イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

となりの妖怪さん:第13話感想ツイートまとめ

となりの妖怪さん 第13話を見る。

 時空災害を経て、妖怪がいる世界は反転した。
 何もかもが消えてしまう瀬戸際、心から発する力ある言葉が世界を”新生”させていく。
 終わることを知ればこそ、隣り合う今を言祝ぐ。
 世界創生のスケールまで順当に跳ね上がった後、少女と天狗が雲を見上げる毎日で終わる、素晴らしい最終回でした。
 いやー…マジで良かったな。
 ほんわか日常を追う手つきの中、オカルト理論においても本気だってのは常に示してきた作品なんで、最後話のスケールがガーン跳ね上がるのは意外というより納得、待ってましたの新世界創造だった。

 

 妖しは長い時を生き特別な力も持つが、己の存在を名付けることが出来ない。
 名前がない影は自分を得ることが出来ず、影や鬼となって望みを見失い、寂しさを埋めるべく誰かを傷つけてしまう。
 そういう力強くも曖昧な隣人に、どうあって欲しいのかを伝える言葉の力を、このお話は人間の特別さと選んだ。
 名前を呼ぶ、思いを伝える。
 何も特別なことはない、気づけば日々怠けてしまう人間の当たり前にこそ、あるべき世界を形作り大事な人の命を繋ぐ、最も強い力が宿っているのだとするこの決着、非常にこのお話らしくて好きだ。

 そういう人類の希望代表として、当たり前…だけど特別なんだと、ここまでの物語で示してきた小学生が選ばれるのも最高。
 思い返すと徹頭徹尾、小学生をナメてないお話だった。
 幼く思える彼らにも彼らなりの悲しみと知恵、勇気と決意があり、自分なり積み上げた力と傷を握りしめて、思い切り前に進もうとしている。
 その輝きを、妖怪たちが隣りにいる学校の風景を通じて描いてくれていたこのお話が、世界を新たに生み出すにあたって子どもらに運命を託したのが、首尾一貫しててとても良かった。
 だからといって、未来を形作る特権を年少者だけに預けるのではなく、ジジババ永生者だってバリバリだぜ! なのは最高。

 記憶と心を現世にとどめてくれる肉体と命が、虚無に食われると影となり、また鬼となる。
 最後に明かされたこの世界の死生の輪廻も、妖怪や魔術が当たり前にあるこの世界独特の、納得の行くもので凄く良かった。
 むーちゃんの物語はずっと、虚無に食われたお父さんの不在、あるいは妖怪となって現世に新生した『名前のつけられない誰か』と共に合った。
 なので、面影を残しつつも別の誰かとして、新たに蘇ることの素晴らしさを災害を鏡に描く今回、作品の背景にあるモノをしっかり見れたのは、とても良かった。
 名前と言葉を得て、新たに家族と向き合い直すマーさんも、妖怪一年生を卒業し”先輩”になったぶちおくんも最高。

 

 この世界のあるべき名を叫んだむーちゃんは、ジローを筆頭に人間じゃない隣人がいる世界のほうが、素敵で面白いと思ったから、復活の奇跡を形にし得た。
 それってこのお話を見て、それが何もかも消えてしまう怖さを一週間抱えてこの最終話を待っていた、僕の心をむーちゃん達が拾い上げてくれたって事だと思う。
 3月の末、少し遅れて”現実の”地球から届いた災害の余波が、この危機を生んだと明かされもしたけど。
 大きすぎる衝撃に怯える人たちや、そうして失われたものの影に生きる意味を改めて考え直す姿勢もまた、僕らの世界の隣人たる、この素晴らしい絵空事と確かに響き合っている。

 そういう豊かな呼応は、妖怪がいて言霊が力を持ちうるもう一つの世界を、行政手続きから世界の成り立ちまで、しっかり考えたからこそ生まれるものかと思う。
 めちゃくちゃロジカルに積み上げているものを表に出しすぎず、明日が見えない毎日を必死に誠実に過ごしている人たちの、思いの外山あり谷ありな日常の手触りを大事に、一個ずつ積み上げていく。
 それが最高に良かったからこそ、傷を残しつつも全てが消えてはなくならない決着が、心地よく胸に響く。
 痛みを残しつつも、それを越えていける人間の力強さを、むーちゃんや虹ちゃんを代表に最後もちゃんと描いてくれたの、本当に良かったです。

