イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

わんだふるぷりきゅあ!:第2話『みんな友達、キュアフレンディ!』感想

 少女よ、愛で獣を抱け!
 ”大好き”という気持ちが闇を払う、新世代の非暴力系ふわふわプリキュア、キュアフレンディ爆誕の第2話である。
 とても良かった。

 前回がこむぎちゃんの日常と思いにどっしり寄り添い、エモーショナルな部分を真ん中に据えた作りだったのに対し、ガルガルが生まれる背景とか、プリキュアとして気をつけなきゃいけない秘密とか、こむぎが上手く言葉にできなかった戦う理由とか、ロジカルな側面を大事にした第2話となった。
 なにしろこむぎは犬っころなので、思いが先走って言葉が追いついてこない局面が多いわけだが、いろはちゃんは飼い主……というより、一緒に笑って生きてきた年長の家族として、人間の常識に縛られ危うい妹を守り、賢く優しい立ち回りをしてくれていた。
 何も信じられなくなっていた野良犬に、手を差し伸べ心を変えた過去も描かれ、二人がガルガル事件に立ち向かっていく理由も、お互いの起源に結びついてより鮮明に。
 言葉なき獣達の声を聞き、辛さを減らし幸せを増やしたいといういろはちゃんの願いが、獣医という家業、子どもなりにここまで過ごしてきた経験から生まれているのも、人間を突き動かす行動理念がどこから来るのか、大上段に構える事なく教育や学習に対して前向きな姿勢が見て取れて、とても良かった。
 あくまで個人的な思いに突き動かされ、『いろはが喜ぶからやる』なこむぎちゃんの、狭くて深い……人としては危うさもある純粋な愛情も、家族から学んだものを己に引き寄せ優しい戦いに挑むいろはちゃんと、触れ合う中でより広く育っていくのかなと、ここからの物語に期待が膨らみました。

 

 つーわけで、いろはLOVEぶっちぎりなこむぎちゃんが急に人間になって、当惑するいろはちゃんを主役に物語は進む。
 人間社会の難しいこととかなんにも知らず、ボール遊びに追いかけっ子、楽しいことばかりで過ごしてきたこむぎちゃんが悩まなくて良いところに、お姉ちゃんはちゃんと目線が言っているわけだ。
 この純真無垢なエネルギーの塊に翻弄されつつ、末っ子に足りない落ち着きと社会的視座を持っている”姉”というポジショニングは最高に良くて、お互いの特徴を噛み合わせてコンビが前に進んでいく、力強いトルクを感じ取ることが出来た。
 ほーんとこむぎちゃんがただただ真っ直ぐに、いろはちゃんが好きで好きで好きでしょうがない様子、それが嬉しくてしょうがない姿がたっぷりと描かれ、それよりは落ち着いた現れ方しているのだけども等しく強い愛をこむぎに向けているいろはちゃんとの、バランスも凄く良かった。
 タイトルをひらがなに、描かれる情動もシンプルかつ真っ直ぐなこのプリキュア、狙ってるメイン層は普段より下気味かなと感じるわけだが、だからこそ頑是なく曇りない愛を全力全開、描きまくる力強さが胸を打つ。
 いいじゃぁないの……誰かが好きだって、大きな声で笑いながら言えるってことはさ……。

 犬が人間になったとありゃ一大事であり、いろはちゃんは突然抱え込んだ秘密に翻弄もされるのだが、それはあくまで楽しいハプニングとして描かれ、こむぎと言葉で向き合えるようになった喜びは、厄介事を大きく上回っている。
 『ペットとお話したい!』という、メイン顧客層の欲望に真っ直ぐ応え、『ええじゃろ……アンタを純粋に慕う最高生物と、もっと深く分かり会えるのは……』と描き続けているのは、このプリキュアの凄く良いところだと思う。
 『絶対お話したい!』という素直な可愛さ、真っ直ぐで力強い愛情がこむぎちゃんにあることは、前回こむぎ自身の視線から、今回それを受け取るいろはの目線から、しっかり削り出されている。
 素直に『超いい……』と思える最高動物と、『絶対そうしたい!』と思える最高触れ合いを山盛り届けてくれるのは、お話を楽しいと思う一番原始的なところに力強いブロウを叩き込んできて、多幸感が凄い。
 愛され、愛すことの根源的な幸せに、何の寺井も恥ずかしげもなく飛び込めているのは、”動物”を題材にした強みかなぁと思う。

