いとはいえない人見知りな心のまま、誰かのために闘える強さを学び取って、それを戦場以外の人生でも活かしているましろさんだから、見つけて認められるものなのだろう。
 このましろさんの率直さ、飾らない強さは環境の産物でもあり、どんなましろさんでも『凄いです!』と心から褒めてくれる、異世界から来たLOVE戦士のおかげでもある。
 アンダーグ帝国にはそういう、自分とは違うからこそ愛しい誰かを認める文化は存在せず、他者は利用し踏みつけるものでしかなかったから、バッタもああいう生き方をしてきた。
 その違いが、落ち葉を見つめて二人が何を感じるかの差異に、繋がっている感じもある。

 あんだけ逆恨みと暴力的虚飾に歪みながら、バッタの臆病な本質、だからこそ力に脅かされない平穏を求める気持ちは、暗闇の中小さく輝いている。
 極めて純粋なましろさんは、バッタの芝居の奥に何があるかを見抜くことはないけども、他人を疑わない真っ直ぐさがバッタの鎧を引っ剥がし、弱くて臆病な自分に、向き合う素地を作ってるもいた。
 あるがままの自分は怯えてばっかの弱虫で、それが強者を演じるから他人を不幸にしたり、無理な背伸びで本質を隠したりもする。
 バッタがまだ向き合えてない真っ白な自分に、ましろさんは一足先に取っ組み合いを挑んでいて、だからこそ自分が何をしたいのか、世界がどんな色をしているのか、地面に足をつけてちゃんと見ることも出来る。
 そういう靭やかで優しい強さは、プリズムに変身してもしなくても総身にみなぎっていて、そういうモンが確かに届いたから、バッタは虹ヶ丘ましろになりたい自分を微かに、見出してんじゃないかなと思う。
 ソラちゃんの融資に憧れて戦士になったましろちゃんが、臆病を暴力で覆い隠すあまりにありふれた虚栄に毒されてるバッタモンダーに、そういう影響を与えれる存在になっているのは嬉しいもんだし、秋景色とよく似たしみじみ染み渡る”善さ”こそが彼女の強さだと、もう一度語ってくれたのも良かった。

 自分が強い、侵されない存在なのだと安心するために他人を暴力で踏みつけにする行為は、許されるべきではないけど世界にありふれすぎている。
 手っ取り早く自分の立ち位置を確保するべく、あるいはそういう安楽だけが世界の摂理だと認めてしまっている環境の中で、己を鑑みることも改めることもなく、強さの神話であるがままの弱さを否定した結果、ひねくれネジ曲がったバッタモンダー。
 その在り方は、なんだか凄くよく居る悪で、ぶっ倒してハイおしまいって感じでもないなと僕は思う。
 なのでましろさんとの触れ合いを通じて、彼の凡庸な悪と嘘がどっかに居場所を見出して、なんかいい感じの所に収まると嬉しいなぁ、と感じてもいる。
 残り話数はけして多くはないが、なかなか改心しきれないバッタ野郎がどういう生き方を選ぶのか、そこにプリキュアがどういう影響を与えるのか、書ききってくれると嬉しいし、面白いと思う。

 

 という感じの、最終コーナー回った後の悪役サイド猛追回でした。
 エルちゃんシフトに前のめりになりすぎた結果、敵の彫り込みを大胆にかっ飛ばしてきたひろプリですが、話が一応以上の決着を迎えるためには、描かなきゃいけないものが確かにある。
 スキアヘッドに『未熟』と切り捨てられたソラちゃんが、次回己のヒロイズムに悩む話が来そうですが、そこでももう一掘り、主役を映す鏡がどんな色なのか踏み込んだ描写が出来ると、ひろプリ終盤戦も手応えを宿せるんじゃないでしょうか。
 楽しみです。