イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ガールズバンドクライ:第8話『もしも君が泣くならば 』感想ツイートまとめ

 消えない過去に小指を立てて、県境を超える時産声が轟く。
 ガールズバンドクライ 第8話を見る。

 前回衝撃のドロップアウト宣言を叩きつけ、仁菜が桃香さんをバチ切れさせたところからスタートし、怒りと情熱を着火剤にブチ上がったテンションが、泣けない女を泣かすまでの物語である。
 ここまでアクの強い主人公を肯定し、笑いながらツッコミ抱きしめてくれたたかだか二十歳の小娘が、弱くて情けない己を見せて、失ったものと失ってなお消えてくれないものに泣きじゃくるお話である。
 甘えっぱなしだった憧れの人の涙を、軽トラで夜を切り裂きながら受け止められるところまで、井芹仁菜が育ったことを示す回である。

 大変このアニメらしい、暴力的に優しく生きることしか出来ない連中がそのまんま突っ走る…ための姿勢を、ぶつかり合いながら固めていく話であり、ようやく五人のメンバーと新たな名前を得た”トゲアリトゲナシ”が、プロとしてやっていく覚悟を固めるエピソードでもあった。
 終わらなかった何かを終えて、終わってはいけない何かのために泣きながら走り出す。
 大概の人間が苦笑いしながら飲み込む現実の正しさを、思い知りながら自分だって間違っちゃいないと、ロックンロールをかき鳴らすために必要な、譲れぬ矜持と戦友との縁。
 そういうモンを、赤ん坊だった仁菜が桃香さんに差し出す返す回で、大変良かった。

 

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第8話より引用

というわけで、今日も今日とてバンドの空気が最悪です!
 一瞬だけ抜けるような青い春を回想して、『今回は桃香さんの心臓を刺す話だぞ!』というサインを出しつつ、そんな青い夢が砕け散った後の最悪激突が、諏訪のロック爆弾当然の帰結として描かれる。
 甘っちょろい若さに任せて、友達の退路を断った上にアイドル路線に耐えられず逃げ出した桃香さんとしては、仁菜の無鉄砲は一番見たくないものを突きつける照魔鏡…そらー、胸倉掴んで黙らせたくもなる。
 同時にこの距離まで剥き出しにされる特別さを、井芹仁菜は河原木桃香に有している…ということでもある。

 ”絶対武道館!”という夢が、せっかくもう一度夢を預けていいかなと思えた新バンドが即座に空中分解しそうな不安と不満に、プルプル水面揺らす智ちゃんと重なっているのは、可哀想でもあり、健気でもあり。
 譲れず触れれたくないなにかに、思いっきり身体をぶつけてくるからイタくてウゼークソガキの、燃え盛る真っ直ぐな思い。
 それに賭けてみたくなる気持ちを、現実解ってないバカとクールに嗤う自分を殴りたくて、多分桃香さんは仁菜の胸倉掴んでいる。
 そしてその拳が振り下ろされてしまえば、仁菜は桃香さんもくだらねー大人なのだと諦めて、火を消してくだらねー大人の仲間に入れるだろう。

 

 ここで自分を川崎に押し流した痛みの源流と、それを救ってくれた憧れを同一視することは、仁菜にとって最悪の決着であり、でもそれでしか桃香さんの気持ちが収まらないなら、殴られてもいいかなと思う気持ちが確かにあったように感じる。
 メチャクチャ矛盾しているし、ここで軽蔑のトリガーになってたはずの暴力を、後に井芹仁菜は余裕で桃香さんにぶち込みもするわけだが、しかしそういう綺麗な理屈ではもう収まらないところまで、川崎駅前で出逢ってしまった二人の心は燃え、近づき、触れ合ってしまっている。
 理屈でも感情でもない、名前のつかない何かが自分たちを押し流してると仁菜の瞳から至近距離で感じて、桃香さんは拳を収める

