イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

わんだふるぷりきゅあ!:第10話『ユキの中の思い出』感想

 如何にして内気な少女は、雪深き山あいの村で彼女の運命と出会ったのか!
 猫屋敷姉妹の出会いを描く、ゆったりまったりわんぷり第10話である。

 そろっそろ新キュア変身しても良さそうな頃合いにやってきた、気になる二人メインのお話。
 『コイツぁ……”来る”ぜ!』と内心ワクワクもしてたんですが、とてもわんぷりらしい焦らなさで、猫屋敷まゆがどうしてつれないユキに夢中なのか、どっしり描く回となった。
 バトルノルマに焦ることなく、穏やかな雰囲気で変身少女たちの日々を描いていけるのはわんぷりの凄く良いところだと感じているので、今回の落ち着いた雰囲気とテンポは大変良かった。
 あんだけ新しい生活に怯えていたまゆちゃんが、いろはちゃん達と仲良くおしゃべりして、賑やかになってきたプリホリの新商品任されて、一心不乱にアイデアに向き合った挙げ句最高の一品を作れるまでの、とっても小さく確かな手応えの足取り。
 それを全部一緒に追いかけられるのは、やっぱ豊かで良いことだなと思うのだ。

 話としては犬飼姉妹がキャッキャ仲良く街を走り回る横で、まゆちゃんが生真面目に新商品開発に悩み、小型犬力全開でどろんこテヘペロキメたこむぎを見て、自分たちの馴れ初めを思い出す感じ。
 今回は児童としてのこむぎより、常にフルスロットルで活きてる禽獣としてのこむぎが全面に出てて、『どんなこむぎもイイね……』としみじみ思わせてもらった。
 ヒトになったりイヌになったり、色んな姿で色んな元気を暴れさせるこむぎを見ていると、”変身”ヒロインの新しい可能性と出会わせてくれている感じがあって、わんぷりは良い挑戦しとるなぁ……という気分になる。
 今回はサイド犬飼は落ち着いた感じの見せ場だったけど、やっぱ悟くんが参謀としていい仕事してたり、こむぎといろはちゃんの普段の距離感が親身に感じられたり、力まないからこその良さが随所にあった。
 今後猫屋敷姉妹がプリキュアになって、より話しの深いところに顔出せるようになってくると、あえてサブに回ることで生まれるそういう良さも色々元気になってくれそうで、今後の展開に期待が持てる。

 

 んで話の主役を担当したユキ&まゆであるが……あまりに良すぎた。
 まだ人化の術を知らないユキは己を語る言葉を持たないので、今回のお話はまゆから見た運命を彼女が語る形で進むわけだが、しかしサブタイトルに『ユキの中の思い出』とあるように、あの日心を繋げ家族になった実感は、まゆちゃんの一方通行ではない。
 物言わぬ獣にも一人置き去りに傷つけられた警戒心を乗り越え、誰かのぬくもりに寄り添っていく心があり、自分の真の毛並みを取り戻し新たな名前を与えられる可能性を、自分と世界に許していける。
 まゆちゃんがどんだけユキにぞっこんか、納得の運命的な出会いを描くことで逆に、つれない態度もとるユキにとって猫屋敷まゆがどういう存在なのか、語られぬ心象を慮りながら想像できる余白が、ゆったりとした語り口に元気に弾んでいた。

 今より幼いまゆちゃんが話の真ん中に立つことで、小さな子どもなりに雪の中必死に生きてる生命を大事に思い、出会いを喜び別れを悲しむ心がそこに在るのだと、新たに目を開かされるような話にもなっていて、そういう部分も良かった。
 こむぎもいろはちゃんの手に抱かれて幸せを手に入れたわけで、どーもわんぷりアニマルには孤独と警戒が聖痕として刻まれてる感じあるなぁ……ニコガーデン由来で、人間界に迷い込んでた特別な動物とかなんだろうか?

 まゆちゃんの現状を思うと、母が手ずから編んでくれた帽子はとても大事な装身具であり防寒具だったはずで、そういうモノを手ずから譲り渡すほどにユキに惹かれていたのだと、感じ取れる描写も良かった。
 今でも授業忘れるほど夢中になってるアクセサリーは、あのころのまゆちゃんにとっても特別なもので、それを手渡しても惜しくないくらい、泥だらけで一人のユキを温めてあげたいと願ったのだ。
 こういう頑是ない、凄く真っ直ぐな仁愛を丁寧に描いているのは、わんぷりの凄く良いところだし強みだなと感じる。
 あんま張り詰めたところのない穏やかな語り口を選んでいるからこそ、ともすれば照れくさいほどに真っ直ぐな”いい話”を堂々語れるし、そういう直球勝負で向き合ったほうが、生き物というテーマは噛み砕いやすいと思うしね。

 安易に孤立動物とふれあいすぎないよう釘を差したり、全霊をかけて生命を背負う覚悟を問うたり、自分たちが扱っているテーマに対する視聴者のリテラシーを、描写を通じて上げようとする気概は健在だった。
 まーネタがネタだけに、そこら辺はどんだけ留意してもし足りない難しい要素だと思うのだが、現状明るく楽しく真剣に、命ある存在とどう付き合っていくかを、上手くメインストーリーに絡めて語れている感じはある。
 ここらへんに細かく気を配ってくれるのは、誰に向かって自作を語っているのか自覚的な感じがあって、見てる側としても安心できる。

 

 というわけで、ややゆったりとした語り口で少女と子猫の出会いを描く、とても穏やかなエピソードでした。
 こういう地味ながらよく染みるお話でもって、猫屋敷まゆの人生の真ん中に何があるのか描いてくれると、彼女のことをもっと好きになれて、大変ありがたい。
 好きなものに夢中になりすぎてしまうきらいもあるけど、弱きに見えて好きと大切を絶対に譲らない芯の強さがあるまゆちゃんの魅力、それを引き出せるユキの特別さが、良く描かれた回でした。
 大変良かったです。

 そして次回は、犬飼姉妹の楽しいハイキング。
 マジゆるいが、この焦らなさはめっちゃ好きだぜ……とても穏やかな気持ちだ。
 大好きな人と素敵な場所へ足を運び、スーパーハイテンションに駆け上がるこむぎの姿が見れそうで、次回もとっても楽しみです。