イマワノキワ

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烏は主を選ばない:第7話『転落』感想ツイートまとめ

 烏は主を選ばない 第7話を見る。

 蛇のハラワタに潜り込んだ若宮は思いの外平穏に窮地を乗り越え、その危惧通り桜花宮には危うい影が伸び始める。
 遂に分かりやすい犠牲者が姫サイドにも出て、こっからどんな地獄絵図が暴かれるのか、正直大変ワクワクしている。
 こういうどす黒い内幕を隠蔽して、事実が暴露されていくショックを高めるためにも、ぷわぷわしてるあせびを姫サイドの主人公(つうか視点担当人物)にしてたわけだなぁ…。
 まーあせびも見た目通りのゆるふわちゃんじゃない可能性が結構あり、そうすると白珠の嫌悪感も言いがかりではなくなってくるわけで、虚実がクルクル入れ替わる酩酊感が今後楽しみ。

 

 もっと場が荒れるかと思いきや、御簾を降ろした密室でも礼節は保たれ、若宮の南家乱入は大した波乱なく終わった。
 政治的情勢が動いたわけではないけど、長束が弟にしっかり意見できる、現実と理想をしっかり見据えれる人だってのと、浜木綿が助っ人外国人みたいな立場で桜花宮に送り込まえていて、こんぐらいのチートは日常茶飯事だということが良く解った。
 金烏の妻に選ばれたものの家には栄達が約束され、選ばれぬ家は冷や飯を食う。
 自由意志の結果結ばれた個人的な恋が、イエの趨勢に致命的に関わるのであれば、そこはもはや人間らしい感情を大事に出来る愛の揺りかごではなく、冷たい政治のチェスボードだ。

 勝たなきゃいけない勝負のために、勝てる手を全部ねじ込むのは指し手として当然なわけで、早桃の死もそういう死物狂いの延長線上にあるのだろう。
 華やかな婚姻儀礼すら血生臭く汚す、四家相克の欲望と権勢を見るに、その生臭い力みを軽視して何事かなそうとしている若宮は、確かに危なっぽい。
 長束は非常に怪しく、本音を語っていないように演出され、そう受け取れるように状況も組み立てられているけど、弟であり主上でもある存在への期待と信頼、それ故の危惧はあんま嘘がないんじゃないかな、と思う。
 欲望と見栄が複雑に絡み合う、鴉共の政治情勢への分析も含めて。
 …ホント、この人が金烏になったほうが争いは少なかったな。

 

 長束が重視している”山内の安寧”は、つまり四家の勢力均衡と実利分配を前提とした、それ以外の全てを蔑ろにして成立する搾取だ。
 おそらく意識して貴族以外の生活を描いてないこのお話、イエの外側から山内の将来を左右しうるポジションへ上がるのがどんだけ大変かもまた見えないが、こんだけガッチリ四家で政治ゲームを回していると、乱入者は殺して追い出されているんだろうなぁ…という推測は立つ。
 4つの家で勝ったの負けたの、ワーワー騒げるのはそれ以外のプレイヤーを場に入れないからこそ成り立つゲームで、閉じた遊技場で”山内”を弄び続けていれば、そらー怨念も腐敗も山ほど貯まるわなぁ…って感じ。

 イエと己の延長線上に、それ以外の人たちが多数暮らす山内を封鎖しているのなら、大義として語られる”山内の安寧”もまた四家による政治ゲーム構造の維持、己が所属するイエの繁栄(≒他家の没落)とイコールになっていく。
 この狭苦しい帰属意識は、どっか垂氷と家族以外に興味がないとうそぶく雪哉にも重なって、青雲の志のただ中にいるように思える青年を、ちょっと危うい存在にしている。
 極論、四家の連中は”山内”が滅ぼうが自分の家…そこに所属する己が地位と繁栄を維持できるなら、なんもかんもどうでもいいエゴイストの集団だと思う。
 そして若宮は、そんな閉じた腐臭が大嫌いな潔癖性…なんじゃなかろうか。

 

 腐って閉じた世間だろうが、致命的な何かが起きない限りは維持されてしまうのもまた世の常であり、そういうラッキーが今後若宮と山内に待っているのか、はたまた”真の金烏”を求める時代が試練を叩きつけてくるのかは、この段階だと全然解んない(というか、アニメの範囲だと多分そこまでデカいの触んない)
 しかし若宮の不安定な権力基盤と、嫁取り儀礼のどす黒い危うさにクローズアップした話運びの奥から、狭苦しいイエの粒試合がそのまま”山内”の命運を決めてしまう怖さは、じっとり匂っているように思う。
 現代人目線だとマジロクでもねぇが、まー洋の東西問わずこんな感じだよなー中世…。

