イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ガールズバンドクライ:第1話『東京ワッショイ』感想ツイートまとめ


 ガールズバンドクライ 第1話を見る。

 東映アニメーション×酒井監督×花田脚本でお送りする、少女ロックンロール3Dアニメ。

 構成要素は先行作とモロ被りだが、舞台となってる川崎の風、メインである仁菜と桃香のキャラクター性が結構独特で、強い球を真っ直ぐ投げてきた第1話と合わせて、なかなかに良かった。
 もっとこー……『どっかで見たな…』とデジャブる作りかと思ったが、不定形の新しい雰囲気がどっかにあって、ちゃんと目が覚めるスタートにしてくれた。
リアルバンドであるトゲナシトゲアリの楽曲に説得力があり、音楽モノとしての背骨はかなり太い印象。曲強いのはやっぱ良い。

 少女×音楽×3DつうとバンドリとD4DJが既にデデンとそびえ立っており、3Dを外してもそれこそラブライブ! とかレビュースタァライトとか、怪獣クラスのコンテンツが既にブイブイ言わせているジャンルである。
 そこであえて、新しい爆弾を投げ込むからにはなにか勝算があるのか…と構えていたわけだが、かなり素直な作りで勝負してきた。
ややアップテンポで、漫画チックな仕草とふるまいを交えつつ叩きつけられる、ド直球の音楽と青春。
 飲み干した後に感じる人工甘味料の微かな味わいが、むしろあざとく心地よい塩梅は、個人的になかなか良い感じだった。
いかにもな”萌え”を、時折摂取もしたくなる。

 サンジゲンやオレンジ、ポリゴン・ピクチュアズといったトップランナーに比べると、東映アニメーションの3Dはやや人形感が殺しきれず、背景から人物が浮き上がっても見える。
 しかし主役のキャラ付け、全体的な雰囲気からするとちょっと人工的くらいな味のほうが馴染みが良く、見ている内に自分の中に収まるべきところを見つけてくれた。
お上りさんの都会への期待を反射し、大聖堂みたいな輝きで包まれる東京駅の描写にしても、漫符を活かしたコメディーシーンにしても、全体的に現実より心理でドライブさせる作風に思え、それと選んだ表現はしっかり噛み合っていたように思う。

 ここら辺の浮遊感を地面につなぎとめるアンカーが、川崎の風景なのだが…大変良かった。
 地に根ざした生活感と、オシャレに生まれ変わりつつある新しい空気を上手くアニメの中にパッケージして、なにか特別なことが起こりそうな物語の舞台として、綺麗に描けていたと思う。
 結構馴染みがある街が、ピカピカ青春物語の舞台として磨き上げられていく異化作用は、何回味わっても面白い。(”青ブタ”シリーズの藤沢とかね)
冒頭東京駅を眺める浮ついた視線と、ラスト雨中の川崎駅のファンタジックな描き方がちゃんと違っていて、仁菜が一話を通して変化させたものが可視化されていたのは、良い演出、いいスタートだった。

 

 仁菜から桃香への感情が既に濃くあって、時折すれ違い小さくぶつかりつつも、小型犬のような元気さで懐いてくる後輩と、夢破れつつ面倒見の良さを失ってない先輩の、バディ感の噛み合いも良かった。
 少女たちがどういう想いでつながるのか、それをロックがどう媒介するのかは、飽和状態にあるガールズロックアニメに、この作品ありと吠える上でかなり大事だと思う。
楽曲の強さに支えられて、そこん所かなり分厚く突き出すことが出来た第1話だと感じた。

 やっぱ俺は『この話はこういう話ですぅ!』と、大声で挨拶してくれる第1話がいっとう好きだ。
 このアニメはバカが川崎で、ロックンロールに熱血する話。
 良いじゃない。

 

 熊本弁もチャーミングな、暴走小動物仁菜ちゃんがしっかり可愛くて、この先を見たくなる主人公なのも良かった。
 ここの好感度をテコに、仁菜に優しくしてくれる桃香パイセンへの好意もグッと上がるわけで、二人に的を絞って走るスタートにしたのは、とても良かったと思う。
 彼女たちの描かれ方をテストケースにして、この後癖強そうな追加メンバーがモリモリ顔を出していくのだろうし、今回みたいな画風でやってくれると、なかなか面白いものが見れそうだという期待も高まっていくだろう。
 いかにも漫画テイストな筆致が目立つ部分もあるが、現状エグみより可愛げのほうが濃いので、自分的には上手く乗れている。

 思いっきり中指二本突き上げるわりに、そのヤバさを自覚してない危うさは、キャラも制作陣も自覚してんのかしてねぇのか、いまいち分かんないところは不安ではある。
 下世話なネタだからダメっていうか、『ロック≒ファックサインという方程式は、もう古いんじゃないかな…』という、主題の扱われ方への不安だけども。
 ポップなイメージにベタ足で寄り添って、欲しいところに強く突き出す部分と、それを裏切って独自の味を出す部分のバランスが、今後更に難しくなっていきそう。
 『俺達のロックはこれだ』と、どっかで叫ばなきゃ嘘になるジャンルと作風なんだけども、それに全身全霊で頷けるよう、物語の滑走路を整えて欲しい。
 ただ浅はかでバカなのは、若くて元気で可能性に満ちていることと繋がってもいるので、仁菜と桃香さんが川崎一のバカヤローなのは、自分的にはプラス要素。
 ケンカしていたストリートバンドが、二人の叫びに当てられてバックバンドヤッてくれるとことと、主役だけでなく世界全体が気持ちよくバカっぽいのは、見てて楽しいポイントだった。

 ここら辺の細かいクスグリは、鍵かかった新居でガサゴソやってたら、一見いい人そうな若夫婦が背中にゴルフクラブ隠して様子探ってくる場面でも、なかなか良い出力出してた。
 今後もメインであざとく暴れる萌え味に、ああいう小気味よさを刻んでくれると、なかなか良い味になるんじゃないかと思う。

 『何者でもない青年が、何者かになりたくて東京にやってくる』という、手垢のついた王道を川崎に少し逃がして、力強くかき鳴らした第1話。
 ここからどうメンバーを増やし、物語を膨らませていくかの手際は未知数だが、ポテンシャルはかなり感じるスタートだった。
 もっとオシャレにまとめるかと思ってたけど、かなりベタ足の萌え萌え深夜アニメで、でも多分それが一番馬力出るセッティングだなと思える、妙な納得があったな…。

 己を川崎の夜に吠えちまった二人が、今後どんなロックを奏でていくのか。
 次回を楽しみに待ちたい。
 …何をどうやってもぼざろとは比べられる定めなので、それを殴り飛ばすだけのロックが必要な作品ではある