イマワノキワ

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ヴァンパイア男子寮:第8話『美少年、運命の出会いをする。』感想ツイートまとめ

 ヴァンパイア男子寮 第8話を見る。

 蓮への女子バレ、ルカへの予言と邂逅、加速していくすれ違いと、燃料山盛り積み込む錯綜のエピソード。
 フツーに思いを確かめていくお話は、家出からの帰還でだいたい”答え”見えちゃった感じがあるので、ヴァンパイア界のしきたりだの予言だの、男を装う自分と女である自分の桎梏だの、真実知って求める男と知らず求める男の対峙だの、色々追加のネタを仕込んできた。
 気持ち一つがまとまっていまえば、収まる所に収まるしか無いのがラブコメではあって、そこを迂回しつつ加速するための方策を、全方向にぶっ放しまくる力強い野放図…俺嫌いじゃないぜ…。

 

 美人ちゃんのジェンダーアイデンティティがどうなっているのか、微細で難しい要素を棚上げしつつ話進めてきたこのお話だが、ここに来て誤解の種として活用しつつ、掘り下げていく感じがある。
 古臭いベタ足に新しい装いを与えて、新鮮な火力を出す調理法が今回も冴えていて、”マイ・フェア・レディ”と”シンデレラ”の合わさった美少女変身が、『家が用意した許嫁』つう要素をヴァンパイア風味に変奏した宿命と絡んで、なかなかに面白い。
 変身した美人ちゃんのお値段を可視化するべく、モブが最悪の治安で最悪の評価投げつけてくるの、急に街の治安が最悪になってて最高だったな…こんなカスシティだったかー物語の舞台ッ!?

 美人ちゃんにとって男の装いは成り行きの外装でしかなく、受け入れてもらいたい自己像は常にロングヘアーのフリフリである。
 蓮くんはそんな彼女の在り方を、本命に先んじて早速肯定し、美人ちゃんがずっと欲しかったドレスを用意してくれる。
 王子様候補が魔法使いでもある、ねじれた構図が”シンデレラ”の現代的変奏としてなかなか興味深いが、かくして奇妙な三角関係は男/女の境目を飛び越えながら、色々複雑にねじれていく。
 物分かり良さげな蓮くんが、ダンピールの宿命でもって獣にもシフトできるのが、なかなか上手い組み立てであるな。

 

 『男だろうが女だろうが、お前個人が欲しい』つうのは、ピュア・ロマンスのド真ん中をエロティックな装いでお出しするこの作品では大事な文句だ。
 『そこら辺を煮込めるくらい、男が男を愛するということを深く掘ってねぇだろッ!』つうツッコミはまぁあるが、その境界線を飛び越えてる異装主体の自己認識が、ガッチガチに乙女なんだから、ある程度ポーズになるのはしょーがないじゃん。
 つーか退廃的な印象があるヴァンパイアの規範からして、『運命の相手』じゃなく『運命の女』だからな…。
 偉業の種族が固定化された異性愛を、全く疑問なくルール化してるの、ポップな耽美の表層を巧く活用している、このお話らしくて好きだ。

 蓮くんが整えてくれたラッピングは、あくまで本命との恋を彩る花束でしかなく、予言されてたとおりにルカは水辺で赤髪の運命と出会い、心臓を高鳴らせる。
 先週の花火に引き続き、恋の予感が高まった瞬間にプッシャー吹き上がる噴水のベタ足っぷりに、このお話でしか彫らない気持ちよさがあって良かった。
 拾った愛玩男児相手には気のおけない態度を、心揺らす運命の女には紳士的でピュアな顔を、それぞれ見せるルカくんの可愛さも、新展開にいい感じに輝いている。
 吸血王子やるにはあまりに善良だが、まー小森もそこを見込んで後継者に指名している感じだしな。
 試練も適度に与えるし、始祖さまは子孫を大事にする良い親だ。

 

 名前も告げず運命的に出会ってしまったことで、美人ちゃんは女の装いをした自分自身に嫉妬するという、なんともねじれた構造に迷い込んだ。
 ルカも男な美人ちゃんへの想いと、家の宿命を問題なく突破できる想い人との出会いに、引き裂かれるようなポジションに立っている。
 この二項対立はそれぞれ『美人は女で、オメーが出会ったのはコイツ本人』という真実を、恐れず告げればすぐさま解決する。
 互いが求めているものを俯瞰で見た時の近さと、キャラの主観で見た時の遠さ、ねじれ具合が全然異なっているのが、独特の味で面白い。
 ハタから見りゃーあっという間に解決しそうなのに、当人だと解決困難な無理難題に思える。

 『恋って…人の心って、まぁそういうもんでしょう』という納得もありつつ、なかなか面白くねじれてきてていい感じだ。
 ここに蓮パパの思惑が絡んでまーた厄介なことになりそうだが、試練を超えてこそ真実の愛は形になるもの! …という、極めてクラシックな価値観軸に寄り添って話が編まれてるのに、インモラルで新しい装いをしっかり身にまとっているのも、また面白い。
 話の主軸を担当するキャラ、そこに盛り込まれる価値観が、実は極めて善良でねじれていないの、話を必要以上に難しくさせないための作劇的工夫でもあるんだろうなぁ。

 コントロール可能な困難だけを、まな板の上に乗っけて料理するスタンス。
 厄介ごとのゴムを破断しない程度にこんがらがらせて、物語が飛んでいくだけのエネルギーをしっかり確保する手腕。
 そんな作風が新たに舞台に送り込んできた、すれ違いと衝突の種をどう花開かせて、どう楽しく描いてくるかが、楽しみになる話数でした。
 マジ厄介ごとの種がてんこ盛り、一話にワッと押し寄せてきた時特有の『オイオイどうなっちまうんだよ~』感が濃い目にあって、残り一ヶ月の終盤戦に、いい感じの期待が持ててます。
 アニメがどういうフィナーレにたどり着くのか、楽しく見届けられそうな予感が濃い目にあって、次回も大変楽しみです。
 ネタが大筋どう動くか読みやすい平易と、具体的な描写がどうぶっ飛ぶか読みきれない壊れ方が共存しているのが、古さと新しさを同居させるコツなのかもなー…。