イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドルマスター ミリオンライブ!:第8話『変わるためのステージ』感想

 アクシデントもなんのその!
 今選んだその場所が、輝きへのスタートライン!
 チーム最年少と最年長の”お姉さん”たちの強がりと頑張りが眩しい、ミリアニ第8話である。

 とにかく人数メッチャ多いこのアニメ、キャラ掘るにしてもチームデビューノルマを複数こなしながらになるのだが、色々描きつつも芯を決めて、がっちり根っこを安定させる作りとなる。
 今回の主役は、周防桃子馬場このみ
 元有名子役と事務員からの転身、義務教育の真っ最中に遅咲きのデビューと、真逆に見える二人であるけど、プロデューサーのいない現場で気を張り詰め、チームの”お姉さん”として頑張ろうとする気概は同じである。
 無論仲間あってのアイドル稼業、プロデューサーやメンバーの助けによって道は拓けていくのだが、今回はなかなか人頼みに出来ないプライドを柔らかく肯定し、助け合ってこそ一人で立ち上がれる強さと、それが仲間を引っ張り新たな道を拓いていく輝きを大事に話を勧めていた。
 序盤の”言う役”を担当して軽く悪印象もあった桃子は、その小さな身の丈に似合わぬ複雑な人生に切り込んで見え方を新たにし、コミカルな”ちっちゃいお姉ちゃん”だったこのみさんは年輪相応の複雑さと頼りがい……微かなロマンスの薫香を感じさせて、彼女たちをとても好きになれる回だった。
 軸として大事に描きつつ、チームメンバーやプロデューサーにもいい見せ場を手渡して楽しく見せてもくれて、アクシデントを自力で乗り越えていく機転やガッツ、即興芝居も仕事の内な”アイドル”の横幅なんかも見れて、大変いいエピソードでした。

 

 ちとデビューに浮かれたところから始まり、水道管破裂で文字通り水ぶっかけられての散々なデビューで動き出す、今回のエピソード。
 メインを語る前に、最初は『桃子ちゃん先輩』とドルオタ全開で荒れ狂ってた松田亜利沙が、実はかなーり年下の同僚の顔をよく見る人間で、過去のキャリアを下敷きにした逆転策をおずおず申し出るときに『桃子ちゃん』呼びになってたの良かった……て話をしたい。
 令和にお出しするにはちと味が濃い属性を、ガッツリ載せられれがちなミリオンアイドルであるが、ミリアニはそこら辺かなり繊細な味付けでバランス取って、踏み外すべきじゃないポイントを守らせている印象がある。
 明らか干されてる現場がいい思い出じゃない桃子にとって、”桃子ちゃん探偵”は地雷だったと思うのだが、Pちゃんとのパーフェクトコミュニケーションを通じて迷いを振り切ったこのみさんの輝きに照らされる形で、過去と向き合い活かす方向に舵を切れた。
 色んな潮目が重なって二度目のステージ大成功があるわけだが、その裏側にヤバヲタキャラに見えて結構人間見てる、松田亜利沙の”人間”があったのは良かった。

 サブアイドルの描き方としては、桃子の苦境をPちゃんに伝え、限界崖っぷちだったこのみさんに運命のコールを届けさせた育ちゃんも良かった。
 あそこは育ちゃん単独というより、傷ついた野良猫みてぇにトゲトゲ先輩風を吹かし、誰とも馴染もうとしなかった桃子が手作りステージ以来色々あって、本音弱音を育ちゃんには伝えられる関係になっていたてのが、なにより良かったなと感じた。
 桃子がプロであること、子どもでないことにしがみついて背伸びする仕草には、どうにも深く傷ついているがゆえの防衛行動みたいのを感じてしまって、初見から『このクソガキャ!』とは思えなかったわけだが、今回の描写で子役時代の栄光は支えであり枷でもある重りなんだなぁと解った。
 『プロであること≒大人らしく振る舞うこと』を支えにしてしまっている桃子の無理は相当に痛ましく、しかしそうやって強がることで素人集団に必要なプロ意識が補強され、ギリギリな彼女の自我を支えている感じもある。
 なら桃子に必要なのはプロとしての自分を保ったまま、ナチュラルにSOSを出せる対等な相手であり、育ちゃんがそうなってくれていること、それが巡り巡って桃子を助けるのは、とても良かったです。
 初登場時の桃子だったら、育ちゃんにも『ヤバいっす』とは素直に言わなかったんじゃないかなぁ……そういう変化が、話数の中で感じられる運びになっているのは好きだ。