 仁菜は無自覚に大変ズルい奴で、自分の人生を救ってしまった桃香さんが夢を諦め怒りを捨てた物わかりの良い人間に堕ちるのを許さないし、手前勝手なその憧れを桃香さんが受け止めてくれる事実を、無鉄砲の足場に使っている。
 実際ここまで、仁菜のめちゃくちゃを全部受け止め抱きしめてくれた女が、自分を殴って捨てるわけない。
 そういう期待が、捨鉢に見える行動の裏に確かに匂って…しかしその無条件の信頼は本来、学校や親に預けられ健全に仁菜を育てるはずだったものの、壊れ果てた代用品という感じもある。
 あるべき正しさは横に置いて、というか殴りつけて、否応なくここまで来てしまった二人の現状は、燃え盛る超暴力の色だ。

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第8話より引用

 さてその上で、衝突する二人の間に立つのはやはり安和すばるである。
 掴みかかる桃香の腕をせき止め、最悪の空気でたどり着いた川崎で途中下車、桃香のプライベートスペースへと入り込んで、客観的な事実と自分の気持ちを冷静に伝える。
 仁菜に大人びた余裕ズラ引っ剥がされ、泣きじゃくる赤ん坊に戻りつつある桃香さんに足りてない現状認識を、今回もすばるちゃんはバカ相手に輸血する。
 このクールな温かさが今、”トゲアリトゲナシ”のリーダーには必要なのだと見切る判断力と、近い場所で伝えるために立ち止まる優しさ。
 ……つくづく、頼りになる女(ひと)だ。

 ダイダス抜けるまでの青春敗戦で、過剰に自分の可能性を卑下する傾向を身に着けてしまった桃香さんは、仁菜の根拠を投げ捨てた未来への大暴走と逆方向に、現実を見れていない部分がある。
 フェスへの参加要請やSNSの数字を携帯に映し出し、やれるかもしれないしやれないかもしれない、自分たちの現状をちゃんと見せて桃香さんに足りないものを手渡すすばるは、かつて桃香さんが仁菜にやってたことを…あるいはすばる自身が桃香さんにしてもらったことを、しっかり返す。
 年下にフォローされて頭を冷やすカッコ悪さは、しかしオトナな偶像を頑張ってきた桃香さんが素のダサさを仲間に見せる、大事な神殺しの儀式であろう。

 明るくて物わかりの良い領域から、暗くて本音に近い場所へ。
 これまでも幾度か描かれてきた、キッチンを舞台とした心理劇が、白日の中にとどまる役と闇の深い場所へ踏み込む役を取り替えながら再演されるのも、なかなか面白い。
 『いく』側である仁菜・智・ルパと『いかない』側である桃香さんの間、中途半端な日和見に立ってる自分すら素直にさらけ出して、すばるちゃんは桃香さんに事実を示し、再考を促す。
 『いく』のか、『いかない』のか。
 『いきたい』のか、『いきたくない』のか。
 行動と心情、夢と現実がぶつかり合う狭間で自分が見えていない桃香さんの目の前に、鏡を突き出し考えさせる大事な仕事だ。
 偉いなぁ…。

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第8話より引用

 あまりに潔がよすぎる絶縁状をレターパックで送りつけ、仁菜は自分の足で吉野家に立つ自由、立たなければいけない不自由へと踏み出す。
 ワーワー喚き立てながらもへその緒が切れていなかった赤ん坊が、スジを通した形ではあるが…それにしたって退路絶ち過ぎだろッ!
 そういう人間だからこそロックンロールが必要だということが、マスクで表情を隠し”同僚”になったルパから伝えられもする。
 嘲笑うものへの怒り。
 踏みつけにされてる側に、寛容と譲歩を強制してくる何かへの反発。
 それを諦めきれない女たちが、酸素のように、ロックンロールを必死で吸う。

 顔をマスクで隠しても、今まで微笑みの奥なかなか見えなかった地金が良く分かるルパの一言と、仁菜の記憶の中再生される訳知り顔のクズどもの嘲笑は、鮮烈な対比を為している。
 前者に共感し後者に中指立てた仁菜は、自分を殴ってきたクズ、それと和解して巧くやれと罵るゴミを、拳の代わりにロックンロールで殴った。
 気に入らないもの、自分を負け犬にしてくるもの全部に噛みつくための牙は、河原木桃香の色をしていて、そんな憧れが自分と一緒に戦ってくれないと、道を外れていこうとしてる。
 もっともっと、優しさより怒りより懐かしさよりもっと本当の、桃香さんの顔の見える場所まで近づかなければ、物語は始まらない。

