イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

終末トレインどこへいく?:第2話『推測、だろう、思われる』感想ツイートまとめ

 東吾野までの、無限を内包した8マイル。
 終末トレインどこへいく? 第2話を見る。

 電車と一緒に物語が動き出すまでを、かなりの圧縮率で見事に駆け抜けた第1話に対し、異様な風景と迫りくる危機を含みつつも、展開自体はやや落ち着いた感じ。
 移動する密室であり共同体でもある一両編成の中で、池袋を目指す四人組+一匹がどういうバランスなのかを、どっしり掘り下げていく回となった。
 ともすれば動きがない展開になってしまいそうな内省的なエピソードだが、車両が移動するグルーヴ感、だんだん見えてくる現状に揺れる内心、そこで暴かれていく願いや脆さが上手くお話を揺らして、退屈せずに見終わることが出来た。

 前半15分、シチュエーションコメディめいて絵代わりなく、電車が進んでいく。
 焦燥を反射して制御不能になったり、不安を拡げて霧の中に迷ったりするが、状況自体は車内から余り動かず、だからこそ今後物語を進んでいくクルーがどういう存在なのか、色々見えてきて良い。
 疾走する教室、モータライズされた社会、変化に投げ込まれた我が家。
 ガンダムにおけるホワイトベース、カバネリにおける列車、リヴァイアスにおける黒のリヴァイアス
 黄色い列車は不安定な少女たちを守る繭であり、そこを拠点に世界と内面に挑む足場であり、過酷な旅に投げ出された彼女たちのホームでもある。
 その手触りを、しっかり教える第二話だ。

 旅を始めた静留が運転席に留まる限り、客席で楽観的だったり悲観的だったり、夢見がちだったり現実的だったりする仲間とは違う位置に立つことになる。
 会話は出来ても顔は見えず、内心に踏み込ませず真実を語らない、運転手とお客さんの距離。
 巻き込まれたとは言え、常識をぶっ飛ばして色んなことが起こり得る7G世界を巡る冒険に付き合う仲間たちは、静留だけに舵取りを任せるわけには行かない。
 これは電車に乗る私たちの旅であり、他の誰でもない私を見つけるための旅でもあるのだ。
 だから興奮と不安、無謀と現実が入り混じった旅の中で、段々と運転席と客席の垣根が崩れて、クルー全員が旅に関わっていく。

 会話劇的側面が濃い今回、ギャルな怜実が楽観と夢を、本の虫な晶が悲観と現実を、それぞれ担当して現状を解体していく。
 特に準備もなく走り出し、なんとかなりそうでありながら悲惨に終わりそうでもある旅の中で、一行は個別の人間でありながら運命共同体として、融合した生命体のような在り方を含んでいる。
 終末トレインという個体が持つ、明るく無策な側面を怜実が、都合の悪い現実を突きつける晶が理性を、仲良くいがみあいながら担当することで、立体視されていく終わった世界の旅の現状。
 それは衝動に任せたスタートで、未来は何も分からない。
 …四人組の役割分担は、ちょっと”インサイド・ヘッド”っぽさもあるか。
 黄色い一両編成は青春のレールをひた走る、多面的で複雑な脳髄でもあるのだろう。

 ふわっふわ楽観的な思いつきしか言わない怜実と同じくらい、刺々しい指摘ばっかしてる晶も恐怖や現実に向き合う足腰は弱くて、終末トレインのクルーは軒並み子どもだ。
 そんな子たちが、何もかもが起こり得て何もかもが不確かな……青春や心象を世界レベルにまで拡大したような世界の旅の中で、自分を見つけ大人になっていくという、非常にスタンダードな”二年間の休暇”スタイルの話でもあるのだろう。

 

 これはマスコン握って、旅の行方を背負っているように思える静留も同じで、彼女は問われるまで自分の願い≒終末トレインの目指す終点を開示せず、一緒に乗ってくれた仲間を頼りにしない。
 独善的で、その癖非現実的な自我。
  ここに切り込んでいくのが一行で一番大人しく見える撫子ちゃんで、自分たちが何を捨てて旅立ち、今何を持っているのかは、彼女が全て確認し、問いかける。
 運転席と客席、静留の心と共同体の行く末を隔てる境界線を越えて、『お前は何をしたいのか』と問いかけ、共有可能な発声言語として静留の中から可視化する。
 大人が同乗してないこの終末トレインで、”先生”的な仕事を現状やっているのが彼女で、しかし彼女もまた旅の中何かを見つけるべき、青春の乗組員の一人だ。

 いがみあいつつ補い合う、怜実と晶の凸凹。
 遠く彼方の葉香を求めつつ、身近な撫子に助けられる静留の不均等な三角形。
 人間関係の基本構図が見えてきた。

 