 

 今回のお話はプロデューサーが4thの現場におらず、だからこそ離れていても繋がっているものを濃く描ける回だったと思う。
 真横に張り付いて親身に支える関係もあれば、少し距離を開ければこそプライドを保ち、自分で立つ強さを教えてもらえる間柄もある。
 あるいは身近に接してなお個を尊重し、それぞれが奮戦すると信頼し期待する姿勢を見せることで、生まれる輝きも。
 Pちゃん不在を支える”お姉さん”として大見得切っちゃった以上、自分から助けをこえば何かが折れてしまいそうな状況で、機を逃さず届くメッセージ。
 馬場このみを”アイドル”として見出したプロデューサーの言葉一つ一つが、自分で自分の未来を切り開ける彼女の可能性を開花させ、あるいは蘇らせて、リーダーとしての力を再生させていく。
 その一言に元気を貰って、大人っぽく背筋を伸ばし直して通話を切る時の、一音一音から甘えが抜けていく……”プロ”になっていく芝居が、とても良かった。

 一人で抱え込みすぎる気概は、正しい道を思い出せれば仲間を導く頼もしさになり、そういう望ましい反転をいいタイミングで手渡せるから、プロデューサーはプロデューサーなんだなと思った。
 ミリアニは全ての問題をプロデューサー一人で解決させるでなし、一切解決に携われない不自然さがあるでなし、いい塩梅で舞台には立たない男の存在感を出してて凄くいい。
 夕焼け眩しい最後の笑みも合わせて、少しロマンスの匂いがあるところも適切に大人びてて、自称・お姉さんが全然”自称”じゃないと分からせてくれたの、大変良かったです。

 

 ここで奮起を果たしたこのみさんは、このピンチこそがチャンスなのだと、後悔まみれの過去から前を向いて、新しいステージを成功させるのだと仲間に呼びかける。
 桃子→育→プロデューサー→このみと、巡り巡った関係性と真心はここで桃子に返ってきて、桃子は自分を特別にし他人を遠ざける鎧として使っていながら、心の底では肯定し得なかった子役としての過去と、向き合う力を自分の中から引っ張り出す。
 経歴も年齢も違えど、同じ人に見出されて人生の舵を”アイドル”に向けた同志が、今目の前にいることに、この時桃子はようやく目が開いたのではないかと思う。
 それは人間として正しい発見である以上に、11歳にして『もう一回』を志さなければいけないくらい負けさせられている少女にとって、善い出会いだったのだろう。
 今回のデビューを一つの兆しとして、桃子が辛くない日々を少しずつ過ごせるようになったらいいなと、勝手ながら思った。

 そっからの寸劇集客は現場の即応力発揮というか、ブリコラージュ的になんとかしたというか。
 第5話のはらっぱライブといい、ミリアニは手作りのスケール感を大事にほっこり作っている所があって好きだ。
 行きのバスでは熱中しすぎて浮く要因だったロコの芸術家気質が、ハチャメチャな速度で美術完成させていく逸材っぷりに化けてるところも良かった。
 Pちゃんがべったり張り付いて全部指揮するのではなく、勘所を〆る形で関わってあとはアイドルの自力で克服していく形になったのは、タフさと絆をバランス良く見せれる運びだったと思う。

 

 という感じの、二人のアイドル、二人の”お姉さん”、二人の再出発を描くエピソードでした。
 俺は強がりの鎧で柔らかい自分を支えつつ、そのプライドで自分や他人を導いていける人が好きなので、今回はすごく良かったです。
 桃子の自己防衛的お姉さんポーズが、Pちゃんの一言で魂の底にあるホノホンの姉力を再起させたこのみさんの歩み寄りで自然と解けて、飾らない今の自分、”アイドル”周防桃子を肯定する形で前に進めたの、本当に良かった。
 俺は周防桃子に、あまり辛いことの多くない人生を送って欲しいと思うよ。

 そして次回はALL STARS回。
 ここまで新人アイドルちゃんのドタバタデビューを追っかけてきたわけですが、既に何事かを為した”後”を走ってるレジェンドたちを、ミリアニはどう描くのか。
 その瞬きを新世代にどう反射させ、後半戦を加速させるかも含めて、次回もとっても楽しみです!