 

 色々口やかましいメエメエをサイドキックに、ガルガル現象を癒やす秘密の戦士となった、犬飼家の少女たち。
 自分が変身戦士であること、喋る動物が世界にいること、カバンの奥には異世界への扉があること。
 幸せな日常をジャンプボードにして、特別な非日常へと飛び上がっていく秘密の作り方、見せ方もなかなかワクワクする感じで、大変良かった。
 窮地に陥った時の思い出ボムに示される、当たり前であまりに幸せな日々が二人にあるのだと示されたことで、それがあればこそ高く飛べる特別な気持ちよさも、より鮮明に際立ったと思う。
 ここら辺の手際と丁寧さはさすがのプリキュア序盤という感じだが、爆走する動物達に追いつけない人間形態のぜいぜいと、プリキュアチェンジして得た超絶身体能力でガルガルに並べる特別さを、しっかり対比して描いてたのも良かったな。
 何しろ物言わぬ動物が主題なので、語らず描いて分からせる表現の強さは、今後も大事にして行ってほしい。

 犬飼シスターズに焦点を合わせつつ、関わる人達の描写もいい感じであった。
 対人関係△なのに愛猫についてはめっちゃ喋る猫屋敷さんとか、動物博士っぷりをいかんなく発揮する兎山くんとか、謎の石が照らす不思議ファンタジーに、なかなかいい味添えてくれそう。
 大福ちゃんもガルガル出現に耳尖らせていたが、あれが動物特有のカンなのか、やがてプリキュアとなるものの特別なセンスなのか、今後を見届けたい。
 まだまだ序盤、しばらくは運命に選ばれた少女たちの生活と非日常を描きながら、物語が開花する土壌を耕していく段階だと思うが、いろはちゃんとこむぎの交流が既に大変いい塩梅なので、今後人間ドラマが横に広がっていく時の爆発にも、色々期待してしまうね。

 

 んで。
 今回は前回あまり明言されなかった、”わんだふるぷりきゅあ!”がわざわざ危険な事件に飛び込んでいく理由を、凄く鮮明に描いていた。
 いろはLOVEだけが原動力にも思えるこむぎだが、いろは抜きでも前回動いたように、傷ついた誰かに手を添えてあげたい仁愛の気持ちは、彼女なりに強い。
 しかしそれは無から生えてきたわけではなく、雨の中一人きり打ち捨てられたときには、こむぎだってガルガルしていたのだ。
 そこに手を差し伸べ、一緒に飯食い風呂入り生きてくれる誰かがいてくれたことで、既にこむぎはガルガルを治してもらっている。
 自分でもワケの分からない暗い感情に押し流される辛さ、そこから助けてもらうありがたさと嬉しさを知っていればこそ、こむぎはガルガルに共感し、助け出すことが出来る。
 言葉はなくとも、いろはちゃんと共に過ごした日々はこむぎにとても大事な優しさと強さを、既に教えていたわけだ。

 抱きしめるその両腕で、人の生き様を妹に伝えていた”姉”は、こむぎの素朴な仁愛からちょっと先にある場所へ、己を押し出していく。
 大暴れするガルガルを厄介なやつだと、上から理屈で殴りつけることは簡単(だからこそ、時に正しいとすらされてしまうだろう)なんだが、いろはちゃんは何よりもガルガル自身の辛さに身を寄せる。
 望まぬ闇に染められ、己を見失って暴れる時、何より辛いのは翻弄される当人。
 そういう立場からガルガルの真意を受け止め、フィジカルなぶつかり合いを通じて言葉を交わそうとする姿は、コミュニケーションとしての医療を間近に見てきた人だなぁと思えた。

