イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

君のことが大大大大大好きな100人の彼女:第8話『キスゾンビ♡パニック』感想

 薬学天才新彼女がブチ込んできた、都合の良すぎる薬により、放課後の学校は赤い狩り場と化した!
 迫りくるキスゾンビを相手に、愛城恋太郎一体どうするッ! という、大長編100カノである。

 前回異様にいい作画で『そうか……今週はアクションで魅せる算段ッ……!』と腹作らせておいて、蓋を開けてみたら脳髄ピンク色に成った彼女たちのえっちなアプローチに力入りまくり。
 艶艶コケティッシュな驚きがおバカの合間にやって、どういう角度で受け身を取ればいいのかわからないけど、訳の分からなさにモミクチャにされているのが幸せ……という、大変このアニメらしい回だった。
 ロマンスに狂気に感動に、色んな手筋で闘える芸幅の広さを既に見せていた分、どこからどう攻めてきてもおかしくない、タイミングと間合いをズラしての勝負が良く効いていた。
 同時に五秒に一回『ねーよッ!』とツッコむ、常識のネジを床に落とした展開も楠莉のドーピングを受けて大変元気であり、彼女たちは可愛いやら流れはイカれていくわ、心地よく忙しないエピソードとなった。
 最後は新彼女大号泣のHAPPY☆KISSでもって、尋常の世の中にはどうやっても馴染めないアウトサイダーが居場所を見つけるホッコリ展開に収まりもして、めでたしめでたし。
 ……ここで『めでたい……のか……?』と正気になるやつは、もうこのアニメ見てねぇだろッ!!(迷いのない暴言投擲)

 

 つーわけでゾンビ超絶アクションよりも、タガの外れた彼女たちによる過剰なLOVE&SEKYで押し込んでくる今回。
 本格的にギアが入る前に、どうしてもワンテンポ遅れる静を理性飛んでるはずなのにフォローする彼女たちの仲良しっぷり、それが無言ハート目で展開するシュールさに、一笑い食らわされる。
 唐音と羽香里は明らかアクセル踏み過ぎだが、彼女たち同士仲が良く、お互い助け合いながら暮らしているところも、この超多人数ラブコメの魅力である。
 ゾンビになってもそこは変わらず……って思ってたら、じっくりねっとり保健室の放課後グラップリングを静主役で描画し始めて、受け身取れずにびっくりしたよ!
 本命であるキス描写を加熱させる、軋むベッド差し込む夕陽照らされる一輪挿し辺りの湿った情念を丁寧に丁寧に削り出して、小動物的イメージが先行していた静の総身からたちあがる”本気”を仕上げにいったの、大変良かったです。
 今回のファーストコンタクトにあたる静戦に気合が入っていたのが、『どーせ今回もバカエロだろ……』と、ある意味ナメてた視聴者を心地よくぶん殴って、いつもよりちょっと動物的エロスに満ちた展開に飲み込んでくれた。

 フツーの少年誌ラブコメが10年単位で時間をかける、誰かを好きになるまでの時間を”ビビーン”でぶっ飛ばし、100股の葛藤を狂気とパワーで押し流して展開しているこのお話、告白の先まで書けるのは強みである。
 ヒロイン全員、間違いなく恋太郎の彼女であるのでキスしても問題なし、むしろしたい! という欲望が、ヤバ薬でリミッター外れるとこうなる。
 そういう説得力のある接吻描写が、何度も何度も出てきて気合入ってました。
 このねっとりエロスの合間に妖怪との遭遇があったり、LOVEゾンビとの追跡戦があったり、どこに焦点合わせればいいのかイカれすぎててピンとこない、独自の面白さが生まれてもいた。
 なんもかんも本気な作画と演出が、あらゆることをやりすぎる作風と噛み合ってトルク出ているのは強いところ。

 その一員である唐音と羽香里の百合チュッチュは……なんなんだろうなあアレ。
 この超不均衡ラブコメ、このまんま転がしていったら恋太郎への負荷が大変なことになるのは間違いなく、彼女×彼女を自家発電させることで”逃げ道”作るのは確かに発明……なんだが、流石にチュッチュしすぎやろ!
 羽香里が妖怪唇ナメナメウーマンになるのは淫乱だからまぁ良いとして(良くない)、唐音もライバルにツンツンな側の奥に一歩入ると粘液にまみれた軟肉を絡み合わせたい欲望が頭をもたげてくるあたり、まーとんでもない陰獣であるよ。
 始原の二人である分セットで扱われやすく、バチバチ漫才も多い二人が実際のところ”どう”なのか、これ以上なく示すショーケースにはなったので、まぁ良いか……ちう感じ。
 この後判明していくが、恋太郎は度を越した純潔主義者なためこのエロス爆弾共がひっそり隠したリビドーを、『彼女同士ならノーカン』理論でぶっ飛ばしてる疑惑が持ち上がってくるのも、また一興であるね。
 こんなに泥酔同衾一夜の過ち合同同人誌を想像しやすいハーレムヒロイン、そうそういないよォ……。

 

 今回正気でモノ言えるのは楠莉だけなんで、彼女のアンバランスな知性とか興味も良く見えた。
 あらゆる常理を捻じ曲げる超絶ドラッグは作れるけども、状況を的確に判断して妙手を打ったり、クレバーに危機を脱したりする”頭の良さ”は全然ない(そこら辺は現状、凪乃の領分)
 むしろ肉体年齢に引っ張られる形で、感情的かつ浅はかな判断で状況を悪化させる、結構困った子なのだ。

 これには楠莉自身うんざり飽き果ててもいて、ひとしきり人間関係に失敗した挙げ句のビビーン&ゾンビパニックだったわけで、そらー号泣もする。
 恋太郎ファミリーは獲得CPが多めの人たち(GURPSマニアの間で『人格破綻者』を意味するスラング)の集団なので、楠莉のイカれた部分も愛でカバーしてくれる、受け入れてくれる。
 そう証明するための、一話使ったドッタンバッタンなのかもしれない。
 でも人格消滅はガチで洒落になってないし、そういう紙一重を余裕で超えた場所に飛び超えてしまえる才能には、ある程度鎖をつけた方がいいのだろう。
 『俺がその鎖になります!』と、真顔で言えてしまえるのが愛城恋太郎の強みであり狂気で、それがなくっちゃぁこんないかれヒロイン百連発なラブコメ、支えらんないっすという話でもある。
 なんもかんもイカれているが、恋太郎と彼女たちが作り出す小さな共同体の中ではそれは是認され、各々の歪みと孤独を肯定しあう足場になんだから、常識の出る幕なんぞねぇー!
 幾度目か、そういう結論。

 

 というわけで、校内全域を股にかけた鬼ごっこ(景品は正気)も無事終了、激ヤバマッド薬剤女史がファミリーに加わった……ッ! というお話でした。
 『なんか都合のいい結界張った? 異能学園退魔モノで学生退魔師が使うアレ……』って聞きたくなるくらい、放課後の学校人いなかったの面白かったな……。
 まぁこっから更に増えていく彼女の数を思うと、有象無象をカメラに移している余裕なんぞねぇからな!
 いやまぁ、時折思い出したように”外”を書く話でもあるんだが……アニメの終盤はそこに踏み込んでまとめてくんかなー。

 艶あり涙あり、過剰と欠落がダンスを踊る楽園の夢は、まだまだ始まったばかり。
 五人に増えた彼女を相手取り、恋太郎はアニメ終了までにどんだけ人間離れしていくのか。
 その狂気が、どういう幸せを紡ぎ守っていくのか。
 次回も楽しみですね!