イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dr.STONE NEW WORLD:第18話『滅びの煌めき』感想

 生来の猛者の鋭い牙と、修練で身につけた強さが激突する。
 槍使い二人の決着もつかの間、遂に全島に向けて解き放たれる緑色の狂気。
 イバラを廃墟ただ一人の王とするはずのメドゥーサの光から、千空はなぜ生き残れたのか?
 いよいよ宝島編も佳境、ドクストアニメ三期第18話である。

 個人レベル最強の武であるモズと氷月の決着がつくも、そこら辺全部押し流してイバラの暴挙が島民ごと何もかもを石に変え、悪の高笑いがこだまする……と絶望させてからの、フルアーマー千空登場で次回に続く!
 見せ場満載で、なかなか血圧高く見ることが出来た。
 あんだけビシバシ、お互いの強さの拠り所を比べあっていた槍使い達が最終的な戦況にはそこまで関係なく、最悪な運搬手段でもってベストな炸裂を果たしたメドゥーサが全てを決着させてしまう無情さも、そこに主人公が最高のタイミングで待ったをかけるのも、大変良かった。
 ここまでも作中外道レベルを更新し続けていたイバラであるが、『石化装置を部下に食わせて、そこまで走れば助かると嘘をついて島巻き添えに自爆させる』という、エグさ極まる行動で天元突破を果たした。
 こんだけ付き受けたクズカスが相手だと、ぜひとも科学王国に勝ってもらわなこまるという気分になるし、その前フリである大破壊の描写も絶望を盛り上げるようにどっしり丁寧にやってくれたし、因縁渦巻く島に建つ最後の一人を決める決戦への、準備は上々。
 生まれつき強い、たった一人強いという、司の延長線上にある強さがどういうふうに負けるかを教えてくれたモズくん含め、やっぱ宝島編は敵の造形がいい。

 

 そんなモズと氷月の決着は、管槍という特殊なツールでないと全力が発揮できないハンディを、仲間を信じて乗り越えた氷月の勝ち。
 司帝国編で見せてた凶悪さを思い出すと『浄化されすぎやろ……』と思わなくもないが、モズとの攻防は科学王国の理念を武術に適応した感じで興味深い。
 千空が信じてずーっと実践している”あるべき科学”は、あらゆる人に門戸を開き、確固たる術理のもとで再現可能な結果を生み出す。
 使ってるのが、テコの原理でもって変幻自在な強撃を生み出す管槍っていう『科学的な白兵武器』なのもあって、染み付いてた貫流の教えが、氷月が本来どう生きるべきだったか戻した感じもあった。
 『チートな敵キャラを抑え込むべく急に綺麗になった』と考えるより、『ネジ曲がった武芸者が、間近に自分を打ち負かしたものに目を向けてあるべき自分を取り戻した』と受け取ったほうが、自分的には収まりがいい。

 モズの強さは彼のエゴの強さに立脚し、やりたい放題の我欲を支えると同時に孤独にもした。
 千空がクロムという弟子を持ち、知恵を武器にしないコハクちゃんにも科学的思考法を知らず与えていたように、科学は共有可能性という強みを持っている。
 時代を超え師を超えて継がれる武芸もまた、そういう一面をもっているわけで、迫りくる破滅を前にモズが貫流弟子入りを志願してくるのは、絶望の中微かに爽やかな風が吹いてて良かった。
 やっぱこのお話は人間なるものを群れる動物、社会を構成しその総和によって世界をより善くしていく生物と定義づけている感じがあって、受け継ぎ積み重ねること、孤独で強い存在にならないことは大事なのだ。
 愛用の武器を”仲間”に手渡してもらっての氷月の勝利は、危険なエゴイストだったかれが”人間”に戻ったからこその勝利だった気もする。

 

 んで。
 何もかもが石化した島を、邪悪な高笑い響かせながら一人進むイバラは、その真逆に位置する存在……であり、味方サイドでは書けない”人間”のドス黒さを、最高に際立たせてくれてた。
 ヨウくんがかっこよくメドゥーサゲットして終わるかと思いきや、漆黒の執念でもって追いすがり相手の無知につけ込んで奪い返し、オオアラシを人間爆弾にして島の真ん中で炸裂させる流れ、ヤツの強みであるしぶとさとずる賢さが120%出てて良い。
 モズ以上のエゴイストであるイバラが、最悪の独善でメドゥーサ全島照射ぶっ放したおかげで、科学王国の負け筋である『兵力差で押し込まれての力負け』を自分から塞いじゃってるの、当事者だと気づかないよねぇ……。
 オオアラシの遺骸を石で打ち砕いてメドゥーサ回収するイバラと、『殺してでも止める』っていう”現実的”な選択肢は取れない(取らない)科学王国の対比が、個人的には面白い。
 自分たちを『そういうことはしない』と定義づけているからこそ支えられるものもあるし、止められないものもあるんだが、あくまで人を活かし自分たちも生きる道を進んでいる科学王国……その首魁が滅びの閃きを生き残った裏には、一体何があったのか。
 謎解きは次回! である。

 無限大の信頼に基づく、科学王国の意思疎通能力はもはやテレパシークラスなわけだが、それがあってこそ即席の管槍作成、強敵モズ撃破も成った。
 感情に押し流されパニックに陥り、情けなく逃げる……ように見せかけて逆転の秘策を練るのが彼らの得意技だというのも、既に幾度か書いている。
 どんな窮地にも1%の勝利を探す、クールな不屈の精神はもはや千空一人の武器ではなく、仲間たち全員の武器だ。
 幾度も盤面がひっくり返され、予想し予定していた戦の流れからは外れつつも、気づけばメドゥーサを巡って科学ガジェットが鍵を握る頭首決戦という、シンプルで熱い状況になってきた。
 予想を裏切るだけで終わらせず、紆余曲折で盛り上げた上で予定していた盛り上がりに数倍燃料積んで戻ってくる展開で、大変いい。
 色々荒れた結果、倒すべき敵のロクでもなさもガッツリ彫り込まれ、千空の勝利を信じ手に汗握る気持ちも、たいへん強まったしね。
 長く続いた戦いのクライマックスってのは、やっぱこうじゃなきゃいかん。

 

 というわけで、勝利と敗北、絶望と希望が複雑に瞬く最終決戦前夜でした。
 僕は原作読んでるのにある意味”答え合わせ”的にアニメを見ている部分があるのですが、別のメディアで新たに出会い直すことで見落としていた部分に気づいたり、教え直したり貰ったりするのが、大変おもしろい。
 今回で言えばイバラが自身の独善でもって最大の勝ち筋を手放してしまっていたり、遂に炸裂してしまったメドゥーサの絶望感なんかを、新鮮な心持ちで受け取ることが出来ました。
 やっぱそういう面白さがある”アニメ化”は、大変いい。

 次回明かされるだろう千空生存の種明かし、科学王国が科学王国である理由を凝縮した勝ち方を、そんなアニメがどう描いてくれるのか。
 大変に楽しみです。