イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

外科医エリーゼ:第6話『昼想夜夢』感想

 上がったハードル脇に置いて、今日は王様誕生日!
 宮廷群像劇方面の横幅を広げていく、ダンスホールの華やぎをメインに据えた、外科医エリーゼ第6話である。

 つーわけでお医者様よりお姫様要素にクローズアップしたお話であり、周りのモブ達が一生エリーゼの外見褒めそやして、天井に届くくらいの褒め櫓が仕上がっているの面白かった。
 こういう細かいワッショイが、作品を求めるファンたちの気持ちをくすぐり満足させるのだろうから、大事なことなのだろう。
 ……こういう間接的で離人的な評価しか出来ねぇジャンルを、わざわざ食ってる理由とか時折考えてしまうけど、しかたねぇだろ興味はあるんだから。

 

 お話としては新キャラ顔見世と現状説明つう塩梅で、褐色肌も眩しいユリエン姫君との因縁を水に流して友達になったり、ミハイル王子が意味深に顔見世したり、『こいつが次の医療無双ターゲットです!』とばかりにパーキンソン病患った老婦人が出てきたり、新要素盛りだくさん。
 ユリエン姫君がめっちゃ由緒正しいヴィクトリア朝貴婦人仕草をパなしまくり、何かと失神するのめちゃくちゃ面白かったな……変なところで古式ゆかしい。
 二回の転生を経て心底おもしれー女になったエリーゼに、リンデン陛下はすっかり夢中なので、前世で燃え上がった恋との鞘当は発生しない感じかな。
 つーか前世の体たらく(他の人にとっては訪れない未来)が身にしみて、『恋とかやってる場合じゃねぇ! 真人間ロードを真っ直ぐ突っ走らないと!!』と気合入っとるエリーゼにとって、陛下とのロマンスは終わった夢……ってことにして、あんま体重預けてない感じ。
 この及び腰が前のめりになって、私人としての本心へ進み出すってのが、技量も人格も完成されているエリーゼが持ちうる、ほぼ唯一の成長物語なのだろう。
 転生を経て聖人となった悪婦が、ごくごく普通の幸せに素直になるドラマが軸にあるの、かなりユニークで面白い作りだな……転生モノだからこその構成だと思う。

 前世の知識はエリーゼにとって、医術無双決め込むためのブースターであり、消えない呪いでもある。
 最悪の結末を避けるべく全力を尽くして、その結果周囲からは完璧な聖女として認められているのに、前世の記憶を唯一持ったエリーゼだけが、完璧ではない悪役令嬢時代を覚えている。
 というか人格の基盤は未熟で最悪だった”一周目”にこそあって、”三周目”は取り返しがつかない前世の過ちをどうにか濯ぐための、ある意味人生全部代用品みたいな部分があって、なかなか痛ましい。
 ここら辺のメンタリティ、転生者故の祝福と呪いって感じななかなかに面白く、愛した人とは心通じ合わず、国=家は自分の放埒でズタズタにされた痛みから、エリーゼは別に開放されてねぇんだな、って思った。
 スカッと野放図な医療無双に突き進み、リンデン陛下とのロマンスを熱く燃やす中で、ちったぁ最悪だった自分の失点を現世の奮闘で取り戻すのではなく、許し認める方向へ心が向くと良いなぁ。

 

 二人の王子が相争い、盤石なはずの皇室の足場が揺らぐ未来が見え隠れする宮廷。
 第三王子ミハイルと馬があったのが、”一周目”で国=家がガタガタになった遠因なんだろうけども、そもそも輿入れするつもりがない今回、どういう形でブリチアの舵取りに関わっていくのか。
 なまじっか冴えてるところを見せてしまったばかりに、政局運営に欠かせない人材と王様には見初められて、勇み足の婚礼延期(実質名指し)をぶっ放して退路を塞がれたわけだが、あのオッサン流石に国父、腹芸結構上手かったな……。
 医者と王妃、対立しているように見える二つの道を上手く乗りこなして、ロマンスとキャリアの両取りを達成する今風な勝利が、この先に待ってる感じはある。
 つーかせっかく転生チート持ってんだし、『夢か現実か……どちらかを選ぶ以外道なし!』みたいな世知辛さは全力で蹴っ飛ばし、ライフ・ワーク・バランスを制圧しきったスーパー充実人生ぶっ放してくれたほうが、超気持ちよくて最高だもんな。

 そのためにはまず医師資格取って、難易度上げてクリアできねーだろとナメてる連中に理解らせるトコからなんだろうけど……やっぱどんだけハードル上げても、単身での脾臓摘出手術を成し遂げたエリーゼ大先生が、ひょいひょい飛び超えていく姿しか想像できねー!
 この無双感は作品全体に漂う気持ちよさに直結しているため、なかなかフツーに難しい事に向き合い、足踏み努力して飛び越えていくっつう話作りも難しいのかな、と思ったり。
 どんだけ誠実に頭下げられても、ついこの前まで最悪のクズカスだったクソアマを普通なかなか受け入れられないと思うのだが、”人が変わった”エリーゼを周囲の人はスラリと受け入れ、認め、朗らかな関係を気づいていく。
 ユリエン姫君との関係構築も、そんなスムーズでスマートな話運びに乗っかってストレス少なく展開したわけで、ここは引っかかるポイントじゃあないのだろう。
 俺はこのお話の、そういう濁りのなさが結構好きだし、そういう展開を『都合がいい』と跳ね除けるのではなく、キャラとお話の味わいとして楽しく飲めるよう、色々工夫して雰囲気作ってくれているのもありがたい。
 転生を繰り返し、因業のツケを身を粉にして返し続けている人の改心が、報われるお話ってのはシンプルに気持ちが良いなと、見てて感じるしね。

 

 つーわけで、ノンキに医者やってればどうにかなる訳でもない、優秀であるが故の檻に主役が囚われてる現状を、華やかにスケッチするお話でした。
 実際人生三周目、国ごと燃えるヤンチャから学んだ謙虚さと知恵が武器であるからこそ、宮廷に巣食う不破、国外に疼く戦乱という病巣も切除できる腕前を期待されるのは、なかなか面白い重荷だ。
 転生者の後悔が個人として患者を救うことだけでなく、前世でやりそこねた国土救済にまで伸びてくると、医者であり王妃でもある超人的ポジションをこそ、自分の願いと求めなきゃいけない未来が、新たに見えてくる……かなぁって感じ。
 リンデン陛下とのロマンスを進めていくと、否応なくそういうルートに乗っかるとも思うし、さてはて今後どう転がしていくのか、なかなか楽しみだ。

 ここまで同性の友人がおらず、一人で医療無双ぶっこいてきたエリーゼの隣に、ユリエン姫君がニョッキリ顔出したのも、いざという時のサポーターが必要だろうしね。
 ユリエン姫君はすげー素直に好感持てる、この話らしいキャラだったので、今後もエリーゼとキャッキャする場面があってくれると嬉しいかな。
 王様が大変いやらしい政治的牽制を社交界にぶっぱなし、色々波風高くなってきたところで、そろそろ医師試験本番。
 次回何が描かれるのか、大変楽しみです。