イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

異修羅:第3話『鵲のダカイと夕暉の翼レグネジィ』感想

 戦争の香りを遠く近く感じ取りながら、修羅たちは血の色の夕焼けに嗤う。
 黄都中心の世界秩序に挑戦する、魔王自称者の街に足を置く者たちを描く、アニメ異修羅第3話である。

 きな臭い匂いがパチパチ漂っているリチア新公国が、どんな怪物を飼いどんな空気で世界と対峙しているのか、二人の修羅を通じて描く回となった。
 真実も命も自在に盗むチート盗賊・ダカイと、張り詰めた凶暴さの奥に人間味を隠せていないワイヴァーン・レグネジィ。
 それぞれなかなかに面白い味がして、黄都との衝突が今から楽しみ……と書くといかさま人非人にすぎるが、潜入工作員が音もなく寸断され、粛清の名のもとに人食い翼竜がズタボロにされるロクでもないお話、ド派手に血飛沫飛ばしてくれなきゃ嘘ってもんだとは思う。
 そしてそんな世界だからこそ、盲目の天使ちゃんにも群れを逸れたもう一人の修羅にも焦げ付いた感情持ってる、レグネジィくんの死相が物凄くて、『あ、特にロクでもないことになるな……』という予感が背骨を走った。
 このアニメが甘っちょろい人間の規範をどれだけ逸脱し、暴力的にも存在的にも一番人間辞めてるやつを激戦の中探っていくようなお話ならば、そらー”人間味”ってのを滲ませてるやつから大惨事にはなるはずで、”本物の魔王”が生み出した惨状から二人きり生き延び、優しさゆえに触れ合うことを許さない間柄な二人は、そら、ねぇ……。

 何もかも盗み取る異形の大殺戮と、カリスマとか指揮能力とかそういう感じじゃない統率でもって翼竜を束ねる指揮官の描かれ方は、現状負ける感じが一切しない。
 しかしそれはザコを鎧袖一触しているからこそであり、黄都も当然用意してくるだろう同等以上の怪物たちを前にして、どんだけやれるものなのか。
 最強と最強がぶつかりあった時、何が起こって何が砕かれるのか。
 大変悲惨なことにはなるだろうが、そのドロドロ流れるロクデナシを思いっきり、腹に落としてみたい気持ちもある。
 こういうのは適切な距離で俯瞰しつつ、キャラクターそれぞれの悲哀や妄執にシンクロしていくのが大事だと思うので、レグネジィとカーラの悲痛で優しい日常の描き方は、大変いい感じだった。
 ぜってーロクでもないことになるよぉアレは……。(感情の足場になりそうな、だからこそ切り崩されそうな場所を悪し様にいうことで、受け入れがたい悲劇へのワクチン接種を済ましておくオタク仕草)

 

 というわけでAパートはかなり重度の超人病患者、鵲のダカイさんが好き勝手絶頂ブッこく展開である。
 ソウジロウと同じく”客人”であるが、あの迷宮ロボットがぶっ放していたソーラービームと同じく、異世界で持て余した激ヤバ案件がゾロゾロファンタジー世界に不法投棄されてるってのが、その真相のようだ。
 『転生者だからチートをもっているわけではなく、手に負えないチート野郎だから異世界に追放されてくる』ってのはハッタリ効いた良いロジックで、”客人”が軒並み超ヤバい異能者である理由付けにもなっている。

 そんな彼が身を寄せるリチア新公国の主は、国民全ての幸福のために果たすべき責務を引き受ける善君に見えて、そういうやつこそ魔王扱いするのが黄都中心の現有秩序なのだろう。
 野盗と連動して情報戦を仕掛けてくる工作員共を、片っ端から撫で斬りにし重要情報を盗み、その鵲無双はあくまで前哨戦でしか無い。
 ……あそこで盗んでいた情報が、点字で書かれているのが視覚障害者であるカーテちゃんとイヤーなリンク生んでて、ロクデナシ力上げてるよなぁ……。
 誰が味方で誰が敵か、本当のところは何もわからない謀略と戦雲の中で、例えば魔王の汚名を着ても独立を宣言したタレンは何考えているのか。
 彼女に味方する修羅たちは、激戦に何を望んでいるのか。
 新公国と黄都の正面衝突が迫り、激戦の導火線にチリチリ火がつく中で、色々気になるところは多い。
 まーこういう話である以上、血のインクと戦火のパレットでしかキャラが抱えたもんは描けないわけで、バチバチブジュブジュ殺し合う展開にならないと、ホントのところは見えてこねぇよなぁ……。
 それも、僕がやがて来るだろう地獄絵図を忌避しつつ、待ち望んでいる理由の一つである。

