イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルバスター:第12話『立て、ブルバスター!波止 vs 塩田 全面戦争!勝つのは大企業の論理か、中小企業の底力か!?』感想

 全滅兵器電気ショッカー、地下から湧き上がる超巨大巨獣、届くか沖野最後の意地!
 弾1発の予算を気にかけ、しみったれたしがらみと戦い続けたリアルヒーローお仕事物語も遂に最終回、ド派手に行くぜロボアニメッ!
 急にアクションバリバリになるの、一年特撮が最後に余った予算全部ブッ込む時特有のグルーヴ感があって、なんか気持ち良かったな……見たかった場面だしね。

 つーわけでブルバスターも最終回、やや急ぎ足気味にやるべきことをやり切って、最後に微かに続編にウィンクする感じで終わった。
 巨獣を討ち果たし島に平和を取り戻す、スーパーロボットとしての見せ場もゴリゴリ用意されて、ようやく一丸となった波止と島民総出で大暴れ。
 クライマックスに相応しいスカッと感が濃く出てて、なかなか良いフィナーレだったと思う。
 ……総力戦だって言ってんのに渚ちゃんが顔見せず、宝田社長が奮戦の現場に顔出さない片手落ち感はまぁ、このアニメっぽさだとは思う。
 ”全面戦争”とサブタイでドドン打ち出しつつ、塩田の雇ったゴロツキが作業妨害しに乗り込んでくるとかはねーしなぁ……残り話数一つの段階でそれしても、ゴチャゴチャうるさいだけで楽しくはないけど。
 特に社長は苦境を一身に跳ね返し逆転ムードを生み出すべく、キャラをド濃厚に盛りすぎて画面に出たら全部持ってく魔球になったので、最終局面には貼れない駒だよねぇ……。

 

 さておき、ここまで封じられてきたロボ力全開の『いっけぇぇぇえ!』展開が山盛り溢れて、ブルバスターの存在感、爽快感が炸裂したのは大変良かった。
 全てを薙ぎ払う電気ショッカーの威力高すぎて、ノリと勢いでぶっ放して良いもんじゃない感じも凄かったけども、まーこんぐらいの圧力がお話し終わるときには必要だ!
 今までのしょぼくれたムードをぶっ飛ばすように、損傷も補給も気にせずバリバリやっとったけども、宝田社長が未来への投資として全面バックアップしてくれた……と補完しておこう。
 実際の話、巨獣騒動を通じて波止は組織として何を目指すか、ミッションとヴィジョンを明確にしたので、突っ込むべきタイミングで突っ込むのをためらわない企業にはなったと思う。

 『害悪巨獣を、スーパー科学で皆殺しだぜー!』ってノリで転がる話だが、家族怪物にされて自分で処理したアル美ちゃんが代表となり、大企業の犠牲になった哀れな動物たちにも視線を向ける描写があったのは良かった。
 大怪獣バトルの盛り上がりに水さすことなく、必要な視点を作品に盛り込めるのはメインエピソードで良い情感生み出していたアル美ちゃんだけだと思うし、島一個巨獣農場に書き換える塩田のやり口とは違うんだと主張する意味でも、あの懺悔は大事だったと思う。
 状況が落ち着いたら、古式に則って島に巨獣慰霊碑を立て、島民全帰還を達成した日を巨獣忌として、年に一回念仏上げるくらいのしおらしさは、あって良いと思う。
 ああいうモニュメントとか儀式って、古臭い虚礼であると同時に人間の傲慢を戒めるストッパーでもあったわけで、塩田が暴走させた企業主義に首輪つける上で、まぁまぁ以上に有効なんじゃねぇかなと思うわけよ。

 こういう湿った部分はアル美ちゃんに任せつつ、主人公はロボアニメらしい不屈の闘志でリミッター解除、最後の一発奇跡の価値は! な展開を担当。
 暗い青春の影が伸びて自己評価が低く、それを補ってくれる重機ロボや所属組織への執着が分厚く、そこにしがみついて何を踏みつけにしているのか、内省する気質が薄い。
 沖野くんがラストに見せた気合は、そのまんま彼の危うさであって、この1クールは別にそれを強制するわけではないと理解る展開でもあった。
 『もうちょい落ち着いても良くね? 沖野くん熱入りすぎて、人間の大事なモノ蹴っ飛ばしすぎだし』とは思うが、社長の言う通りそこが彼の強みでもあって、殺さず制御していく方法を、今後も学んでいくのだろう。
 人間物語の決着としては、地元民であるがゆえの痛みと悲しみを乗り越えていったアル美ちゃんとか、他人に理解されにくいロボ人間が自分なりのスジを見つけた鉛くんとかに比べて、沖野くんはやや弱い感じ、正直ある。
 思い返すと中小企業お仕事モノと、災害復興企業闘争モノと、重機メカロボアニメと、バイオホラーパニックを詰め込んだ、結構ジャンル横断的な話だったわけで、書ききれない部分があるのはまぁしょうがないかな、って感じ。
 巨獣退治をエンタメ化する路線が、途中で蒸発してオチに絡まってこない所とかね。
 一番デカい(と僕が感じる)空白主役の人間的変化なのは……まぁまぁ痛いか、自分が見てた実感を思い返すに。
 一番好きになれたの、やっぱアル美ちゃんだからなぁ正直な話。

 

