イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ぶっちぎり?!:第5話『戦慄!エビチリは雪のように!』感想

 仕組まれた戦いと知りつつ、火が付いた拳は止まらない。
 不良抗争千夜一夜、最大勢力激突寸前の情勢に語られる、孤独な皇帝の過去。
 ラスボス候補はいい感じに粘ついた感情をさらけ出し、主役は相変わらずスパンとハマらないぶっちぎり!? 第5話である。

 前回緊迫の出会いからのらりくらりと幸運が微笑み、3つ目のチームのヘッドともなんとなくコネが出来た荒仁くんであるが、脱童貞のチャンスにフラフラしたりまほろちゃん狙われて燃えてみたり、やっぱり芯がどこにあるかは解んなかった。
 本気人を目指した過去がどう踏みつけにされたか明かされたりもしたが、その挫折を奮起の材料にしたり、自分を慕ってくれる真宝くんの思いに応えるだけの重い感情を出したりもしないので、相変わらず話の真ん中から外れたポジションで主役やってんな、という感じがある。
 シグマに入ったのも阿久太郎になびくのも、フラフラ流されるまま決断出来ない軟派の結果であり、主役補正が災いしてボッコボコに負けることも出来ないので、この軽薄さを改めるチャンスもなかなかやってこない。
 たぶんこー、そこら辺突き詰めたギッチリ感はあんま求めず、腰が座らない情けなさを愛でるお話なんだとは思うが、暴力主題に据えておいてそれはあんまりに柔弱で、いつか入るだろうと思って待ってる真芯が、全然見えぬままではある。

 

 むしろ拳一郎への歪んだ愛に酔っ払い、なりふり構わず視界に入ろうと鞭を手に取った、阿久太郎のほうがスジ通ってるな、と感じてしまった。
 武器使わないから魅那斗やシグマの暴力は”良い暴力”で、使うからNGの暴力は”悪い暴力”って線引が作中にあるっぽいけど、彼らが殴り合いしてどこに行きたいのか含めて、血の絵の具で何を描きたいのかがいまいち不鮮明である。
 暴力は所詮暴力と、地道なトレーニングと悪知恵でヒョロガリもやしから強くなって、惚れた男に認めてほしかった阿久太郎のほうが、シンプルに本質に溺れていて迷いがなく思える。
 ここら辺、この作品世界で不良であること、暴力をためらわないことがどんな意味を持ち、どんな不利益を引っ張ってくるのか、作中で明瞭な描写がないのが効いてるかなぁと思う。
 不良っぽいもの、暴力っぽいものとして、咲くひん個別の顔を持たぬまま所与のものとして扱われている、じゃれ合いのような暴力。
 しかしそれが”暴力”という看板を掲げる以上、ついて回る血生臭さと虚しさは確かにあるはずで、だからこそ本気人への夢を踏みつけにされた荒仁くんは、そこから立ち上がれない傷を抱えている……のだと思う。

 しかし彼が巻き込まれ、なんら半端な精神性を成長させないまま巧いこと波に乗れてしまっている対立構造の中で、なぜ拳を振るわなければいけないのか、そこにどんな”本気”があって譲れないかは、未だ明言されていないと僕は感じる。
 なんでシグマと魅那斗が対立を続けていて、殴り合うことで何が生まれるのか、話の中心にあるエンジンの作動原理が、こちらに見えてこないと思えてしまう。
 主役として本気人の力に見初められて、特別な扱いを受けるに至った荒仁くんが、どこに流れ着き何になりたいか、結末を先回りして感じ取らせるような大きな構図が、未だに見えない。
 これは正直、結構なストレスだ。

 不良にしろ暴力にしろ千夜一夜にしろ男と男の関係にしても、テーマとして選び取ったからには作り手なりの”本気”があるはずで、しかし現状なかなか、それを感じ取れない。
 真宝くんの懇願を押しのけて二大ヘッドが殴り合わなきゃいけないどデカい理由も、あんだけ情けない顔を見せられなお真宝くんが荒仁くんに期待を寄せる足場も、『そういうもんだから』以上の手応えを物語の中、なかなかすくい上げられない。
 正しい間違ってるは横において、それをしなけりゃ気がすまないという揺るがぬ芯が曲りなりあると感じられるのはまほろちゃんと阿久太郎であり、彼らに好感を抱くのは多分、それが理由だ。
 賢い生き方に背を向けて、暴力片手にツッパリ決め込むワケってのを、とっととハッキリ見せて欲しいのだろう。
 荒仁くんのキャラクター性がそういう明瞭な視界を得れていないこと、だからこそ軟派で半端であることに宿っているのは理解できるつもりだし、だからこそ本気になっていく物語の主人公としての推進力を得れる……って構図なんだろうけど、5話にして情けなさが反転し不良物語の主人公を張る物語的体幹が感じられないのは、僕の感覚としてはずいぶんと遅い。
 主役を好きにならないとお話を見続けるのは厳しいので、とっとと荒仁くんを好きになりたいのだけども、賢くも優しくも一途でもない彼をチャーミングと感じるのは、なかなかに難しい。

 

 ここら辺の弱さや遅さ(と僕が感じるもの)を補う、圧倒的な画作りのセンスや冴えたユーモア、あるいは湿度の高い感情への執着なんかが補助してくれえば、もうちょいガッツリ噛み付けるのだろうけど、そこもどうにも噛み合わなくて、自分的にはなかなかに難しい。
 真宝くんが荒仁くんに向けてる過剰な期待は重たくて良いんだが、これに答えるだけの強い反発とか、あるいは表面的な拒絶をぶっちぎる絆とかを見せることもなく、フツーに断ち切れない腐れ縁を重たく感じ、釣り合わないつれなさで跳ね除けてしまっているように見えて、あんま欲しいところに球は来ない。
 二大ヘッドの間にどんな因縁があって、譲れぬ決着を求めているかは描かれていないし、今回阿久太郎が見せたような関係性の拗れがいろんな形であってくれると、より自分ごのみで食べやすかったのかな……などと思う。
 つーか前回のヒキで、千夜と一夜が共有する背景や感情、荒仁くんを依り代に選んだ事情なんかが見えてくることを期待したわけだが、深く食い込まぬまま状況が転がってしまって、かなりのスカ食わされた感じがあった。
 ライトでサラッとした軽快さで走り抜けるには、自分的には不良と暴力という題材には腰を落として向き合って欲しくて、しかし画面から立ち上がってくる雰囲気はなんともサクサクしていて、ここら辺のギャップをどう噛み砕いたものか、未だ答えは見えない。

 まほろちゃんを蔑されたことで荒仁くんにも赤い本気が入ったっぽいが、それが一度きりの沸騰ではなく彼なりの本気を暴く、熱い炎になってくれるのか。
 抗争の行方と合わせて見守りたいところだが、自分が見たいと思っている物語と差し出される展開が噛み合っておらず、『俺に向いてないアニメなんじゃないかな……』という疑念が、結構な勢いで立ち上がってきた。
 この状態が反転することなく続くと、自分にとって良くない視聴になるし読んで気持ちいい感想にもならないだろうから、来週あたりで旗幟を鮮明にしたほうが良いかなぁ、と思い始めている。
 自分とこのお話の付き合い方がどうなるか、楽しみっちゃあ楽しみだし、そういう部分をフラつかせたままもう、半分転がっちゃったなって感じもある。
 一つ言えるのは、俺はこのアニメを好きになりたいと思いながら見始めて、今でも好きになりたいということだ。
 なんとも煮えきらないが、今回はこれで感想を閉じる。