イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ガールズバンドクライ:第2話『夜行性の生き物3匹』感想ツイートまとめ

 青春に悩む赤ちゃん人間ども…軒並みロックをやれッ!
 ガールズバンドクライ 第2話を見る。

 状況の勢いのまんま、なんか良い感じの所までブチ上がった第1話の後始末、アドレナリンが引いた後のクラさで主人公の陰影を描く、とても良いエピソードだった。
 前回『中指立てればロックってなぁ…』とブツブツ言ったが、もうロックンロールをやる以外道がない仁菜の赤ちゃん人間っぷりが存分に発揮され、この作品なりのロックが高らかに鳴り響いて、大変良かった。
 ヨーグルトの乳房で仁菜を存分にバブバブさせる、桃香さんの抱擁力もズギュンとくる仕上がりで、三人目の女も顔見せこっから本番だ! ロックンロールが鳴り止まない!

 

 前回川崎駅周辺のモダンでアーバンな空気をキラキラ切り取ったカメラは、実際に生活を営んでいく矢向の地味~な空気に切り替わり、反抗したいくせに道が見えない仁菜のどん詰まりが、クラめに展開していく。
 上京直後のうわっついた空気が冷めて、アパートに家具なし飯なしヨーグルトのみの空虚に直面し、孤独の中でさぁどうするか。
 否応なく、仁菜は何者でもなく何者かになりたい自分と直面していく。

 ここで桃香さんが隣に立ってるのが効いてきて、虚しく暗いからこそハタチのお姉さんを太陽と求めてしまう、赤子のような甘え方がズブズブ女たちを繋いでいくわけよォ!
 お酒を飲めたり、軽トラ自分で運転したり。
 仁菜から見た桃香さんは自分が首までハマっている思春期の泥沼から、先に一歩抜け出して自在に生きている羨ましい存在だ。
 彼女が夢破れ故郷に帰る寸前だった、自分が戦いを挑まれてる顔の見えない的に負けた敗北者だったという事実を忘れて、仁菜は憧れの瞳で桃香さんを見上げ、しかし肥大化した自意識が邪魔してすがりつけない。

 赤子というには素直ではなく、大人というには弱すぎる。
 屈折を極めためんどくせー女は、負けてない自分を証明するために大検資格を得ようとし、それ以外にはなんにもない。
 何かあったはずなのに、家や学校が奪っていってしまった。
 なら奪い返すしかねぇだろ! って話なんだが…
 見知らぬ都会に一人ぼっち、背伸びしたってライトも取り替えられないちびっ子では、巨大な怪物との戦い方はわからないのだ。

 

 『そういう人間こそロックンロールをやれッ!』と、お話のテーマにバッチリハマった導きを、失ってしまった熱量を仁菜に重ねながら手渡す桃香さんの頼もしさ、正しさが、ズバズバ刺さる回であった。
 便座覗き込み健康法で二日酔いを追い出す、カッコ悪い大人から始まって、バブバブ言ってる後輩の面倒を見、思い出した夢に向かって立ち止まらずに動き直し、自分が見つけた才能にラブコールを送る、独立独歩の頼もしさまでじっくりギアを上げる。
 桃香さんの描き方がかなり計画的で良かった。

 思いの外クラい話であることが、陰気な影と瞳に滲む涙のクローズアップで理解ってくる話数なのだが、その影を振り払うように折り返しで仁菜が多摩川に叫ぶアカペラの強さが映える。
 やっぱ楽曲が強いのはこのお話の武器で、『このだけの才能、歌わせないのは損失だ…』と、無条件に納得させられてしまう喉があるのは素晴らしい。

 仁菜は賢くも優しくも強くもないクソガキであり、逃げ込んだ便所で桃香さんが諭してくれた、公平で客観的な視線ってやつを全く持てない。
 極めて主観的で身勝手で、ワケのわからねぇ傷だらけでしか生きられない、面倒くさくも嘘のない、赤ん坊の生き様を身にまとっている。
 それははた迷惑ながら面白く、ロックンロールというアダプターを通してようやく、社会と接合していける仁菜らしさだ。