 カビと血しぶきと我欲の入り混じった、ドブの臭いを嫌う立場としては、狭い現状に視界を縛られてなさそうな連中に好感を抱くので、武辺者に見えてクレバーな路近は好きだ。
 ”敵”の間者である雪哉を高く勝ってスカウトし、人間をコマと見てしまう(と、周囲に思わせてしまう)若宮の危うさも親切に指摘している。
 現状長束派は主役サイドの仇と思わせる描き方なんだけど、立場の違いが隔てているだけで、見えているものが同じ連中は結構いるんじゃないかな…と思わされる描写だ。
 冷たい印象を与え確かにそう振る舞う若宮が、派閥の壁を超えて同志を見つけれる器かどうかは、また別の話になるけども。

 

 さて、お姫様サイド。
 2つの柱を並立させるアニメの語り口は、だんだん鞍部を表に出してきた桜花宮の本性が、若宮が危惧している通りの修羅場だという『答え合わせ』を、先んじて済ませている。
 今までの華やぎが嘘で、こっから表に立ってくる地獄が本当。
 虚実の分水嶺はかなり分かりやすい形で示され、視聴者が答えに迷わないって意味では親切で、何が本当だったのかフラフラ悩む一人称の贅沢は、この形式だと薄くなる。
 サスペンス/ミステリとしてのインパクトを弱めることで、より咀嚼しやすい物語形態にアニメとして編纂した…ってところか。
 これはこれで独自の味が出てて、アニメにわかな立場としては、かなり好きだよ

 容色に優れた子女を養子にして勝ちに行くのも当たり前な、なりふり構わぬ嫁取りバトルに補助線引かれたことで、白珠の策士っぷりにも、追い込まれた哀れみが感じられた。
 真緒の薄が対立構造を越えて、そこに目を向けている様子、柔らかな真心の持ち主という描写もそこにはあって、だからこそこの人非人共の箱庭では生きにくかろう…という感想も湧く。
 見た目と中身が全然違うことで、ミステリとサスペンスを駆動させているお話だと思うので、作られた第一印象を横に置いて引いた視線から全体を見て、今後の展開を読みながら眼の前の事象を受け取る姿勢が、知らぬ内に染み付いてきてるな…物語受容としては、あんま良くない。

 意地悪で狂ったお姫様たちに、さんざんひどい目に合わされてる悲劇のヒロイン…てのが、今のあせびの描かれ方なわけだが、そういう建付けを暴力的に蹴り破り、衝撃の真実を叩きつけてきそうな作風だけに、そこに体重預けるのもなぁ…って気持ちではある。
 いやこれで蓋を開けたら、マジでピュアピュアな天使だったら土下座して謝るわけだが、この頭良くて性格悪い話が甘くてふわふわしてるだけの綿菓子娘を、お話の真ん中に据え付けるかねぇ…。
 早桃の死が起爆剤となり、ここら辺の構造も内幕が見えてくると、メタ視点でお話読んでるある種の後ろめたさから開放されて、俺が楽になるので早く話進め! って感じではある。

 

 お姫様サイドだけで話が進行してたら、早桃の死って今まで支配的だった夢色トーンをずたずたにひっちゃぶく、効果的な”裏切り”だったんだと思う。
 でも男衆サイドが並走するアニメだと、『あー…来るべきものが当然来たね…』って感じではあり、ここら辺の機能はと味わいは相当、原作から変わってんだろうなぁと、未読の立場から勝手に推察したりもした。
 俺は匂わされていたヤバさが遂に死体に結実して、ある種のスカッと感と納得が大変気持ちいい。
 もともと最悪にロクでもない世界なんだから、変な手加減なしに行くところまで行って欲しいという、暗い願いは話数ごと、どんどん加速している。

 同時にそういうドブの中でも、かすかな人間の真心が燃えていると切なくていい感じなわけだが、雪哉-若宮ラインにはそういう手応えを、静かに感じている。
 イエを背負った権勢合戦という舞台建てが、お姫様たちの心の交流を阻んでもいるわけだが、真緒の薄は相当”人間”なんじゃねーかなという、期待込みの現状観測である。
 これはあせびに体重預けすぎない、メタな読み方の裏返しだけども。

 

 薄桃色の恋が犠牲の血に汚れ、蛇の巣はその本性を顕にしていく。
 桜色の牢獄に見え隠れする、山内の歪みと人の業…そして微かな温もり。
 さてはて一体どうなるか、次回も楽しみです。
 よーっし! ドンドンろくでもなくなるぞー!