イマワノキワ

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烏は主を選ばない:第2話『ぼんくら次男』感想ツイートまとめ

 烏は主を選ばない 第2話を見る。

 華やかな姫君たちの前哨戦が収まり、凶暴さを秘めたボンクラが運命に押し流されて主の元へとたどり着くまでを描くお話である。
 雪哉は敏い耳と苛烈な精神をヘラヘラ笑いの奥に隠し、クソ貴族をハメたり実力で解らせたり出来る存在だが、その奥には郷土への愛、家族への思いが確かにある。
 そういう柔らかなものを真っ直ぐ突き出していては、どうにも戦えない不定形の泥に、山内が満ちている現実を少年は既に知っていて、ボンクラ顔は魂を殺されないための鎧でもあろうか。
 しかし権力闘争のド真ん中、若宮側仕えに流されてなお、凡愚の仮面を貼り付け続けていられるのか。
 実態が見えぬまま噂だけが先行する若宮が、うつけと噂されるのと響き合って、なかなかワクワクする出だしとなった。

 身分差別と口さがない噂が蔓延る山内は、人間どもの浮世に同じくまったくロクでもない場所であり、清い志も燃え盛る愛もどこか、ねじ曲がっていってしまいそうな腐臭が華やぎに漂う。
 窓が小さく灯りが蝋燭程度なので、夜闇が濃い様子が丁寧に積み重ねられ、時代味を感じると同時に雪哉が飛び込み姫君たちが飲まれていく政治の闇を、ヴィジュアルで感じることが出来た。
 この濃い闇を切り裂く真の金鳥として、若宮が最後の最後光り輝いて立ち現れるのは、雪哉の運命が動き出した手応えを感じれて良かった。

 北家内部にすら、本家と郷士、宮烏と山烏の区別と差別があり、軋みながら蠢く身分システムは雪哉が本当に守りたい小さな幸せを、簡単に踏みにじっていく。
 家が栄えるための生贄として、姫君たちが若宮に差し出された様子も描かれ、誰もが顔の見えない大きな機構に食い殺されかけている状況が、ヒタヒタ静かに息苦しい。

 なればこそ、そういう重苦しさを払ってくれそうな革命児への期待は、現代的価値観を背負う視聴者…その窓となる主人公・雪哉には濃い。
 若宮と出会ったときの眩しい光には、そういう期待感が強く反射しているように思う。
 さて、うつけの社会認識やいかに…というところか。

 

 若宮は個人の色恋を越えて家の趨勢を担う、己の婚礼にあまり乗り気ではない様子だ。
 『テメーらキャピキャピやっとる余裕ねぇからな…どんな手段使っても、お家のために主上を射止めろよ!』と厳命されている、絹鎧の恋戦。
 その重たさを重々承知の上で、ハーレムに足を運ばず側仕えを皆追い出し、山内の中枢に相応しい振る舞いを全くしない若宮は、確かにうつけと呼ばれる男であろう。

 その裏に、一体何があるのか…。
 ここら辺は、雪哉が主を分かっていくドラマの中でより身近に、見ている側に迫ってくる部分であろう。
 明らか山内の軋み凄いので、そこに問題意識を持っての振る舞いだとありがたい感じねー。
 姫君たちのせめぎあいは、奪い取るべき玉がプレイグラウンドに降りてこないので小康状態。
 四神に対応したカラーリングでもって、着てる衣から室内装飾まで解りやすく塗り、陣営の色合いが可視化されているのは面白い演出だなー、と思った。

 東西南北、青朱白玄。
 土地と家に紐づいた華やかな鎖から、逃れ得る人はこの山内には誰もおらず、そこに立っているだけで否応なく色が乗る。
 一見華やかで美しいカラーリングにはそういう、息苦しい強要が静かな毒として埋め込まれているようで、良い感じにおぞましい中世の匂いがプンと漂う。
 それは人間性の墓場の匂いであり、システム無しで成立し得ない社会の死臭だ。

雪哉を若宮の側へ送り込んだ、兄君の強力な横車が一体、何を考えてのことなのかも気になる。
 クソ神託の横槍がなければ、序列も実力も天皇に相応しい存在だった彼は権力闘争に揉まれた挙げ句、僧衣を纏って身を引いた。
 未だ影響も人望も残っている様子が描かれたが、ボンクラの腹の底をどこまで見抜いて、楔ともなり得る存在を弟へ送っていったのか…読めないゆえに気になる。

 ボンクラ雪哉が本心では郷里と家族を思っているように、うつけ若宮も兄や山内に人間らしい情があって、なにか考えて非常識な態度を取っているのか、否か。
 雪哉の若宮参代は、そこら辺を探っていく旅ともなりそうだ。

 

 しっかし話数を重ねる事に、クソみてーな差別意識がブンブンブン回ってる山内の終わりっぷりが目に付き、『ナイス中世!』って感じでビリビリくる。
 馬の代わりにデケー烏が車を引いているけども、このお話の人間…に見えるモノは、人化の術を収めた化烏なわけで、あの連中も人化権を剥奪された最下層民とか言われても、全く驚かない。

 『やっぱ所詮は天皇の先達、霊鳥とか霊長とかほざいても救いようのない修羅餓鬼の類よ!』て感じだけど、長束が僧形であるってことは仏教一応伝来してんだよな…。
 この雰囲気だと教門の存在感はデカいのが普通だと思うので、そこが全然顔出さないのはあえてかなー、と思ってる。

 

 というわけで、差別と噂が空気に交じる山内に殺されぬよう、ボンクラを演じることで己を守っている青年のお話でした。
 屈折しているようでいて真っ直ぐで、優秀だけど世界を相手取るほどには強くなくて。
 雪哉の描かれ方はこのイカれた舞台にふさわしい、奇妙な爽やかさがあるとても良いものでした。

 話が転がるほどに『山内…ロクでもない!』という気持ちが強くもなっていきますが、そんな畜生末世に燦然と輝く日御子との出会いが、物語をどう照らしていくのか。
 あるいは山中異界の濃い闇は、”人間らしさ”を食いつぶすほどに濃いのか。
 心地よい王朝絵巻の匂いを堪能しつつ、次回も楽しみッ!