イマワノキワ

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となりの妖怪さん:第10話感想ツイートまとめ

 となりの妖怪さん 第10話を見る。

 ほのぼの平穏なようでいて、現世と同じく色々ヤバいことも多いこのお話。
 その開始時から埋められていた、お父さん消失事件の伏線がゴロンと顔を出して、終盤戦らしい手応えを生むエピソードとなった。
 健気で寂しい日々を積み重ね、大きくなっていくむーちゃんの根っこにある要素なので、じっくり時間を使って描いてくれるのは嬉しい。
 大蛇との対峙を経てジローが怪異と向き合う姿勢が少し変わっていたり、平和な新生を遂げることが出来たぶちおくんとは違う、名前のない怪異と杉本家の距離感だったり、ここまで書いてきた物語が新たに生きる展開だったなと思う。
 クライマックスだなぁ…。

 

 思わず『だれよその男(ひと)~』と声が漏れる、千代ちゃんと謎の歌い手のいい感じの距離感から、物語は始まる。
 いやマジびっくりしたよ…その後特に言及ないし、事件がドンドコ起るから流しちゃったけど、ちゃんと説明してよね俺千代ちゃん好きだからさッ!
 さておきこれまでも幾度か、洒落にならないヤバさが描かれてきた虚数時空のあれそれが、再び牙を剥くッ! …で終わらず、もっとディープで難しい要素として、『交通事故くらいの確率で起こる』虚無喰いの真実が掘り下げられていった。
 これがお父さんの特殊ケースなのか、このセカイに一般的なことなのかは、ようけ判らんけども、ともあれ”それ”はむーちゃんの前に起る。

 追儺に重ねて、この世界で実際に効力のある呪術がどう生活に馴染んでいるかも描かれたが、当たり前に難しい人生のイベントとして、怪異の新生は確かに起る。
 ぶちおくんの場合は記憶と自我が猫時代から継続され、大石家のいち員としてスムーズに新たな生を始めることが出来たが、ベトベトさんに転生したお父さんは姿も記憶も変わり果て、声だけが受け継がれた別人として、名前も思い出もなく世界に産み落とされた。
 いやー…難しいなこれ。
 そらーむーちゃんも泣くし、関係者全員どうしたものか、拳を握りしめ呆然ともする。
 しかしそういう場面は人間生きてれば幾度かあって、どうあれ飲み干し向き合っていくしか無い。

 

 そこら辺の立ち回りは次回以降描かれるとして、お父さん消失事件の真相が描かれることで、虚無喰いのヤバさもより解像度が上がった。
 第5話みたいにパラレルワールドに送り込まれて終わりかと思っていたんだが、ガッツリ肉体も精神も消滅してて、ただ家族を求める気持ちだけが輪郭を失って現世をさまよい、新たな犠牲者を求めるという…明言はされてないけど、悪霊に近い存在なのだろう。

 晴らせぬ気持ちが地上を彷徨う時、害を食わられる生者も、加える怪異も、共に苦しんでいるということをジローは、大蛇祓いを通じて学んだ。
 ただ倒すだけではなく、そういう存在の気持ちを聞き届け、新しい道を探る。

 薄々影の正体に気づいていたとは言え、ジローがそういう”退魔”を選んだのは、エピソードの積み重ねがキャラの生き方を変えてる感じがあって良かった。
 そういう自分になれたのも、小さい体で勇気を振り絞り、自分に生きろと伝えてくれたむーちゃんあってこそ。
 この恩に報いるよう穏やかな笑顔を崩さず、超常の理に揺らされる杉本家に、ジローが寄り添っているのがありがたい。
 色んな人に色んな辛さが降りかかるが、それに潰され呪いをばらまくのではなく、背負うなり飲み干すなり自分なり、一緒に生きていけるよう力を貸す。
 そういうお互い様がちゃんと書かれているのが、このお話の好きなところだ。

 

 むーちゃんが色んなモノを抑え込み、お父さんのいない世界で頑張ってきた姿を見ているので、名前のない怪異の前では声を上げて泣けず、外へ飛び出して泣く姿を見てとても辛かった。
 こんな時でも、何も知らない子どもには戻れずどこか大人びた配慮を残して、泣くべき場所を選んでなく子供の姿は、あまりに哀しい。
 お父さんがいなくなって以来、誰に強要されるでもなくそういう哀しい強さを、自分の一部と選び取って生きてきたからこそ、むーちゃんは親しい人が消えるのに抗うし、強くなりたいと願い続ける。
 その心の強さ、気高い尊さに年は関係ないのだろう。
 むーちゃんはマジ偉いよ…。

 そんな彼女も耐えきれない辛さが、取り残された”気持ち”が新たな形を得る世界で、どこへ流れ着いていくのか。
 新生した”お父さん”に当然罪があるわけでなし、彼にどういう名前をつけどんな存在として受け入れていくか。
 怪異や異能やその危険性、全部ひっくるめて人生を進んでいるこの世界のキャラクターが最後に描くべき物語として、とても良い題材だと思います。
 弁丸さんが言ったとおりキツい状況だが、それを乗り越えて善い未来に進み出せると、これまでのお話が信頼させてくれるのは、とてもありがたい。
 彼らが何を選ぶとしても、それを祝福できるアニメだと思っているので、次回がとても楽しみです。