 中指そのまんまおっ立てたら、どんどん放送できなくなっていくヤバさにクッションかけるように、少女たちは世界への怒りを小指に宿して、二人だけの暗号を贈り合う。
 『理解ってねぇかもしれねーけどさぁ…仁菜ちゃんそれプロポーズだからね!?』と思わず突っ込む、無自覚の感情のデカさが”ももにな”にあるのも、GirlsがBandでCryする話には大事なことだ。
 キャッチーなヤバさをチャーミングに折り曲げて、自分たちだけの表現を掴み取ってきたのは、凄く良かったな、小指のファックサイン。

 

 思いの外暗い話だってのが良く分かった二話だったが、この質量と暴れっぷりを受け取った後だと、カトゥーンめいたコミカルな表現が日常でも元気なの、得心が行く。
 3Dアニメ制作会社としては後発になる、東映が独自の武器としてそういう表現を選んだ…つう部分も結構あると思うけど、コロコロ表情が変わり、漫符的表現がややクドい”陽”のシーンのわかり易さが、シニカルで湿った感情領域と心地良い対比を生んでいる。

 ああやって楽しく騒いでいたいけど、そうも行かない思いが胸の中に渦巻いてて、んじゃあどうやってスカッと呪いを晴らせば良いんだよ!
 ロックンロールをやれ!
 そういう問答が、選び取った画風から滲む。
 桃香さんに超甘えながら、ワーワーガーガー騒いでいる仁菜はとってもチャーミングで、泣くより笑い喚くより歌っていて欲しいと、素直に思える主人公だ。
 そんな子に桃香さんが優しいのが、見ていて嬉しいポイントでもあり、『そらーハタチにズブズブになっていくわ…』と、関係性構築に納得できる描写でもある。

 

 一人はいじめでドロップアウト、一人は成人済み、もうひとりは芸能学校。
 フツーの学校教育から軒並みはみ出して、タイトルから『スクール』を追い出している独自性が、ロックンロールをやるしかないはみ出しものセッティングと良い感じに噛み合ってる気配もある。
 まーこのスタッフで学校舞台だと、モロにアレだしな…。

 仁菜が赤ちゃん人間であるほど、ワケのわからねぇ衝動をロックへと導き、泣きじゃくる顔から涙を拭いてヨーグルト飲ましてくれる桃香さんの人間力が際立つわけだが、彼女もたった二十歳の、挫折を知った傷だらけの少女だ。
 叫ぶしかないモヤモヤはまだ彼女の中に残っていて、でももう無くなったと思いこんでいて、だから仁菜に構う大事にする。
 ここら辺の歪さを、俯瞰で見る余裕が仁菜に欠片もないのが、今後爆裂しそうな不発弾を僕らに教えていて、大変ワクワクする。
 『ママだって一人のロックンローラーだからッ!』と桃香さんが叫び、預けていた体重がすっぽ抜けた瞬間の仁菜の顔…見たいッ! そそられたぞストライダムッ!

 孤独な都会でたった一人、自分の傷を撫でてくれる桃香さんは独立した一人の人間であり、自分のバンドを再起動させる行動には手早く踏み込む。
 そうして選ばれた三匹目の夜行性、ぱっつんヘアーの安和すばるの素顔は、まだまだ見えない。
 現状ライトもくれるしいい人っぽいが、笑顔の奥から冷静に状況を見据えるクールさも感じられるし、『オメーの腹の奥、とっととかき鳴らせよ!』感が凄い。
 この話で暴れる以上、どっかにロクでもねぇ熱量があるとは思うので、そういうもんが爆裂して仁菜とワーワーガーガーやる瞬間、そうなっても大丈夫な信頼感がメンバーと構築された後が、なかなか楽しみだ。
 ゼッテーヤバいよなー…(期待)

 

 というわけで、大変クラくて元気な回でした。
 第1話では掘りきれなった仁菜の幼さ弱さが、川崎の暗くて湿っぽい部分に上手く反射して描かれ、ロックンロールを主題にしたお話である必然が、良く伝わったと思います。
 あの暴れっぷりは、そらーロックをやるしかない。

 多摩川が目の前に拓けた瞬間、部屋で泣きじゃくってたら桃香さんが来た時。
 闇から光へと世界が塗り替わる瞬間もエモーショナルに演出されてて、そういう強さをだだ漏れにするのではなく、ダイナシなしょーもなさに輝かせるメリハリも力強かった。
 綺麗な涙もきたねー鼻水も、ダダ漏れで突っ走るロックンロール街道。
 どこに往くか、次回も楽しみッ!!