 自分の脳髄に突き刺さった、目の見えない(見たくない)せせら笑いと同じ表情が、物分かりよく”現実”を飲み干そうとする桃香さんに重なって見えるのが、仁菜には本当に嫌なんだと思う。
 それが憧れた人の本質だと思いたくないから無遠慮に魂をぶつけるし、そうかも知れないと怯えながら、答えが出る時を待っている。
 解りたいのに解ってくれなくて、解ってくれなくてもわかってほしい、恋情にも似た潜熱が静かに、真夜中の吉野家に溜まっていく。
 後に炸裂する純情の前駆が、なかなか物事が進展しない状況にしっかり宿っているのは、とても良い。
 このアニメらしい、一見不格好にすら思える巧さの発露だ。

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第8話より引用

 さんざん突っつかれてきた、ロックを始めた理由、降りた理由、降りてなお自分の手を取って始め直した理由、それでも諦めようとする理由を、桃香さんはダイダスのライブに軽トラで乗り付けて、至近距離で仁菜に見せる。
 その全てが3Dモデルではない思い出の色で、純粋でいられた制服の自分を愛撫するように、桃香さんは湿った掌を仁菜に伸ばす。

 かつて確かにそこにあって、自分が貫けず選べず壊してしまって、それでもなお愛おしく遠く見つめる、輝いていたはずの自分。
 オトナだからこそのベタついた感情が、仁菜と桃香を繋いでいるのだと、おとがいに添えられた掌が語 取り返せない過去へと伸びる視線、その代用品として今目の前にいる女を求める手つきが、あまりに”百合”でびっくらこいたけども。
 これを暴く場所としてダイダスのライブを選んだのも、それを曝け出す相手として仁菜を認めたのも、桃香さんなりの覚悟と甘えが濃厚に匂って、待ちに待ったものが来た興奮が確かにあった。

 自分の一番柔らかい場所を伝えれるのはここにしかなく、過去の自分に似た少女からの癒やしへ、母の乳房を求める赤子のように切実に手を伸ばす己を、桃香さんは受け入れ受け止めて貰いたかったのだと思う。
 その弱さが、未来のなさが、過去をしゃぶることでしか己を認められないみっともなさが、飾りのない今の自分なのだと、枷をはめて思い込んでしまっているからこそ。
 しょーもないかつての自分を、間違った道に進ませない姉御肌を演じることで、桃香さんが自分を好きになれていた部分は大きかったのだと思う。

 井芹仁菜という特大級のロック爆弾の、面倒を見て存在を肯定する行為は、”子”である仁菜にとってだけでなく”親”である桃香さんにとっても、傷ついた自分を取り戻すリハビリだった。
 そのベクトルはしかし未来に繋がる今、目の前にいる他人ではなく、過去の引力を引きちぎれない河原木桃香自身に結びついている。
 では桃香さんの行い全てが、自己憐憫に満ちたエゴなのか?

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第8話より引用

 仁菜は激しく掌を叩きつけることで、桃香さんの狭い視界を開こうとする。
 『それをやったらクズと同じ』と、談合坂PA桃香さんに通告していた暴力行為を、ここで仁菜が選ぶのは熱いな、と思う。
 勿論衝動だけで背骨が埋まってるロック野郎の行動、九割り感情から出た行為なのだが、同時に仁菜は獣のように駆け抜ける自分がどこに立っているのか、思わず冷静に見つめてしまう少女でもある。
 だからこそ、目の前の自分に輝く思い出を勝手に重ねる桃香さんの湿った掌に、微かな心地よさを感じつつも跳ね除けて、”アタシの気持ち”を叩きつける。

 そのベトついた質感が井芹仁菜をナメているから出た手であるし、そういう他人を大事にできない嘲りを、河原木桃香にだけは差し出してほしくないから伸びた掌である。
 家も学校も自分を守ってくれない暗い地獄で、それでも自分はここにいるのだと吠える時に選んだ光が。
 復讐の仕方も解らぬまま川崎に流れてきて、運命に結び付けられ出会って、散々暴れて踏み込む自分を、それでも微笑んで抱きしめてくれた人が。
 憧れを見上げる距離でも、間近に体温を感じる間合いでも、誰よりも大好きだと思える人が、自分を見下げ果てて過去に溺れようとしているのが。
 どうしても我慢ならないから、仁菜は殴っておいて泣く。

