イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

烏は主を選ばない:第1話『場違いな姫君』感想ツイートまとめ

 烏は主を選ばない 第1話を見る。
 原作は累計200万部を超える和風ファンタジー小説の金字塔、京極義昭監督とスタジオぴえろの手でアニメ化である。
 自分は全く情報が入ってない状態でアニメから飛び込んだが…好みの味付けだッ!

 

 山深き異郷に住まう烏達が織りなす、擬平安王朝絵巻的な婚礼政治の綾錦。
 牛車の代わりに大鴉が車を引いて上空を飛び交い、屋敷は山にへばりつくように異様な建築をされていて、華やかな貴族文化の奥でネットリと策謀が渦を巻いている。
 見たものがそのままの形であるか、どこか構えて疑いたくなるミステリの匂いと合わせて、かなりビリビリ響く作りである。
 過去自分が見た作品から似た味付けを引っ張ってくると、”薔薇王の葬列”あるいは”後宮の烏”になるか。

 名付、贈与、聞香。
 華やかな絹鎧と檜扇の剣を携え、教養と家格で殴りつけ合うスーパー貴族バトルが初手からブンブン元気で、パッと見の少女小説っぽさの奥にずいぶん生臭く粘っこいものを感じれて、こっからどう練り上げていくのか楽しみになった。
 どうやらあせび軸の婚礼物語と、雪哉軸の出仕物語が併走していく構造らしくて、なかなかややこしくも魅力的な、野心ある話になりそうだ。
 つーか登場人物マジ多くて、公式ページ睨みながら視聴したよ。群像劇としては、この”数”は弾薬だから良いことだ。

 

 自分用にまとめると、山中異界たる山内には五行に対応した各家が存在しており、人に化けれる三脚の烏が独自の文化を築いている。
 家格や人柄を蹴っ飛ばして次期皇位を約束されたうつけものに、どの家が次期正室を贈るかで政治闘争の行方は揺らぐわけで、あせび達姫君は皆、華やかな装束を纏った政治ゲームのコマである。
 将来をたのまれつつ弟に帝位を譲る形になった兄宮を、諦めきれない皇后が遠回りな嫌がらせビームをぶっ放す中で、女の戦いがビリビリ温度を上げていく…つう状況か。
 恋心と文化を武器にする少女サイドと、武芸と策謀をぶん回す少年サイドに分かれつつ、山内の複雑怪奇な政治模様を立体していく構図…なのかな?

 今回主役的描かれ方をしていたあせびは、典型的シンデレラ類型を背負ったフワフワ純白ヒロインであり、意地悪な継母やライバルにチクチクぶっ刺されつつ、健気にお姫様レース頑張るもん! みたいな気配。
 ただ四家+宗家が複雑に絡み合う政治劇が背後にある以上、素直にピュアガールが艱難辛苦を乗り越えて一発成り上がりじゃい! というスジにはなりそうもなく、そういうメタ方向から妙に警戒度が(楽しく)上がっている気配を感じる。
 北家のぼんくらである雪哉サイドの話しが深まっていくと、お后候補が足を乗っけてるゲーム盤がどんだけの蛇の巣か、分かっても来ると思うので、ここら辺はじわじわ付き合いたい。

 

 次代の皇后制定という、政治と策謀が渦を巻く、貴族社会のど真ん中を扱っている以上、何もかもがダイレクトには描かれず、御簾の奥でややこしい当てこすりと遅効性の毒が錯綜し、幾重にも思惑が絡まることだろう。
 このややこしさは願ったり叶ったりではあるので、自分としても頑張って噛み砕いて飲み干していくつもりだが、心地よい難しさが一話の段階から既にある。

 パッと見山出しの芋娘を教養で殴り倒し、お后レースで一歩先んじよう…みたいな構図だが、その奥にどういう事情と思惑があるのか、華やかな装束の奥はなかなかに見通せない。
 現状、浜木綿様のサッパリとした気質を信じたくなるが…全然解らねぇッ!
 そこはまー、困惑や眩暈も全部ひっくるめて楽しむものであろうし、思う存分複雑怪奇な山中異界に迷おうかと思う。

 初手からわかりにくい当てこすりでプライド削り合ってる、ストレス強めの展開であるが、死人が出ないまま転がっていくのか、バリバリ死んだり死ぬよりヒドい目にあうのか、作品の無惨レベルを計測している最中って感じではあるな。
 ここら辺は色々ダイレクトな政治活動が描かれそうな、雪哉サイドの話が転がっていった時により解りやすくなると思うので、二つの軸を絡めて立てる話運びがどうなっていくのか、お手前拝見という感じだ。
 既に絹の衣の奥からモリモリの最悪感が滲んでいるので、見せ方巧いなとは思う。

 山内の闇がどんだけ深いか、そこに住まう魑魅魍魎が何考えてんのか。
 胃が痛くなる楽しいミステリを摂取しつつ、王朝文化の香りを山盛り味わって、時代ものとしての馥郁を堪能したい気持ちもたっぷりある。
 かなり雰囲気のある第1話だったので、ここら辺の欲求もいい具合に叶えてくれそうである。
 ノンキな話なら綾錦や芳しき練香なんかに素直にキャッキャしても良いんだが、絹で包めばこそ隠したもののドス黒さが目立つスパイスとして、華やかな文物を対置してある感じも受けるので、こういう所も素直に体重預けさせてくれなくて親切だ。
 雪哉をボコったイヤ貴族の振る舞いを見るだに、八咫烏内差別もかなりヒドそうだしなぁ…。

 

 というわけで、底しれぬ政治ミステリとしても、王朝文化をファンタジックに描く歴史モノとしても、かなり好みの味わいと歯ごたえで仕上げてくれる、とても良い第1話でした。

 剣を取らぬ戦争としてお后選びが描かれる裏側に、実際に剣を取って血に塗れるかもしれない少年の出仕物語が配置されているのは、山内の在り方が立体的に見えそうで楽しみだ。
 教養と嘲りで殴り合う世界の華やかな地獄はいい塩梅に描かれたので、男の子サイドの大惨事がどんなもんか、次回ぼんくらとうつけのボーイ・ミーツ・ボーイに期待大である。
 どんどんロクでもなくな~れ!!(ドス黒い期待を込めた、最悪の魔法)