イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

外科医エリーゼ:第1話と第2話の感想

 アタシ人生三回目、今度はメスで命を救うぞ!
 ファンタジーと現実を行ったり来たり、悪逆皇后が積んだ経験値でマトモに生きる道を探る、韓国初の転生医療ロマンスアニメの序盤を見た。
 面白かったので、感想を書きます。

 好き勝手絶頂にお貴族ぶっコイた挙げ句、祖国も家族も皆殺し、自分もボーボー焼かれて魔女扱いと、後悔の多い人生を孤児転生に反省し、凄腕の医療従事者として賢明に生きる!
 ……って誓いは高空に虚しく、地獄の墜落事故に巻き込まれなお必死に命を救った挙げ句、二度目の死を迎えてさー強くてニューゲーム! 未来知識で外交助言、婚約破棄と医師試験でレッツゴー! ってところまでで二話である。
 僕は転生リテラシーが全然ないため、初手から”ニ回”ぶっ放してくる宙返り加減に最初は面食らったが、現実世界での二度目の人生が必須イベントとして軽く済まされる感じではなく、ドラマとしても話数としても腰を落として、生きたり死んだりを書こうとする姿勢があってまず良かった。
 主役であるエリーゼも前世の悪行を心底反省し、転生先の現代ジャパンで地道に医療を学んで心根も叩き直し、二度目のファンタジックライフで無双ブッこく準備は十全。
 家族や王家の皆さんも露骨イヤなヤツって感じはなく、むしろ話の通りそうな理性的な人ばっかりなんで、”医療”というテーマと合わせてヤダ味が少なく飲みやすい。
 人生の酸いも甘いも既に経験済みな、エリーゼがあらゆる領域において分をわきまえ謙虚に実直に、他人に感謝しながら生きてるのが透明度高いし、そうなる背景も描写はされているので、転生モノに僕が感じているエグみが少なく思えた。

 

 本人も周りもいい人だと乗り越えるべき課題の少ないスローライフになりそうだが、何しろ向き合うべきなのは”命”なんで、転生チート知識があろうがやるべきことは多く、成し遂げられない奇跡も沢山あるだろう。
 僕は主人公が甘やかされすぎる話はあんま好きではないので、チート野郎が必死に手を尽くしてなお救えるか分からない、命の問題が主題と選ばれているのはなかなか良い課題設定だなと思う。
 人の命が助かるのは素直に良いことなので、現代知識無双しても誰かのアタマ踏んで主人公をボースティングするヤダ味が少なく、『ああ、良いことだね。チートで良かったね』と思えそうなのも、個人的な好みに合っている。
 二話で描写された”一周目”の展開にモリモリ流行り病ぶっこまれてるので、最初の課題である医師試験を突破して武力ではなく医療でもって、かつて勝てなかった病魔に打ち勝っていく展開になるのだろう。
 ここら辺の『前世のバッドエンド要因、こっから全部ぶっ飛ばします!』という見取り図が、早めに見えているのは親切でいいと思うね。

 コレが女性向け転生モノのスタンダードなのかは分からんのだけど、『王子様に幸せにしてもらう』という古臭い類型を初手血みどろにぶっ飛ばして、医師として手に職つけた上で『アタシが国も家も未来も、全部幸せにしてやる!』と、自主性モリモリのパワフルな自己実現に舵を切っていくの、前向き元気でとっても良い。
 なにかすると『女風情がよ~』と石が飛んでくる、イヤ中世の味わいがこの異世界にあるのか無いのかは分かんねぇ(それを描くことが、作品とジャンルにとって必要なのか含め)けど、もしそういうの投げつけられても、エリーゼが身につけた”医療”はそれ弾き返す説得力のある、いい武器だしね。
 『人が生きたり死んだりするのに、男も女も転生者もねーだろ!』つう、問答無用の強さがメインテーマにあるのは、結構好きだ。

 

 生きたり死んだりに手術着で向き合っているだけだと、華やかなドレスが踊る異世界に戻ってきた意味も薄いわけで、王子様とのロマンス要素も今後元気になっていきそうだ。
 自分の運命、国家の命運、家族の未来と同じく、一周目の上手く行かなかった結婚生活を反省し、『医の道に愛は不要!』とばかり婚約破棄を叩き込んだエリーゼであるが、むしろそれがおもしれー女力を高めてしまったようで、ぶっきら王子様のLOVEには静かに火がついた感じ。
 ここら辺の『謙虚な私は全部いらないって言ってんだけど、運命が都合の良い展開を全部持ってきちゃ~~~う』ていうがっつかない……けど俯瞰で見るとめっちゃがっついてる手応え、転生モノの醍醐味であり苦味にもなろうつうポイントなんだが。
 先に述べたエリーゼの、罪人めいた謙虚さがいい感じに毒を抜いていて、一歩引いたところに王子様の足がスルスル滑り込んでいきそうな、自然な手応えを感じた。
 つーか『さよなら……最も愛した人……』って二話ラストで言ってんだから、婚約破棄から真実のLOVEがスタートするのは前世からの念願叶う展開でもあり、しかし悔恨の転生者は自分が幸せになることを二の次三の次に置いて、医療にラブにどうなっちゃうの~~!! ……という感じ。
 公人として医療に従事し、私人としての幸せを恋に求める、ライフワークバランスを探し求めていく物語もなっていきそうなのは、いい塩梅にお話を楽しめそうでありがたい限りだ。

 作品世界と物語がエリーゼに対しどんだけ都合いいのかは、今後色んな試練をどう描きどう乗り越えていくかで見えてくるとは思うが、都合良すぎない程度にハードで、気持ちよく見れるぐらいに爽快だと、ありがたいなぁと思う。
 このバランスを取るのが、転生モノに限らずエンタメの難しいところなんだろうけど……。
 医療という、生半ではないテーマを選んでしまった以上なんもかんも余裕で踏み潰す展開はそれを裏切るだろうし、かといって生き死にのリアルに踏み込みすぎるとその重たさが作品の背骨を折るだろうし、扱い難しそうではある。
 だからこそ上手くやってくれたときの気持ちよさは強いだろうし、医療無双と生き死にの苦難の間の、ちょうどいいところで話が進んでくれると嬉しい。
 初手失敗に終わるだろう遠征から物語が進んだので、国家の舵取りだの王家の内輪もめだのにも舵を切れそうで、そこらへんを触っていくと色んな面白さが混ざって、なお好みかな。

 

 というわけで、異世界転生分解酵素が少ないジジイ世代にも、なかなか食べやすい味付けのお話でした。
 政治劇にロマンスと、色々面白い横道に期待が膨らみつつも、やっぱ”医療”って主軸をどう取り回していくか、腰の強さとバランス感覚を見守っていきたい。
 そこを背負い切る立場のエリーゼは、好感の持てる素直で謙虚な人格者であり、テーマや作風との噛み合いは現状良い感じに思えました。
 まずは王様に自分を認めさせるための医師試験合格、どうなることか。
 次回も楽しみです。