 勝手な女であり、ヤバい女であり、真っ直ぐな女であり、強くて弱い女だ。
 ロックンロールをやるしかない、ロックンロール物語の主役になるしかない削り出され方をしている、僕らが今まで見て好きになった井芹仁菜が、この拳と涙には強く滲んでいる。
 そんな剥き出しの井芹仁菜は、他でもない河原木桃香の優しさと愛が、”空の箱”に込めたロックンロールが、確かに作り上げた刃だ。
 これに引き裂かれないほどに鈍感なのか、お前の心は死んでしまっているのか。
 大人びた余裕と過去に溺れる惰弱を引っ剥がして、桃香さんの内蔵が溢れていく。
 そのための刃として、仁菜はロックで研がれたのだ。
 研いだのは、勿論河原木桃香である。

 

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第8話より引用

 『ビンタのお礼はトラックだッ!』という、あまりに世紀末な川崎暴力レート交換がわだかまりを強引に溶かしつつ、桃香さんは激情を軽トラの運転席に隠して、かつての仲間に宣戦布告する。
 仁菜が堂々顔を晒し、事情もわからねぇいい人達にワーワーがなり立てる声に勇気を貰って、ようやく小指を立てれる弱さは、桃香さんの”今”を素直にスケッチしている。
 必死に悪罵を取り繕う現場を、幾度も背中を向けて逃げ出した仲間に見られないように、ロックを続けていく決意を悪しざまに伝える。
 それを見るダイダスさんたちは…『しょうがないなぁ……』って笑っていた…。

 制服の”ももかん”を知ってるダイダスさんたちが、自分たちを音楽地獄に引きずり込んで置き去りにしたクソアマをまだまだ好きで、雨の中必死に追いすがって言葉を伝えてくれたのは、マジで良かった。
 ここら辺、仁菜という爆弾を魅力的にこちらに手渡すために、桃香さんとすばるちゃん二人がかかりでヨチヨチしてた序盤と、ちと似た匂いを感じる。
 ここでダイダスさんが、あって当然の納得できなさをロック野郎と同程度の温度で叩きつけたら、マジで話が制御不能になっていたと思う。
 なのでここはダイダスさんたちは大人びた人格者(≒仁菜たちが価値を認めつつたどり着けない向こう岸)として、東京に立ってもらう。

 県境に掛かる橋を超えて東京へ進み出し、現実を飲み干して『いく』事を選んだかつての仲間の姿を見届ける。
 抱きしめることで抱きしめてもらおうとした過去の似姿に、思い切りビンタ貰って軽トラに逃げ込み、顔を見られないまま小指突きつけて、川越えて川崎に戻っていく。
 大人になろうとして大人になれない、河原木桃香の迷いと現在地がどのようなものであるのか、川崎という街が持つ土の匂いをしっかり活かしながら描き切る筆が、心地よいエピソードでもある。
 小綺麗で正しい世界の中心に、暴力的に乗り付けることが出来るけど、猥雑で間違った活力が落ち着くことを拒む辺境。
 そこが、桃香さんと仁菜の足場だ。

 

 ファックサインを小指に変えた事が、かつての仲間への桃香さんの強がりと弱さと愛を嘘なく伝える暗号になってて、大変良かった。
 それは”指切りげんまん”の仕草であって、桃香さんの『てめーらぶっ殺す!』は『愛してる。ステージで会おう』なのだが、ロックを貫くことを選んだ(仁菜に選ばされた/仁菜に選ばせた)桃香さんは、そういう言語で叫ぶことしかもう出来ない。
 でも”ももかん”をまだ好きな仲間たちは、無茶苦茶なパワーで自分たちを引っ張って勝手に逃げた、愛すべきロクデナシが本当は何を言いたいのか、良く解ってくれる。
 ダイダスさんはマジ立派だよ…その偉さを、桃香さんが心底解っているのも偉い。

