イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

異修羅:第2話『星馳せアルス』感想

 魔王亡き地に訪れるのは、血風薫る戦乱の気配。
 新たな修羅達が凄い勢いで顔を見せる、異修羅アニメ第2話である。
 話と世界観を飲み込むより早く、ドンドコキャラが追加されド厨房っぷりを発揮しては場面が移るため、正直消化が全然追いついていないが、血しぶきと強キャラオーラが濃く匂う味付けはやはり好みで、肌には合っている。
 前回一話使って顔見世したソウジロウ一行は舞台裏に下がり、おそらく魔王戦役の結果世界唯一の王国に成り上がったのだろう”黄都”と、そこから離反したリチア新公国の対峙が前半にスケッチされていた。
 誰がぶっ殺したのか分かんねぇまま、世界を恐怖で律していた(っぽい)魔王を破った英雄が誰か定めなきゃ、黄都がリードする戦後新秩序は形成されないわけで、英雄選抜トーナメントをぶち上げもするらしい。

 この器に、ソウジロウや”星馳せ”アルスといった規格外の怪物たちをブチ込んで超絶の修羅場を生み出すのがメインライン……なのかな?
 それっぽいセリフと強キャラがいい気になる場面が凄いスピードで交錯し、ぶっちゃけめっちゃ不親切ではあるのだが、付いていこうとも思わせるヒキの強さ、濃いめのアクで現状飲まされている。
 想像の埒外を越えた超強キャラ達が、好き勝手絶頂にいい気になるための素材を全部ブチ込んで、強火でグラグラ煮立てている世界観のチャンプルーな魅力が、異種族いっぱい出てきたことで強く出てきた……かな?
 ツルンとしたイケメンが雁首揃えてるより、骸骨だぁ喋る植物だぁ三本腕のワイバーンだぁ、人間の形に収まってねぇ異形共がウゾウゾしてる”ファンタジー”の方が、俺ァやっぱ好きなんだな……。

 

 というわけで前半戦は黄都との対決姿勢を強める、リチア新公国に修羅達が集っていく様が描かれていた。
 好き勝手絶頂ヒャッハーぶっこいてた野盗が、虐殺集団として一糸乱れぬ殺戮を繰り返すワイバーン兵にムチャクチャにされる様子を、ノーカット血糊満載でお送りする悪趣味が、作品の味として二話にして肌に馴染む。
 こんだけ血みどろのモンド大盛りだと、健気で真っ直ぐな連中こそが異物であり、イカれてヤバいことが最低限のキャラ立ちみたいな、逸脱者たちの物語に必要な風合いが良く出ている。
 まぁ雑魚かっくらってツラみせただけなので、山ちゃんボイスが最高な”音斬り”シャルクやら、明らか人外の思考してそうなニョロニョロ樹人とかが、どういう強さ持っているのかはまだまだ見えないが。
 そこら辺は今回、ドラゴンを撫で切りにして『俺、強キャラなんで……』と名乗りを上げた、”星馳せ”アルスのようにド派手な見せ場が待っているのだろう。
 とにかく人数多い上に慮外の怪物揃いなんで、『コイツこういうキャラですー』てのを雑魚撫で切りにして血の絵の具で書く場面にも、ある程度以上のカロリーが必要になって尺取るのは、なかなか構成大変だなって感じ。
 1クールでどんだけ、話を先に進められるかはぜーんぜん見えないが、まぁ強キャラがいい声といい作画で強キャラぶってるだけで、かなりいい気持ちなのでしばらくはこの調子でいいか……。

 リチア新興国に”夕暉の翼”レグネジィありと、群れとして見事な人間狩りを見せつけ示したわけだが、コレが後に単騎のハグレモノとして上位種だろう竜を一蹴する、”星馳せ”アルスの前フリになってるのも面白かった。
 レグネジィがこの世界のワイバーン・スタンダードからどんだけ外れているかは、まだまだ全然わかんないんだけども、とまれ群れで暮らし群れで生きる(から多分、新公国を自分の”群れ”として守っている)生物なのは何となく分かる。
 その極限として、群体を軍隊として統率し、驚異的なスピードと高地優位で野盗を食い散らかす、レグネジィの軍勢がいる。
 ワイバーンが本来持たぬ三つの腕で、マジックアイテムを使いこなしたった一人、ダンジョンもドラゴンもぶっ潰すアルスは、そういう”普通”に背を向けた……向けざるを得なかった存在なのだろう。
 2人のワイバーンが描写されたことで、同じ種族でも色々あるのだと理解って世界観に奥行きでた感じもあったし、場所を変え人を変え、群像劇としての横幅を描いた上で一箇所に収束していくと、勢いあって面白いのではないか。
 ……しかしまぁ、分かりにくい形態と情報量であるのは間違いなくて、絶対に”万人向け”じゃねぇのは確かだわな。
 自分で色々読んで足す必要があって、そこが好きだが。