 戦いすんで日が暮れて、正義の裁きがくだされて、戦いはまだまだ続く。
 『大企業に一発食らわせるのではなく、島民の生活を復活させて初めて決着だ!』と、明るい感じでまとめておいて、無事逃げおおせた巨悪との戦いがまだまだ続くのだと、やや苦い感じで続編に含みをもたせたのは、結構好みのまとめ方だった。
 何しろ中小企業一つ回しきれない、等身大のダメっぷりを誇る貧乏所帯、アホみたいな資金と法務力で、エゲツない手段を一切ためらわないだろう大企業を相手取って、正義を為せるかっていうと……なかなか難しいとは思う。
 作品全体のムードが今回暴れたような、ノリと勢いで状況突破していくフィクション寄りの仕上がりだったら、『必ず最後に真実が勝つ!』と体重乗せれたんだろうけど、弾一発までうるさく管理する、世知辛さ満載の作りだったわけで、ここからの法廷闘争は厳しくなるだろうな~~ってのが先に立つ。
 しかしその苦い感触もこのアニメらしくて好みだし、弱者だろうが矜持で背骨を真っすぐ伸ばし、挫けず戦い続ける意思を燃やして終わっていくのは、お話が書いてきたものに嘘のないエンドマークだったと思う。
 塩田への報道が”排水隠蔽”だったので、巨獣問題は世間一般にさらされていない(おそらく島民帰還を優先したのと、塩田の隠蔽に追いつかなかった?)感じだが、センセーショナルな真実を良いジャーナリストが世に問うて、報道ブーストで立ち向かっていくのが、あり得る勝利……かなぁ?
 まぁ巨獣の存在が社会に晒されると、それに唯一対抗する波止の当事者性がブレるし自体が大きくもなりすぎるので、最後までご当地クリーチャーで通したんは一貫性あるか。

 腹くくった社長が波止が今やるべきこと(前回鉛くんが、自分の領分と定めた所)をはみ出したの全部引き受けて、最高責任者がやるべき対峙を全部背負っていたのは、半端な負け犬がどこにたどり着いたか見えて良かった。
 超ハラスメント生命体なのに表向きは爽やかで人当たり良く、デキる感全面に立ててゴリ押し逃げ切りをやり切る、鷲津さんの造形がイヤ企業悪役としてなかなか新鮮だったのもあって、良い余韻を残して終われたんじゃないかと思う。
 大企業の論理からはみ出し、家庭人としても上手くやれず、最後に残った人生の領地として、志を同じくする七人の部下と進むことを、社長は選んだ。
 なんもかんも完璧に出来るわけじゃないが、志だけは大資本と浮世のしがらみに押しつぶされず、必死に守り切ることが出来る。
 そんな作品の結論を体現する上で、なかなかいい感じのキャラになったんじゃなかろうか。

 そういう決着に実現可能な手応えを足す上でも、新しめなビジネススキームを波止がどう取り入れていくのか、取り入れたのかは描写が欲しかった。
 終わってから振り返ってみると、最終的に状況を動かしたのはオールドスクールな大阪人情スタイルあきんどの助力と、ドヤバい状況を気合で押し切る熱血主義なわけで、クラウドファウンディングだとか持続可能性だとかウェブ広報だとか、今っぽい空気まとって触られた部分が、あんま芯に食い込まなかった印象がある。
 『中小企業の頑張り物語なんだから、気合と人情でも良いんじゃね?』とは思うが、せっかく流し目した要素なんだから、現代的なビジネス戦略と中小企業ヒロイズムがどう融合して、新しいハイブリッドが生まれるかは見てみたかったかな。

 

 というわけで、ブルバスター全話終わりました。
 面白かったです。
 深夜アニメテイストの薄い、いがみ合いや問題を結構引っ張る感じのアクの強い味付けで、平和を奪ったバイオクリーチャーと重機ロボがぶつかるお話をやるってさじ加減が、自分にとってはかなり新鮮でした。
 作中のリアリティを上げた分、細かく気になる部分もあったりはしましたが、そのほころびも愛嬌と飲み込める設定の面白さ、キャラの魅力、ドラマの力強さはあったと思います。
 ヤバ人間がヤバさを残したまま、あんま”成長”しないで自分たちなり世界の見え方を変えたり、見えにくかった意地や思いが感じられたり、変化の書き方が生っぽい所が好きだな。

 アル美ちゃんの物語に分厚く時間を使った結果、廃墟となった島にそれでも思い出を残す人たちに関わる、復興の話だと書けたのは良かったです。
 塩田という巨大企業体が見落とし踏みつける人間の実在を、守るべき業務の中核と位置づけて自分たちなり仕事をしていく波止のお話は、そこをちゃんと書いたから成立すると思う。
 復興道半ば、生活再建という時間のかかる戦いを続けていく明るさと、長い長い法廷闘争に踏み出した社長の暗さを対比して甘いだけで終わらなかったのも、作品が扱ったものに見合ったフィナーレでした。
 中盤重機ロボ大暴れの見せ場が薄くて、『ブルバスターってなんなん?』と思わなくもなかったのですが、要所要所で重たさのある鉄錆アクションを入れ込み、最終回は主役メカ大暴れで終わらせて、ロボアニメとしても一定の手応えがあったと思います。
 等身大のダメっぷりを誇るトホホ人間たちが、ジワジワお互いを解って、手を取って進める相手なんだと会社がまとまっていくのに1クール使ったのも、独自の煮込み方で好きだったな。

 というわけで、面白く見終わることの出来るアニメでした。
 鹿内さんとの決着に含みを残しつつも、巨獣災害との対峙にはしっかり決着を付けて、スッキリ終わってくれたの、大変良かったです。
 『もし続きがあるなら見たいな……』と思いつつ、『でも、良いアニメだったな!』と見終われるこの感触は、1クール自分たちの物語を自分なり、しっかり語り切ってくれたからこそ得られるのだと思います。
 ありがとうございました、面白かったです!!