 かつての仲間が選んだ正しさを、解っているから負けた自分、正しくなれなかった自分は舞台裏に引っ込んで、間違っていたと苦笑い一つ、生きていくのが分相応。
 そういう諦めを、かつて確かに燃えていた桃香の歌に救われてしまった仁菜はどうしても飲み込めなくて、真正面からぶつかって壊す。
 世界に小指を立てて、いつか薄ら笑いのカスを殴り飛ばした先、本当の仲間と指切りげんまん出来る日まで、一緒に走るんだと。
 そのメチャクチャな衝動は、お前が火をつけたんだから信じて一緒に突っ走れと。
 桃香さんが本当に欲しくて、でも手が届かなかった答えをビンタと接触事故(寸前)で叩きつける。

 この仁菜の体当たりは、仁菜の面倒見て立派なロック爆弾に育てた、大人びたフリを頑張っていた今の桃香さんと、かつて退路を断って無謀な戦いに挑んで、世界に響く歌を歌い上げた過去の桃香さん、両方からの一撃でもある。
 『自分はこんなモノ』と孤独に思い込む、とても淋しい成熟だけが河原木桃香じゃないと仁菜が告げるのは、寄る辺ないまま川崎を彷徨っていた仁菜の手を取って、あやして生きる糧を手渡してくれた、桃香さんの行いの結晶なのだ。
 そんな仁菜の爆発力は、桃香自身が切り捨てようとした己の過去が生んでいて、それは全然終わってない。
 死んでいないと告げる仁菜の声は、かつての自分の声でもあるのだ。

 

 

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第8話より引用

 人は生まれる時、泣き叫びながら生まれてくる。
 軽トラの運転席、もう誰にも涙を見られない場所で仁菜は”空の箱”のボリュームを上げて、桃香さんの産声が自分に届かないフリをする。
 その大人びた仕草は、幾度も言っているように桃香さんが、泣きじゃくる赤ん坊でしかなかった仁菜を見捨てず、ロックンロールの乳房で慈しんだからこそ育まれた。
 ロックンロールだけが生み出す、愛とも熱とも痛みとも名前がつかない、燃え盛って転がり続ける泣きじゃくる激情が、テールライトに宿って川崎へと戻っていく。
 ここから、全てが始まるのだ。

 あんだけ自分が何に怒っているのか、その形が見えなかった仁菜が『告白ですよ』と、あんまりに真実を射抜いた言葉でこの物語を要約したこと。
 その一撃が、ずっと泣けぬまま何かを諦めようとしていた桃香さんが、ようやく泣きじゃくれる未来を撃ち抜いたこと。
 大変良かったです。
 ワーワー喚くクソガキのまんま、賢く退路を残して生きていかないバカのまんま、仁菜が他人の柔らかな部分に手を触れられる優しさにたどり着けたのが、俺はとても嬉しかった。
 そういう人であろうとして、暴力と嘲笑に裏切られて、怒れる自分を必死に積み上げてきた少女が、ようやく”じぶんらしさ”に軽トラで戻った感じがあった。

 過去への帰還は桃香さんも同じで、ダイダスさんに小指のラブレターを投げつけ、仁菜にべったり投射していたノスタルジーを跳ね除けられて、弱さも妄執も顕にしたことで、桃香さんはようやく、初期衝動を泣きじゃくる。
 物わかりの良い言い訳全部投げ捨てて、本気で本音で生きていくのは、あまりにも辛いと思い知らされてなお、そうやっていくしかない自分に戻れたのは、やっぱ仁菜がいたからだ。
 新たなバンドの仲間になった、ロックンロールをどうしても必要とするバカに支えられ、自分もバカなんだと思い知って、五人の”トゲアリトゲナシ”はロックンロールのてっぺんを目指す。
 バカな自分たちが、間違っていないと示すために。

 

 という感じの、幾度目かのガルクラ最終回でした。
 通帳送り返し桃香さんの涙を受け止め、仁菜の赤ん坊時代が終わったという意味でも、20の小娘が人生に傷つけられてなおロックするしかない自分を取り戻したという意味でも、大変良かったです。
 このハチャメチャな嘘のなさを、エンタメとして届けるためには”ガールズバンド”しかねぇよなぁ…と、改めて題材選択の的確さに唸りつつ、似た者同士のロックンロールがどう鳴り響いていくのか…今後のガルクラが大変楽しみです。
 残り四話、1クールアニメとしての収まりをどう作るかは難しいだろうけど…このアニメなら、絶対やってくれますよ。