 

 んで、そこを軽やかに飛びきれそうな気配が全く無い、レグネジィくんの顔見せがBパートである。
 いやー……生存無理でしょ、このお話で命より大事なものがあるキャラはッ!
 ワイバーン兵団巻き込んで、強さを求め何かを成し遂げようとしてる張り詰めっぷりとか、そのギリギリな感じが共に地獄を生き延びた魂の片割れの前ではキレイに姿を消す所とか、もう死相しかないよッ!
 ご丁寧に待ち受ける地獄を予見するような立ち回りも見せ、それでもお互いを捨てておけない絆を描き、不自由に空を飛ぶ翼竜と盲目の歌う天使の未来は、地獄に染まるお膳立て十分ッ!
 よりにもよって魔王自称者の義娘ってのが、迫りくる惨劇から無力な少女が逃げれない、デカい楔になってていい感じだぜ……(”最悪”の文学的言い換え)

 『再処置』とかろくでもね言葉を口走り、なんかキチキチ良くない音出してる蟲が意味深に宙を舞っていたので、レグネジィくんの強みである群れの統率にも、イヤーなからくりがありそうではある。
 こういう『強さの理由をぶつけ合って折れなかったほうが勝ち!』みたいなチート合戦において、戦う理由や勝つ理由がある方が脆いわけで、チートのカラクリがこの段階で透けて見えてるレグネジィくんは、そういう意味でも立場が危うい。
 そういう意味で、生来のチートゆえに問答無用で強い”客人”の設定、厨房強度が高くてズルいなー……。 

 未だ戦端燃えず、つまりは最悪最強の修羅達がぶつかりあう局面にもなっていないまま、怪物それぞれの点描が繋がらないまま配置されている状況。
 しかし焦点が黄都と新公国との衝突にあるとは描かれてきて、巨大な秩序に挑む”魔王”の側にどういう空気が流れているのか、蹂躙されるだろう街に結構な人間味があると描かれてきた。
 アニメからのにわかが感じ取るに、多分この話では人非人であるほどに強い。
 だからあまりに人間っぽい愛と焦燥と夢を描かれた、レグネジィくんの未来は危ういだろう。
 こっから本格的に火を吹くだろうチート野郎どものぶっちぎり厨房バトルの中で、そんな彼が人間だからこその意地を見せ、強者に蹂躙される側の輝きを見せてくれることを、僕は(ここまでの露悪からは信じてもらえないだろうけど)本当に願っているのだ。
 いやでもなぁ……積み上げられてるゴア描写とひりつく謀略戦が、どー考えてもロクでもないルールで話が動いてると教えておるからなぁ……。

 

 というわけで、また新たな修羅の横顔がスケッチされ、どデカい爆発へのカウントダウンが一個進んだ回でした。
 どんくらいの暴力と思惑が入り交じる、地獄のキャンバスとして新公国VS黄都を描くつもりなのかは未だ測りかねるが、どうせやるんなら最大限度派手に、ぶっちぎりでロクでもなく、哭けるほどに切なくやり切って欲しい。
 そろそろ種まき終わって、厨房バトルがニョキニョキ伸びてきてもいい頃合いかな~と思ったりもしますが、そこらへんの舵の切り方、話の運び方含めて、次回も大変楽しみであります。
 ……やっぱアレだな、『ぜってぇ死ぬよコレ……』ってオーラ出しているキャラほど、『ぜってぇ死んで欲しくねぇ……』って思わせるように書くのがコツなんだな。