 このお話がずっとそう描いていたように、人の力に余る理不尽や、それで生まれる悲しみは確かにそこにある。
 しかしそれを変えていけるかもしれない強さも、運命の波や死別の辛さに翻弄される僕らには確かにあって、その最も強い表れとして”言葉”をこの作品が選んだのは、ほんと凄いなと思います。
 死してなお残る無念を、人食いの鬼にしてしまっているのは、私たちの使う言葉ではないのか。
 天狗会議で語られていた反省と発見が、あの世界の形を変え、寂しさに苦しむ亡者を少しでも楽にしてくれたら良いなと、終わった今思う。

 

 死生の必然すら越えていける可能性を、言葉と命は秘めている。
 今更言葉にするのは気恥ずかしい真実を、凄く真っ直ぐ、大上段に振りかぶらず生活の温もりを宿したまま、力強く突き出す。
 そういうお話はいつでも必要だし、描き切るべきをやりきって心地よく終わるのは、一つの奇跡だと思います。
  でもそれは、座って誰かにお下しいただくのを待っているものではなく、色んな人たちが自分たちの居場所で、時に傷を受けながら必死こいて優しく、強くあろうとしているからだ。
 そういう、確かな手触りのあるメッセージも自然と受け取れる作品で、大変良かったです。
 最後の大災害含め、自分の身近に起る出来事を、上手くファンタジックに料理していく手腕が見事で、素晴らしい生活幻想譚でした。

 最後世界が死を超えて新生を果たし、当たり前に苦しく楽しく掛け替えない日々が続いていく証明として、虹ちゃんの小さな恋が描かれるのが、僕はすごく好きだ。
 勇気を振り絞り、約束されていない明日を自分の手で掴み取るようにして、思いを伝えた虹ちゃん…とりょうくん(宇宙最強誠実ボーイ)。
 その決断が、災害に心を傷つけられ友達が一歩先へと進み出す助けになる様子が、世界の暗い面を見つめつつ前を向き続けたこのお話らしくて、大変良かった。
 こうして新たに生まれた恋と友情が、未来に可能性を繋いでいって、色んな当たり前を守っていくのだろう。
 それはやっぱり、あり得ないほど特別で、偉いことなのだ。

 

 というわけでとなりの妖怪さん、全13話終わりました。
 本当にいいアニメで、素晴らしかったです。

 最初は『のんびり田舎暮らしに、妖怪スパイスを振りかけた感じの話かな~』とナメてもいたわけですが、死別の悲しみあり異能力バトルあり、人間を取り巻く業と救いに色んな角度からアプローチする、多彩で楽しい作品でした。
 色んな作風を色んなキャラでやることで、色んな人がいる当たり前の世界の輪郭が鮮明になって、”日常系”としてとても独特、かつ正統派の味わいがありました。

 生きて死んでまた生きて、そういう人間の世の中を描くための照明として、普通じゃない幻想を徹底して作り込み、活かす。

 ファンタジーの正道を独特の筆致で走りきってくれて、本当に良かった。
 キャラクターたちも弱さや脆さを滲ませつつ、目の前に広がる世界を必死に生きようとしている強く優しい人たちで、皆好きになれました。
 やっぱむーちゃんが好きかなオレは…。
 田舎を舞台にしていることで生まれる、ノスタルジーを含んだ爽やかな風が毎回心地よくて、異郷に旅する物語としても楽しかったの、とても良かったです。
 思わぬ角度から顔を出してくる、重たく暗い一撃も気づけば作品の面白さと、懐深く受け入れさせてくるパワーもあり、毎回楽しく見ることが出来ました。
 本当にいいアニメで、面白かったです。
 ありがとう、お疲れ様でした!