イマワノキワ

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終末トレインどこへいく?:第9話『思ってたよりつまんないみたいな』感想ツイートまとめ

 終末トレインどこへいく? 第9話を見る。

 偽物のアリスが踊る狂気の国を抜けて、描かれた旅の畢竟。
 池袋の魔女王・葉香の実情はぼんやりとした狂気に包まれた、なんだか寂しい世界の果てだった。
 時にワイワイ言い争いしながらも、旅の中お互いの本当をぶつけ合って進んできた静留たちの”運動”と、クズ大人の責任回避の現状維持につきあわされて、膨張する混濁に捕らわれている葉香の”静止”の対比が、スワン仙人との奇妙に爽やかな再会に鮮やかな回といえる。
 イカれて普通じゃないけども、楽しく気の良い連中が旅する中には沢山いて、しかし池袋に閉じ込められた葉香はそれと出会えない。

 あるいは(おそらく”獣→人”という、吾野の”人→獣”ルールを逆転させた過程を経ている)葉香の護衛となることで意思と知恵を育てているポチが、同じ場所に立ち続ける彼女唯一の友だちなのかもしれないが、それにしたってなんとも寂しい。
 池袋の”学校”に椅子が”五個”あるのが、かなり堪えられなかったな…。

 ポン太郎が調子良く捻じ曲げる、池袋の不在なる権力の中枢は制御不能で、葉香を中心に世界は狂い拡大し、拡大しきって消滅する運命も見えてきた。
 タイトルにある”終末”が、7G事件による日常の崩壊だけではなく、それでもなお続いている世界すらも飲み込むビッグリップなのは、なるほど面白いダブルミーニングだ。

 探究心に突き動かされて、世界の果てを見るべく突き進むスワン仙人の叡智は、現状維持がそのまま世界の消滅に繋がっている事実をしっかり見据えている。
 ペラペラよく回る舌で世間を騙し、検証もないまま7G駆動させて終わらせちゃったポン太郎は、とにかく息だけしてる今を永遠に引き伸ばすべく、葉香を苦しそうな曖昧に押し込め、それに池袋と世界を巻き込んでいる。

 

 狂った世界の真ん中に立つ魔女王の佞臣として、ポン太郎はこの世の春を謳歌している…感じもなく、とにかくご機嫌取りと疑心暗鬼に終始して、自分も他人も幸せにはしていない感じだ。
 事件の黒幕が一番あさましく不幸せに見えるのは、良い寓話だなぁ…。
 主役が狂いつつもワクワクする旅=運動に勤しむなら、そのアンチテーゼたる魔王は面白くもない停滞にしがみついて、世界を巻き添えに現状維持を望む。
 友だちともう一度会うためだけに突き進んできた旅は、狂ってしまった世界を救う大きな救済を背負いつつ、あくまで個人的な青春の決着のために加速していくのだ。

 ポン太郎の現状維持の犠牲になる形で、至極真っ当な世界の是正を求めた抵抗者はアツアツの茶碗蒸しに変えられ、貪られて死ぬ。
 葉香は自由意志を失ったまま殺人者にされてしまって、コメディテイストで薄皮一つ覆ってはいるものの、極めて悲惨な状態だ。
 狂った旅の明確なターニングポイントとして描かれた、練馬の国のアリスの狂騒。
 それを経たから暴かれた物語の核心は、思っていたよりカオスでも狂ってもいなくて、ひどく人間的な寂しさと浅ましさが漂う、湿り気の多い場所だった。
 これを活力と運動に満ちた黄色いロコモーティブが、跳ね飛ばし取り戻し正していけるか。
 静留たちの旅の画角が、結構変わる回だった。

 

 アリス文脈を引き継いで、スワン仙人と晶ちゃんの叡智は”赤の女王仮説”を作中に投げ込む。
 『生物種の生存競争の中で、現在の地位を保つためには普段の進化を果たし、変化し続けなければいけない』とするルールが、生物環だけではなく世界全体に拡大…あるいは思春期の少女に凝集している、狂って寓話的な世界。
 立ち止まったままで維持できるものなど何もなく、全てが変わりゆく世界でなお、永遠に変わらないものをつかみ取りたいのならば、前に進んでいくしか無い。
 その心理は欠けてしまった友情を取り戻すために、後先考えず電車を動かした静留と、そんな彼女のためにそこに乗り込んだ友だちの歩みに、既に刻まれている。

 スワン仙人が静留に投げかけた『不断に変わりゆく世界で不変なものとはなにか?』という問いは、結局青春と友情の物語である(と、ここまでの語りを信頼して断言する)このアニメにおいて、極めて重要なセントラル・クエスチョンだ。
 想像力と優しさの欠如で、友だちを傷つけてしまった静留は崩壊した日常の中で、”もう一度”を追い求めている。
 吾野で生徒五人と犬一匹、穏やかに過ごしていられたなら時が解決してくれていただろう、ありきたりな青春のすれ違いは、狂ってしまった世界、終わってしまう世界では永遠の別離へと変わる。
 苛烈さを増す世界の中で、静留は自分がなぜ旅に出たのか、何を求めるかを厳しく問われてきた。

 その畢竟が、旅の最終目的地に辿り着く前に、妙なハイテンションと爽やかさで、しっかり突きつけられた。
 知恵と狂気と活力を併せ持つ、スワン仙人のいいキャラに助けられて、旅の見取り図がしっかり再確認されたうえでクライマックスに突入するの、マジかっちりしててこのアニメらしいなと思う。
 静留が葉香を求めて突き進んできた旅は、危険も衝突も多かったけど、得るものも沢山あった。
 無事吾野にたどり着いた小賢者が解読することで、事件の真相を知る猿の言葉を解読することも出来たし、”動く”ことには現状維持以上の意味が、確かにある。
 生きて死んで、時の定めから逃れられない生物が背負う、動き続ける宿命。

 

 その真ん中にいるから少女たちは電車に乗って、どんなに世界が揺れ動いても、たとえ終わってしまったとしても消えない答えを求め/抱えて、旅を続けている。
 失われかけた友情のために静留が故郷を飛び出した時に、既に答えは出ているのだ。
 ならば自分たちの旅が何も間違っていなかったと、現状維持の膨張する狂気に、そこに囚われ犠牲になっている親友に告げることで、旅は終わるのだろう。
 世界が救われ、狂気が癒やされ、ありきたりの青春が戻ってくるか…ゴーヤ茂る吾野へ五人が帰って終わりになるかは、まだ分からない。
 スタンダードな物語なので”お家が一番”で終わると願っているが、全部ぶっ壊れちゃってもアリ…かな?

 何しろこれまで示してきた通り、7G世界は何でもありの地獄のワンダーランドだ。
 健気に純粋に、元気よく友だちを助けに来た女の子たちが、世界ごと消えてしまったとしてもおかしくはないが、ただ自分も世界もぼんやりとしか見えない場所に立たされてる葉香が、自分を助けるために万里を踏破してきた静留の顔を、ちゃんと見れる瞬間があると良いな、と思う。
 人格書き換えられたりしたわけじゃないけど、すげー小市民的でだからこそ邪悪なラスボスに便利に使われ、なんも解んなくなってる葉香は、ムチャクチャ可愛そうだった。
 その現状が描かれたからこそ、静留が進む意味も新たな輝きを宿す。
 この旅の結末を、ぜひ見届けたい。