 

 さて後半は黄都サイド、王国を主導する大官僚のはずなのにどっか情けない、ハルゲントのおっさんが英雄相手に巨大感情ぶっかます展開。
 噛ませ犬なんかな~と思っていたおっさんが、龍相手に堂々問答するわ、一応一般ワイバーン相手なら無双できそうな巨大弩弓錬成したり、想定より背筋伸ばして頑張ってくれて面白かった。
 凡人ながら栄光を求め屈辱を噛み締め、泥まみれの人生を熱く燃やしているおっさんに対し、重力を軽やかに振りちぎってインチキアイテムで余裕の龍殺かます”星馳せ”はツルンと感情の起伏が薄く、俗世から自由に見える。
 そういう相手に多分嘘のない素直な好意と敬意を向けられ、だからこそ受け取れはしないおっさんの純情は、濃厚なBL味がしてかなり良かった。
 他のあらゆる事柄と同じく、アルスとハルゲントの過去に何があって、繋がりとわだかまりが生まれているのかってのは、直接描写はされない。
 しかし匂わせだけで相当いい匂いがしているし、良いド厨房キャラは描かれないからこその馥郁を使いこなすモンなので、ワイバーン殺しの将軍と最強の鳥竜の描き方は、個人的には大変良かったと思う。

 ソウジロウが剣士だったんで、第1話ではこの世界の魔法がなかなか見えにくかったわけだが、ドラゴンのブレスも世界に直接訴えかけける『力ある言葉』で駆動している描写があって、なんとなく世界の駆動律が見えてきた感じがあった。
 熱量を操作したり物質の組成を変えたり、現実だと科学でやっていることを魔法に担当させている、一種のマジカルパンク世界なんだな。
 そしてその魔法は存在の本質を示す『力ある言葉』で成り立っているので、言霊パンクでもあると。
 軍の運用のされ方も通信重視の近代的な感じだし、一般的な中世ファンタジーより少し上の科学文化レベルを想定したほうが、今後の描写も飲みやすい感じ。
 まー第1話で、ゴーレムファクトリーを内部に備えた超巨大迷宮型自立機械が出てきてんだから、色々ぶっ飛んだネタは出てくるんだろうけどね。
 そこら辺のハッタリの効かせ方を、むしろ心待ちにしている感じも自分の中にある。

 

 最後の土師ナレハッタリ構文が共通しているので、アルスもソウジロウと並ぶ規格外の修羅……なのだろう。
 しかしなまくら刀一本、己の技量と殺戮の魂だけで巨像を解体しきったソウジロウに対し、アルスは尽きぬことのない貪欲で集めた、様々なマジックアイテムを局面に応じて活用することで龍に圧勝していく。
 本来”貪欲”とは龍の特徴であり、卑小なワイバーンがそこで上位種を飲み込み、欲望の証たる魔導具でもってその誇りも命も蹂躙するのは、なかなか気持ちが良い下剋上だった。
 こっから顔を見せる異形の修羅達が、どんなトンチキ芸で強さを誇るかってのは、それを土台に支援人にもしているケレン味満載バトル物語にとっては、大変大事なところだ。
 ソウジロウがあくまで自分の足で大地を蹴って剣を振るっていたのに対し、アルスは翼を生かして軽やかに舞い、遠射も交えつつ龍を倒したのも、二人目の英雄の鮮烈なデビューとして、良い対比だった。
 ここら辺が一本調子になると、濃くておんなじ味しかしないのが延々出てくる形になっちゃうわけで、色々変化をつけて様々な厨房キャラが大暴れしてくれるのは、派手さに飽きない上でもありがたい。

 黄都と新興国の衝突、勇者決定最強トーナメントという物語的フレームが見えつつ、まだまだキャラの顔見世で進んでいる状況。
 ツカミとしては大変いい感じに、ロクでもなく圧倒的で凶暴な登場を、しっかり果たしてくれました。
 ソウジロウもアルスも、人間の柔らかい部分カケラも理解らなそうな異常者っぷりを既に示しているが、ハルゲントのおっさんみたいな身近な巨大感情人間もいてくれることで、完全に視聴者の視点を置き去りにして、超人バトルだけが展開する話にもならなさそうだ。
 むしろ力を求めつつ届かない凡俗の懊悩を濃く書けばこそ、そういうモン置き去りに英雄領域にカッ飛んでいく怪物の異質性、カッコよさも際立つと思うので、巧いこと響き合うような見せ方を期待したい。

 こっからまだイカれ人間紹介フェイズが続くのか、今回示したフレームで話を前に進めていくのか。
 構成の仕方などでも楽しませてもらいつつ、今後も血飛沫バッシャバッシゃな超絶ロクデナシ戦乱絵巻を、胸焼けするほど楽しんでいきたい。
 次回も楽しみだ。