イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

となりの妖怪さん:第1話感想ツイートまとめ

 となりの妖怪さん 第1話を見る。


 ライデンフィルム制作の、妖怪や神霊が田舎暮らしに当たり前に同居している変速日常系。
 テイストとしては伝奇色を強めた”のんのんびより”…というには、作品独特の味が第1話からしっかり滲んでいて、大変良かった。

 想定していたよりもふわっと優しいだけで終わらず、新生した猫又が行政手続きしたり、年一で帰ってこれる彼岸と不帰の虚無空間が区別されていたり、『妖怪が当たり前に隣りにいる世界』がどんなものか、肩肘張らずに作り込んでいて面白い。
 ある種の異種族SFとしても楽しめ、むーちゃんとぶちお、二人の成長物語という側面もありそうな、贅沢な仕上がり。

 

 結構色んな要素があるアニメで、田舎ネタとしては作中に漂う夏の風が感じられる美術、それを心地良く増幅してくれる音響の仕上がりが良い。
 妖怪がいる世界を当たり前に感じられるかどうか、自然さがかなり大事な作風と思ったので、非常にスムーズに作品の舞台を”良いところ”と受け取れるスタートだったのは、凄く良かった。

 涼やかな風が吹き抜ける山あいの村で、猫又と少女は今後色んなことに出会い、苦労したり笑ったりしながら、ちょっとずつ自分を育てていくのだろう。
 そんな人間の当たり前は、神様や幽霊や妖怪がいる場所でも変わりがなく、しかし確かに僕らの日常と違う部分もある。

 日常と非日常。
 隣接し融和した両方を大事に、面白く描けるかどうかがキモかと思うが、冒頭カブトムシの脱皮を見届けるテンションで猫又新生を語る小学生から、そこは大変良い感じだった。

 

 むーちゃん達の溌剌とした子どもらしさは、僕らも慣れ親しんだ普遍性があるのだけども、それが見つめる先には見知らぬ異形があり、しかしぶちおの妖怪一年生は山盛りの手続きだったり、化け学修行だったり、新生活につきものの楽しい苦労に溢れている。
 梶くんが太眉化け猫を朴訥に好演し、大変可愛らしいのは良い。全体的にチャーミングなキャスティングで、作品のムードととても合っていると感じた。

 妖怪と言えば日常を乱す異物であり、バトルだの対立だの血生臭くなるのが常道だが、人が自然と共存する田舎町の風に包まれて、そういう力みが上手く抜けている。
 人間の形であろうとなかろうと、特別な資質を持った巫女にしか見えなかろうと、”それ”は確かに人の暮らしの隣…あるいはその中に存在している。
 外見も多彩な異形達を、隣人として当たり前に受け入れて社会を構築している人たちの豊かさを感じつつ、山間の異文化を覗き見る面白さ、物珍しさも味わい深い。
 作品全体を貫通する視座に、ポップカルチャーより民俗学の匂いがあって、それが心地よい独自性を生んでる感じかなぁ。好きな土臭さだ。

 

 父親が謎時空に食われているむーちゃんは、見た目ほど天真爛漫幸せ満載な小学生ではない。
 この身近な薄暗さを第一話からしっかり提示しつつ、柔らかな対応でオヤジ代わりを買ってでてくれるジローのありがたみで、優しく受け止めてくれる手応えも良かった。

 無条件に良いことしか起きない、都合の良い”優しい世界”ではないけども、人が生きてるなら当然起きる哀しみにも救いがあって、なんとかかんとか顔を上げて生きていける。
 そういうハンディな手触りを、獣面の隣人と一緒に掴み取っていく話なのだというメッセージが、静かに力強く立ち上がってくる第1話だった。
 俺好きだな、このアニメの空気…。

 

 この世界の妖怪はヒトの在り方の一形態でしかないわけで、おどろおどろしく力んだ形ではなく、ごくごくフツーにTシャツとキャップ被り、暑い中汗を流して農作業をしている。
 ジローの立ち姿が自然と教えてくれる、このお話のスタンスが心地良くて、今後もあの優しい烏天狗がどう日々を過ごすのか、見届けたい気持ちになった。

 俺は優しいおじさんが好きなので、むーちゃんにとにかく優しいジローを見て、すっかり好きになってしまった。
 家族が手渡すゆりかごから、どうしてもはみ出してしまう気持ちを唯一受け止められる特別さを自覚しつつ、エゴを抑えてむーちゃん大事で向き合ってる姿勢、マジ立派。偉すぎる天狗。

 

 舞台が山あいの村なので、山に憑いて土地を守る天狗がメインにいるの良いんだよな~。
 修験者文化なんかと絡み合いながら、妖怪であり神様でもある不思議なポジションに天狗はいて、そういう風に不確かで愛まいな豊かさの只中確かにいた古い存在達が、未だ街の文明に殺されず、彼らなりの人生を一歩ずつ進んでいる世界。
 カミ亡き世界の民俗学的ノスタルジーを受け止める器としても、田舎町の静かで涼し気な夏はとても良い仕事をしていて、舞台としてのポテンシャルを感じた。

 ここなら、確かに神様たちが生きてて良い。
 自然とそう思える舞台を仕上げたのは、大変素晴らしいスタートだったと思う。

 

 むーちゃんとぶちお、人間と妖怪。
 幼さを残す二人を主人公に据えて、結構群像劇的横幅で色々書いていく話なのかな~、って第一印象だが、さてこっからどうなるか。
 どうなっていっても面白いんじゃないかという、良い感じの期待感がある第1話でした。

 妖怪という他者を通して、異形なる他者をどう受け入れていくのかを、あくまで田舎町の風景の一つとして構えすぎず描けると、現代的なメッセージがノスタルジーにしっかり宿ると思う。
 そういう背筋が伸びた話を、やれそうな力強さ、やるぞという気概も穏やかなスタートから感じ取れ、大変良かったです。
 俺、このアニメ好きだわ。
 次回も楽しみ!