 この2+3の構造がどう発展し、あるいは崩れるかが楽しみでもあるが、それを可能にする不思議な冒険は、非常に不思議なルールで包囲されている。
 高麗川は仙境のごとく美しい絶景へと変わり、水位は不確かなルールで激しく上下し、スワンボートに乗った仙人がワケのわからねぇ寝言をほざく。

 夢、あるいは精神世界のような在り方に変貌してしまった西武秩父線沿線は、旅立ちに浮かれるアップテンポから少し落ち着いて、マッタリお互いの内心を語らい、現実を把握してヤバさに気づいて霧に囲まれる、心理的変化とのシンクロを見せる。
 僕はこの話が、静留の内的世界でのみ展開していたと後で解っても、あまり驚かない。
 移動する密室の中で形成されていく、四人+一匹の共同体。
 そこで行き来する心のあり方が、黄色い電車の旅路には強く反映され、あるいは未だ自覚されざる何かが危機として押し寄せて、故郷への道を壊したりもする。

 西田亜沙子デザインのポップでかわいい外装の奥に、”Sonny Boy”めいた内的=外的大冒険を隠したお話は、少女たちの未熟なあり方を乗せて元気に走る。
 不思議で、不安に揺れて、しかしどこかへと走り抜けていきそうな力強さがある。
 黄色い電車がどういう道を、どう走るのかを一話ずっと描いている今回は、そういう手応えを視聴者に教えるテストケースでもあろう。

 

 レールを伝わってガンガン聞こえてくる金槌のモールスは、衝動しかなくパンツの換えも用意してこなかった静留には解読できない助言だ。
 足を水に濡らし、それを読み解き返答するのは賢さに強みがある晶の仕事であり、一度立ち止まることで終末トレインの旅は静留だけが行く先を決める孤独から、運命共同体が未来を探る冒険へと形を変えていく。
 運転席へと客が入り、マスコンの保持者が客席へと進み出して、主客の境がなくなっていく。
 それが落ちれば帰ってこれない水の上、切り裂くように敷かれたレールという境界線を進んでいくセッティングと重なっているのは、なかなかに面白い。
 心理と情勢は、夢に似た現実に投射される。

 静留が運命の少女への渇望を、あるいは言えなかった言葉への後悔を火種に始めた旅であるが、彼女一人で走りきれるほどヌルいものでもない。
 それぞれに性格も能力も異なるクルーの力を、凸凹噛み合わせてなんとかやっていくしか、終末トレインが走り切る未来はない。
 そのためには時に、内心を隠さず伝える必要もあって、何でも話し合える本当の友達に、もう一人の自分と思えるほどの誰かにお互いがならなければ、多分旅は終わらないのだろう。
 それは隣り合う誰かの中に、あるべき自分の姿を見つけていく道行きだ。
 非常に普遍的な、青春期における自己形成の物語の核を、この謎めいたトンチキアニメは持っている。

 そういうありきたりで恥ずかしく、とても大事な一歩を踏み出すための起爆剤として、時間も空間も常識も何もかもねじくれた、山奥のワンダーランドが必要なのだろう。
 見慣れた風景を絶景に変える奇想が元気で、かなりぶっ飛んだ絵が見れているのは、旅の物語としてとても大事で、ありがたいところだ。

 

 このファンタスティックな味わいがあればこそ、それを乗り越えて何かを見つけていくジュブナイルの説得力も生まれるし、実はかなり内省的なお話をワクワク派手目に楽しめもする。
 少女たちを翻弄しながら、勝手に動いているように思える狂った世界が、どんだけ彼女たちのあり方と連動し、関連するのか。

 そこはまだまだこっから先の物語で探るべきポイントなのだろうけど、今回どっしり駅と駅の間、終末トレインの仲間たちしかいない時間を描いてくれたことで、ちょっとは手応えが掴めた感じがある。
 列車が翻弄される世界のあり方も、列車の内側に形成される人間模様も、それらを飲み込んで変化していく少女の内面も、不可思議なルールで確かに繋がって、連動しながらうねっている。
 このグルーヴ感は心地良く、ポップで騒々しい物語の表面をつなぎとめるだけの重力を、作品に付与しているように感じた。
 第1話で感じていたよりも更に、クラい話だと思うなコレ…好きな感じの味付けだ。    

 世界の真実知ってそうな善治郎とは期限付き、金槌モールスの不自由でしか繋がれず、少女たちは不十分な備えを抱えて、ワケのわからない世界と自分たちで取っ組み合うしかない。
 それが静留一人の旅ではないと、変容する世界に挑むなかで見えてきて辿り着いた東吾野は、マタンゴ色のロクでもなさが既に匂う、なかなかヤバそうな場所だ。

 

 さて、次回どうなるか…大変楽しみではあるんだが、伝え聞く制作状況も相当にデンジャーであり、コッチでもハラハラしながら見る感じになりそう。
 かなり好きになれるアニメなので、ドタバタ騒ぎつつも無事走りきって欲しいものだ。
 来週も楽しみ!