イマワノキワ

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花野井くんと恋の病:第2話『初めての彼氏』感想ツイートまとめ

 花野井くんと恋の病 第2話を見る。

 お試しお付き合いを始めた生真面目ガールと純愛ボーイ、”終わり”が近づく中でお互いを知ったりすれ違ったり…というお話。
 純粋すぎて微笑ましい二人の気質が良く分かる話運びで、『このお話ってこういう感じなのね…』という自分的な納得がしっかり育まれ、とてもありがたい”第2話”だった。

 やっぱこういう、自分なりの手応えみたいのを感じれる話数が早い段階で来てくれると、物語と付き合いやすくて大変やりやすい。
 過剰に理性的で正しい女の子と、過剰に情念的で過つ男の子の、適正バランスを探り探り間柄が深まっていく、コミュニケーションとコンセンサスのお話。
 それが現状、自分がこの作品に見ている物語の全体像である。

 

 極めて清く正しく…高校生にしては幼くも見えるほたるちゃんが恋を知ろうと、カッチリ手順建てたアプローチを手渡してくる中で、花野井くんは自分を突き動かす過剰なパッションを適切に抑え、重すぎず愛しすぎずな普通の間合いを探ろうとする。
 それは与えすぎて衝突ばかりしてきた少年が、ギブ&テイクのお互い様な関係性を学んでいく、健全で健常な成長の物語だ。
 しかし花野井くんだけが矯正されるべき歪みを抱えているわけではなく、ほたるちゃんも正しすぎてどっかおかしい。
 このズレが、チャーミングな太眉可愛げになっている所が強いわな。

 理屈や正しさじゃ割り切れない、不定形の情動。
 これに突き動かされるから人生揺るがすほどの速度が出る”恋”ってものを、現状ほたるちゃんは頭で考えて言葉で噛み砕こうとしている。
 花野井くんはそんな恋人(お試し)のスタイルを尊重しつつ、ドロドロネバネバした動物的な感情を原動力に、突き進みたい気持ちを抑え込んでいる。
 過剰にロゴス主義な少女と、過剰にパトス主義な少年の凸凹コミュニケーション物語としてお話を見ると、筆記言語でお互いをわかり合おうとする『してほしいことノート』が顔を出すのも納得で、なかなか面白かった。
 それは理屈上は正しいけども、正しすぎて形になりすぎて、恋にはちょっと不似合いだ。

 世に中には正しくもなく、言葉で切り取れもしない”何か”が確かにあって、ほたるちゃんが現状親しみがなかろうが、それだけしか感じられず突っ走るしかない動物もいる。
 どころか、瞳の奥に炎を宿した愛の獣となって、ツラがいい彼氏候補として隣に立ってる。

 自分が暗い森に迷い込んだ赤ずきんちゃんだと気づかぬまま、無自覚アプローチをガンガン繰り出してくるほたるちゃんに『ヤバいって!!』とハラハラしてたら、遂に導火線に火が付いた花野井くんが獣化カマして次回に続いた。
 本物のLove Beastだったらあっという間にバクバクイッてたと思うので、花野井くんは十分以上に紳士的だし優しい子だなぁ…。

 実際に行動に出て相手を求めるのが花野井くんなので、彼が過剰にアクセル踏んだ感じにもなってるけども、自分には分からない情動優先主義に無防備に踏み込んで、ヤバい行動してるのはほたるちゃんも同じで。
 時に挑発的で、加害的にすらなってしまうお互いの在り方を、どうこすり合わせて解り合っていけばいいのかは、まだ高校生でしかない彼らにとって、なかなか難しい課題だ。

 

 というかそういう事をモラトリアムの檻の中、縛られ守られながら学んでいくのが思春期なのだろうから、クリスマスまでの時限恋愛は正しく、いい課外授業なのだろう。
 ほたるちゃんは『解らない』という自分の現状を、ちょっと特権的にブン回し過ぎてる。
 標準よりちょっと愛が多すぎる花野井くんにとって、もっと思い切り、もっと過剰に叩きつけたいものがいっぱいあるはずなのに、ニコニコ笑いながらほたるちゃんの正しさと無理解を受け入れて、理性的な彼氏を頑張っている。

 それは見た目よりずっとアンバランスで、アンフェアな関係だ。
 長続きしないだろうし、実りも少ないからどっかで、受け入れてもらう側と我慢する側を入れ替え、相手の世界を覗き込み真実理解しようと努力する必要も出てくる。
 お試しで終わらない、正しくも言葉にできるわけでもない気持ちが胸の中確かにあるなら、なおさらだ。

 ほたるちゃんは賢く優しい人なので、花野井くんを追い込んだのが誰か……眼の前のイケメンが突然獣になった衝撃を受け止めたうえで、自分で分かるとは思う。
 というか分かってくれないと、花野井くんの努力と釣り合いが取れない。
 マジ頑張ってると思うよぉ花野井くん…あんな太眉天使(声帯:花澤香菜)がプラプラプラプラ、無防備に揺れてるなか紳士ヅラするのは大変だよぉ…。

 

 とか書いたけども、ほたるちゃんが花野井くんが欲しかった正しさをちゃんと手渡している様子は、どっちが早く待ってるかレースでちゃんと描かれてもいて。
 ここまでの恋で、花野井くんは自分が待ってるのが当たり前、与えて当たり前、搾取されて当たり前の、アンフェアな常識を身に着けてしまっている。
 でも誰かと善く付き合うのなら、そういう一方通行はやっぱ良くないもので、ほたるちゃんは花野井くんのパトスは実感できないながら、それが溢れた彼の行動を鏡合わせに真似してみて、寒空の中震えながら与えるものの心を理解しようとする。
 そうして正しく寄り添って、フェアな関係性を気づこうとする良さと強さは、ほたるちゃんが過剰に正しいからこそ生まれるものだろう。
 正反対に見えて、眼の前の相手を尊重し大事にしようとする気持ちは同じだから、時にゴツゴツぶつかり合いながらも解り合うことは、そこまで難しくない…と思う。
 ここら辺の空気の良さ、上手くいきそうな期待感は、お話とキャラが持ってる強みかな~と感じる。

 世間的にどうしてるとか、そうするのが普通とか、そういう恋のレトリックを横に置いて。
 お互いの歪さを噛み合わせたうえで、たった一つの冴えたやり方を分かり会えない同士、なんとか見つけていくのが恋含めた人付き合いの根本ならば、正しすぎる少女と愛が強すぎる少年は、お互いをよく見る必要がある。

 そういう相互観察、相互尊重への道に、可愛らしく好ましい子ども達がおっかなびっくり、時に笑える不器用さで進んでいく様子は、とても良い。
 未熟な雛が自分たちらしい飛び方を、二人三脚で頑張って探している手触りがあるのは、真心があって好きだ。
 色んな意味で可愛い話なのは、俺の好みですげーイイね。

 

 というわけで、ほたるちゃんが体現する正しいロゴスが世界を覆い尽くすと思いきや、花野井くんが抑え込んでいたパッションが抑えきれず炸裂する回でした。
 花野井くんの情欲がメラメラ燃えている様子を書くことで、そんなに強く求められるほたるちゃんがどんだけ魅力的なのか、逆位相から描き直す感じもあって。
 この男側から伸ばす手の力強さは、ロマンスをロマンスたらしめる重要要素だと思うので、バキバキに青筋立ってて良かった。
 欲望の赴くまま噛みつき抱き潰して、相手も自分も傷つけるルートに突っ走らない花野井くんは、本当にいい子だなぁ……。

 突きつけられた思いは、クリスマスにどう咲くか。
 次回も楽しみ!