イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うる星やつら:第24話『妄想フーセンガム/愛は国境を越えて』感想

 約一年ぶりの大帰還!
 小学館創業100周年の看板背負って、うる星やつらが帰ってきた!
 久方ぶりの令和うる星、待ってましたの第24話である。
 テンちゃんの不思議アイテムでドッタンバッタン大騒ぎになる第1エピソード、少しセンチメンタルな色合いのあるすれ違いの第2エピソード。
 2つ合わせて『あー、”うる星やつら”ってこういうアニメだったわ……』と、しっかり思い出せるようなお話を選んでくれて、なかなか親切な二期スタートとなった。

 妄想ガムをぷくぷく膨らませるごとに、あたるの妄想を浴びせかけられたヒロインズがあられもない姿でサービスする様子は人数処理していくのにもってこいだし、あたるの過失で大惨事になってんのにどうにも優しく出来ない姿は、日頃激しく転がるハードコア・ギャグの中心装置をやってる彼が等身大の高校生であることを、いい塩梅に思い出させてもくれた。
 やりたい放題何でもありの大騒ぎと、繊細な思春期が同時並走し、時に混じり合って展開していく、宇宙規模の追いかけっこ。
 シリアスなラブ・ロマンスが大笑いの狂騒に追いついてしまえば、お話は終わってしまう宿命なども含めて、このお話がどういう物語だったかを噛み砕いて二期を始める、良い出だしとなりました。

 

 というわけでAパートは、悠木碧声のちびジャリドラえもんと化したテンちゃんの便利グッズで、一騒動が巻き起こる。
 あたるの気の多さがフーセンギャルとして具体化されることで、ラムちゃんとの関係性も可視化されていくという、気軽に見えてテクニカルな回選んだなぁ……って感じ。
 令和の基準ではモロにハラスメント行為な、当事者の合意を得ない性的複製製造はどアウト……のはずなんだが、擬音演出多めに明るく楽しく、あんまヤダ味出ないように上手く調理されていた。
 約一年ぶりに騒がしくも楽しい演出と雰囲気を食べると、『あー……この味好きだなやっぱ!』となって、兎にも角にも騒がしい友引町の狂騒が、木曜深夜に戻ってきたのを感じられ良かった。

 既に2クール放送済み、メッチャキャラ多いアニメであるのだが、ガーガーうるせえ感じに進め女の子もポコポコポップアップするので、久方の再会に手際よく顔見世してくれる回でもあった。
 白痴美全開で中身のないウフンアハンしてくれる女の子たちも良かったが、過剰な力みで襲いかかってくる面堂くんがやっぱ可愛くて、久々に会えて嬉しかった。
 ナオンちゃんの人数の多さに対して、あたると対等にぶつかれるレビュラー男子って彼くらいなんで、結構大事な立場なんだなぁ……などと、久方の再会で思い出したり。
 あとひしっと抱き合う弁天&おユキが、数十年の時を超えて令和に描かれてみると、百合的文脈を勝手に背負ってしまっているのが、古典をリバイバルする面白さのある絵面で良かったな。

 

 毎度おなじみドッタンバッタンを終えて、Bパートは少ししっとりしたお話。
 上坂すみれ過労死寸前な宇宙語日常も良かったが、騒動が始まる前の諸星家の騒々しい日常が、さらーっと書かれていたのも好きだ。
 火を吹く赤ん坊も電気出す許嫁も、特に問題なく家族として受け入れ、その当たり前な感じに甘えて投げつけた炊飯器が思わず、当たり前だったはずの関係性にヒビを入れていく。
 自分を縛るラムを邪険にしつつ、逃げても追いかけてくれると甘えているあたるがなかなか素直になれず、自分から宇宙語を学んでコミュニケーション取るでもなく、等身大の高校生らしいズルさと純情でもって、変質してしまった騒がしい日常に立ち尽くしている様子は、凄く良かった。
 AパートのようなSFドタバタコメディを幾重にも積み重ねているからこそ、そこにピシッとヒビが入った瞬間の衝撃も描けるわけで、二話まとめて”うる星やつら”がどういうお話なのか、新たなスタートに刻みつけるチョイスだったと思う。

 騒々しい非日常的日常の真ん中に立ちつつ、あるいはだからこそ平凡な高校生でしかないあたるは、ラムへの思いになかなか素直になることも、日常を壊すひび割れを超技術で治すことも出来ない。
 ラムちゃんが健気に開発した、拷問具めいた翻訳機が自分の言葉を、ラムちゃんだけに通じるメッセージとして伝えてくれるのを、座して待つ立ち位置だ。
 自分の過失に頭下げ、壊れてしまった日常に戻ってきて欲しいと涙を滲ませるまで相当な時間がかかってしまうところに、あたる青年年相応の意固地と脆さ、それ故の人間味があって良かった。

 そんなダーリンが下げたをぴるぴると飛び越え、自分が地球語を思い出すのではなくダーリンに宇宙語を喋らせる解決を引き寄せるラムは、健気でありながら恐ろしくもある鬼の花嫁で、大変に可愛い。
 やっぱラムちゃん最古のヤンデレで、Aパートで見せた浮気な気質に枷をはめ、自分とだけ喋れる翻訳機にガッチリはめ込んで終わるの、因果応報でまとめるには湿って重いんだよなオチが……。
 今回の二つのお話は両方ともあたるの身勝手が好き勝手暴れているようで、ラムちゃんのキツめの首輪がそこにギュッと締まってオチてもいて、どっちもどっちな二人がなんで離れていかないのか、愛の引力を笑いの中にしっかり描く回でもある。
 逃げるあたるを追うラム……という構図に見えて、実はあたるに追いかけさせてるラムのズルさなんかも見え隠れして、”うる星”らしいアッパーテンションな笑いをぶん回しつつ、奥にあるしっとりとした共犯関係も感じ取れた。
 やっぱこの、追いつ追われつ追わせつつな距離感がメイン二人にあることが、コメディとロマンスが永遠の追いかけっこを続ける物語のエンジンだなって思うね。

 

 というわけで、お話が内包しているものがよく分かるエピソードニ選でした。
 こういうお話を二期の最初に選んでくれると、これから2クール、どういう物語に付き合っていくのかが鮮明になって、いい気分で新たに向き合える。
 なかなかありがたいスタートとなり、令和うる星がどんな描き方をしていくのか、より楽しみになりました。
 平面表現と3D的奥行きを自在に行き来するOPとか、旧作に強めのウィンクを送りつつ最新鋭の可愛さを描くEDとか、楽曲も相変わらず素晴らしい。
 次回もとっても楽しみです!