イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ダンジョン飯:第15話『ドライアド/コカトリス』感想

 ラスボスに目をつけられたり、花粉症になったり、石化して漬物石してみたり。
 色々あったけど、僕たち冒険者は元気です!! という、ダンジョン飯アニメ第15話である。

 妹復活の目的を果たして大団円……と思いきや急展開で大変なことになったり、別パーティーに視点が移ったり、色々起こってた最近のダンジョン飯
 今回は慣れ親しんだドタバタ冒険喜劇が久々に戻ってきて、美味そうな魔物メシもたっぷり食べて、『やっぱコイツラの大騒ぎ、良いわぁ~~』と思える回だった。
 このしみじみした手触りも全滅寸前の冷たいザラつきや、魔物より人間を見ているカブルー側を描いたからこそだと思うので、展開やキャラを拡げる利点を改めて感じられた。
 傍から見たらヤバくて問題だらけかもしれないが、ライオス達の食ったり戦ったりはやっぱり楽しそうで、そういう連中がどんどん距離を近くしながら迷宮の深奥へ突き進む歩みには、魅力的な吸引力がある。
 面白いから先が見たくなり、先を見るほどに楽しくなってくる心地よいフィードバックが、外部からの刺激を受けてより加速してきた感覚は、1クールじっくりトンチキ冒険者たちを見てきたからでもあろう。

 そんな連中が今回挑むのは、ドライアドにコカトリス
 花粉症に悩まされ、ツッコミついでに石化して大変に愉快ではあるが、戦い自体は命がけの激しさがしっかりあった。
 アニメならではの迫力で、魔物グルメが安楽なものではないと伝えてくれることで、負かした相手を食材に命を繋ぐ営みが、生活や人生と密着している様子も間近に迫ってくる。
 人間の形をしてるけど対話は見込めない、ドライアドとのバステ塗れ戦闘とか、ライオスが前線に立てない分闘士としてのセンシの頼もしさが際立つコカトリス戦とか、バトルのバリエーションが豊かなのは、このお話の地味に良いところだ。

 迷宮の主との激戦を経て、飢え死にしかけているパーティを包む闇は暗く、寒々しい感じがする。
 冒頭の色合いが一行の現状を上手く伝えて、『食わせねば……若いものには食わせねば!』とわななくセンシの焦燥、戦いの果てに作った独特の料理の温かみが良く分かる。
 マルシルの魔力切れを一種の”空腹”として生かすことで、それを満たし新たな可能性……ライオスのノーム魔法習得を開いていく起爆剤として、魔物メシが機能している様子も良く分かった。
 こういう欠乏と充足のバランスが上手いからこそ、食べても食べても腹が減り、だからこそ毎日の食事を美味しくいただける人間の面白さが、お話から逃げないのだと思う。

 

 激戦を経て実力不足を思い知った一行は、情緒的な面でも能力的な面でもお互いの特質を混ぜ合わらせ、絆を深めていく。
 マルシルの特権だったはずの魔法をライオスは学び、魔力酔いに苦しみながら実地でし石化解除魔法を習得して、窮地を脱していく。
 あるいはコカトリスと戦う時、センシはライオス並の魔物知識を発揮して攻略の糸口を掴み、マルシルは彼女なりの迫力の出し方でかつてバジリスクを気圧した、トンチキ戦士の戦い方を真似る。
 花粉症でドワーフの眼が効かなくなったら、ハーフフットの優れた感覚を借りて戦い、パーティーはお互いの欠落を埋める一つの有機体として、だんだん機能しつつある。

 この喜ばしき混交は能力面だけでなく、情緒においても進んでいる。
 先々週顕になったチルチャックの情とか、なりふり構わず人頭(に見えるもの)にかぶりつくマルシルとか、狂乱の魔術師との激戦を経て、ちょっとよそよそしいところがあったパーティーの垣根が崩れ、お互いをお互いの中に招き入れてきている感じだ。
 シュローやナマリと混じり合いきれなかったからこそ、真っ当ではない手段でファリンを復活させる旅に出た彼らが、同じ釜のメシをかき込み、生きたり死んだりする中で距離を縮めていくドラマ、その結果仲間の”らしさ”を自分に引き寄せていく様子が、やっぱりこの話の見どころだなと思う。
 それはしみじみ心を打つ感動だけでなく、どーしょもない笑いとシニカルなツッコミにも表れていて、パーティーの紅一点が漬物石やら邪教の偶像やら、ロクでもない扱いされてるのも、深まった親しさ故だろう。
 回復魔法レッスンでドキドキとか、ラブでコメった香りのある描写とかもあったのに、結局すンゴイ顔で石になってんだから、マルシル……つくづく綺麗なままでは追われない女よ。(好き)

 

 向き合い混ざり合うのが味方との感情だけではなく、敵たるモンスターにも一種の敬意が向けられている。
 ドライアドの雌花はまだ未熟な仲間を育むためにライオス達と戦うが、これは若いものに過保護なセンシの様子と、奇妙な共鳴を果たす。
 人間とモンスター、安易な共存を阻む壁は確かにあるのだけども、響き合うものも確かにあって、奴らだって生きようとして必死にもがき、食って生殖して死んでいく。
 そこに経緯を持っているからライオスは魔物に興味を持って知識を蓄え、それがモンスター殺しの大きな武器となり、糧を得る助けになっているのだから、迷宮の輪廻はなかなかに不思議だ。

 ヒューマノイド同士だからって全部が解るわけでもなく、過保護ドワーフは眼の前のハーフフットが酸いも甘いも噛み合わけたオッサンだと知らぬまま、今更な性教育を真面目に始める。
 あるいはチルチャックが当て擦るのも当然の、激ヤバ黒魔術復活がどういう理屈で動いているのか、バチバチしつつも言葉で伝えていく。
 そういうすれ違いと触れ合いを笑える一幕と積み重ねて、知らない同士が解り合って、混ざり合っていける愉しさが、確かにこの迷宮には息づいている。
 人間が生きる場所、変わっていける現場として”ダンジョン”を描いていることが、冷たいハック&スラッシュの外側にお話を連れて行っているのだと、改めて感じるお話だった。
 待ってましたのドタバタ冒険コメディの合間に、マルシルの魔法と迷宮に関する講義だったり、センシが過剰に食と若者に思い入れてる様子だったり、今後に活きそうなクスグリが好きなく埋め込まれているのも、巧くて良いわな。

 

 自在に姿を変える迷宮に翻弄されつつ、しぶとく食って満たされて、まだまだ俺達負けてないぜ!
 好ましい逞しさで主役健在をアピールしてくれた物語は、こっからどう転がっていくのか。
 次回の冒険も、とっても楽しみです!