 制御不能な情動に振り回されている相手と語らうのは、一筋縄ではいかない。
 勢いよくぶつかられ、時に傷を追ったりもするだろうけど、そこで安全圏に退くよりも大事なことが、それを諦めたら”犬飼いろは”ではいられないような人間の核が、少女には確かにある。
 それがこむぎを導いているのと同じくらい、こむぎとの日々があってこそ愛し愛される事の意味、それを全霊で伝える価値を学んでいるという描き方は、姉と妹、人間と犬がお互いを補い、学びを与え合っている感じで、大変良かった。
 あくまでいろはちゃんへの個人的な情動から出発し、見知らぬ他者へ優しくなる方法を学び取りつつあるキュアワンダフルに対し、より客観的で普遍的な価値観を己に引き寄せて、当たり合うもの、癒やすものとしての己を荒れ狂う闇に投げ込む、キュアフレンディのスタイル。
 その両方があまりにも強く、優しく、正しいのだと、前回と合わせてしっかり描けていたと感じた。

 

 話の通じねぇガルガルに、それでも言葉を届けようとするいろはちゃんは、コミュニケーションに対して大きく開かれている。
 まゆちゃんも悟くんも、自分の”好き”を上手く制御しきれなくて早口になっている感じもあるので、そこをグイグイ切り開いて人間動物とも”お話”してくれると、良い味わいが出てくると思う。
 拳を一切振るわない、浄化技すらパなさない。
 今までのプリキュアから大きく変化したわんぷりのバトルスタイル。
 これがどこまで続くのかは正直わかんねぇんだけども、今まで通りの肉弾バトル描かれてたら『話し合いするのに、拳握る必要ねぇだろ……』と思っちゃってたかも知れないわけで、とにかく語らいを望む女の子を主役に据えた話として、俺はこの決断スゲー偉いと思っている。
 『抱きしめることだって……戦いなんだ!』と、かなりいい感じにアクション仕上げて伝えてくれる作りにもなってて、安全圏から御高説たれて浄化完了ってわけじゃなく、体張って全身全霊で抱きとめてようやくガルガル治った! つう塩梅なのも良い。

 ”救う”という行為には自動的に勾配がついてしまうので、救命者には『助けてやろう』って高慢がほぼ自動的につきまとうものだと思うけど。
 こむぎに手を差し伸べた幼い頃の経験が、血肉となってどうしようもなく『私に助けさせて欲しい!』という想いを燃やし、いろはちゃんを突き動かしている描写が濃かったの、上手くそのヤダ味を抜いたなって思った。
 二人のオリジンを早めに見せたことで、禽獣相争わぬ現世の楽園アニマルタウンにも、ありふれた不条理は確かにあると……それを超える愛の奇跡も同じく存在するのだと、しっかり示せたのも良かったね。
 今後どんくらいの深度で、動物と人間が共にあるから必然的に生まれてしまう難しさに切り込んでいくのか(あるいは、あえて踏み込まなかったり見落としたりするのか)はまだまだ見えないけども、そこに確かに在ってしまう、だからこそ『私に助けさせて欲しい!』と思える難題に挑む足腰は、ちゃんと見せれたと思う。
 ガルガル浄化っていう超常的な行為が、共感度メッチャ高いヤサグレ捨て犬救済体験にしっかり紐づいていて、プリキュアになる前の当たり前の日々こそが特別な強さを支えているのだと、戦う理由、強さの意味が鮮明だったのは素晴らしい。

 

 というわけで慈愛の戦士キュアフレンディ、堂々のデビューでした。
 異常状況に翻弄されつつも、自分が何をしたいのか、何が出来るのかちゃんと考え、震える体を愛で鎧って嵐へと進み出す、見事なヒロイズムを見届けました。
 好きになっちまったな……犬飼いろは……。
 前回こむぎのピュアな一人称に徹底的に潜り込み、『このお話は……こういう事やるんじゃいッ!』と叩けた力強さを、上手く補強して整理する話にもなっていて、上手さと強さが相補う、見事な二話でした。

 無事二人目が変身を果たしたところで、次回は鞄の中のワンダーランドへレッツゴー。
 一人で抱え込むにはあまりに重たい、異世界の秘密と厳しい戦いを動物博士が助けてくれる気配もしっかり作られていて、わんぷりの世界がどう広がっていくのか、大変にワクワクします。
 人間だからこその秘密と気苦労は、幼いこむぎじゃ背負って描けない……でも描いておかないと作中のリアリティが蒸発しかねないポイントだったと思うので、いろはちゃんの人間見せつつ上手く削り出せたの、メッチャ良かったな。
 愛と勇気に満ち溢れた最強のふたりが、どんな戦いを抱きしめていくのか。
 次回も楽しみです。