イマワノキワ

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天穂のサクナヒメ:第3話『田植唄』感想ツイートまとめ

天穂のサクナヒメ 第3話を見る。

 泥まみれクソまみれ、上手く行かないことばかりの農業にサクナもブチギレッ!
 生まれも育ちも違いすぎる連中が、頭突き合わせての共同生活…簡単に実りを得ることは出来ない農業の厳しさを前に、いったいどうなってしまうのか! という、一本どっしり田植え歌なエピソードである。
 話が収まるフレームが大体の形を見せてきて、こうして一つのことにズッシリ時間を使って見せる手応え、大変良かった。
 腰を曲げて苗を植え、くっせー糞便を引っ掻き回して肥を作る。
 稲作のハードコアな部分にも手探りで挑み、丁寧に描写を積み上げることで、非常にいい感じの”匂い”があった。

 

画像は”天穂のサクナヒメ”第3話より引用

 見てくれこの美しき稲田の景色…やっぱ美術がいいアニメはいいアニメッ!
 アホみたいな苦労をガバガバ吸い込んでまだ足りない、地獄の稲作なれども大変美しい瞬間は確かにあり、簡単に報われずとも積み重ねる根気は、そんな美麗に目を開かされた感動が支える…のかもしれない。
 『ガーガー抜かしても生きるか死ぬか、誰かがやんなきゃ全部ダメになるだけなんだよッ!』という、非常にシビアな視線も残しつつ、日本の原風景が醸し出すロマンティシズムを、素晴らしい背景でたっぷり味あわせてくれる。
 やっぱこういう、問答無用に心揺さぶる”いい絵”があると、アニメは強い。

 無能とガキと手前勝手をミキサーにかけて、野放図に撒き散らかしたかのような、成り行き村落の惨状。
 特別な力と重たい責務を背負うカミとして、ヒトが免じられている戦いやら力仕事やら背負わされる、サクナに係る負担は大きい。
 つうか大きすぎてワンオペだと早晩潰れるので、関係改善の一歩目を今回ようやく、踏み出す形になった。
 親目の前でぶっ殺される悲劇の結果、な~んも知らねぇ赤ん坊に戻っちゃったかいまるに、ノータイムでビンタブッ込むゆいちゃんの超暴力(アルトラ)…正直ドン引きだよ!
 やっぱコミュニケーションが成立してない状況で、ストレスと労務だけが積み重なる環境良くねぇな…人が鬼になっちまう。

 

 爺の言いつけを守って、貴種に相応しい寛容と辛抱を必死に絞り出し、ボケクズどもがやらない全部を背負って頑張るサクナの姿は、涙なしには見られない。
 ブツクサ言うのもブチ切れるのも、むしろ当然かわいいものと思えるくらい、肉体的・精神的負荷がサクナ一人に乗っかってる状況で、どんどん主役を好きになってしまった。
 きっつい農作業のしんどさと同じくらい、手ずから田を起こし水を張り、稲を育てる時に生まれる感動を、サクナがすげー素直に目を輝かせ受け止めているのが、逆に泣けた。
 ホントこの子、なーんで上つ方だと悪童やってたんだろうね…目の前に命の輝きを差し出された時、あんな綺麗な目出来る子なのに…。

 まぁそこら辺は父母の不在により、フラストレーション溜め込み報われない苦しさが、毒になってた感じではある。
 サクナ村の連中は皆親との繋がりを失い、他人同士最果ての地に投げ捨てられた孤児であって、求めて満たされない愛の不在が、ギクシャク衝突する原因になってもいる。
 クソガキの奥にあった責任感、カミとして為すべきことに愚痴を抑えて、『オレ、肉体労働向いてないんで!』とかほざくクソガキも、食材無駄にするデス料理職人にも、図体だけデカい愚鈍マンにも、感情をぶつけることなく落ち着いた態度で、現実的な対応を模索するサクナは、自分自身子どもなのに子どもでいることを許されない、結構悲しい立場だ。

 戦いと農作業、人間が生きるほとんど全部を一人で背負い込み、爺が押し付けるカミとしての正しさにしたがって、寂しさも苦しさも表には出さず頑張る。
  そらー愚痴も出るし喚き立てながら逃げたくもなろうが、荒波に封じられたこの島こそがサクナの居場所であり、身勝手で使えないヒトを守り導きながら、どっかに彼女だけの幸せを探さなければいけない状況だ。
 ここでどこにもない理想に甘えるより、自分の手を泥に汚して必死に土地を切り開き、赤の他人の勝手さ、出来なさを受け止めて前を見ているサクナは、マジで器デカいと思う。
 たった七人の村落共同体、リーダーの資質で飢えるか生きるか決まってしまう状況で、これは得難い。

 

 サクナの過酷なワンオペっぷりが描かれるほどに、どんだけ才気に溢れていてもたった一人で頑張るには限界があり、色んな人を頼る…なかで、クズがちっとでもマシに育っていく大事さが、色濃く描かれていく。
 主役の孤軍奮闘を受けて、ボケクズ共が自分たちなり小さな歩み寄りをしたり、出来ないことが出来るようになったり、ちょっとでも前向きな繋がりが生まれてきているのは、大変良かった。
 その集大成として、辛い仕事を少しでも楽にし、生まれも育ちも違う皆が一つになれる田植え歌を奏でるのは、素晴らしい詩情だった。
 田楽の素朴な起源を描くことで、カミとヒトをつなぐもう一つの文化…芸事まで視野にいれるのは良いなー。

 妙なプライド抱えて手を汚さないきんた、可愛いツラして見てるだけなゆいと、ガキ共がなかなか良い性格してて、能力面で問題がある大人チームとはまた違った厄介さが、じんわり滲んでも来た。
 かいまるが何も出来ねぇのは…しょうがねーだろ赤ちゃんなんだからッ!
 正確に言うと『あまりにあまりな惨劇により、赤ちゃんにされちゃった』なので、マジでかいまるには辛く当たらないで欲しい…。
 一番弱えー奴を大事にできない社会は、館前を全部投げ捨てた超ギスギス社会になるしかないわけで、未来への可能性しかもってねぇ赤ん坊に優しく出来るかは、サクナ村の成熟度と余裕を測る、大事なリトマス試験紙な感じがある。

 とはいえ村長の才能と努力と誠実にマジ甘えすぎている現状を一応は認識し、自分たちも田に入って稲植えるところまでは一話出来たので、まぁギスギスばっかりじゃないかな…って感じ。
 大人チームは善意に能力が追いついていない感じなので、今後スーパーリーダー・サクナ様のデカい背中を追いかける形で、出来ることを増やしていくと手応えあっていいなと思う。
 ミルテさんがかいまるの世話含めた家事労働、ワンオペで背負って余裕がないのが、なかなか上手くいかない主因だからな…やっぱコミュニケーション大事だって、肩寄せあって生きていく以上はッ!
 最悪ギスギスからそういう、お互いを支える足場出来ていくのは見てて楽しい。

 

 

 超天才の英傑であるサクナ神にも出来ないことはあって、田右衛門が働きかけないと、アシグモ族に苦境を訴え、助けてもらう道が開かない。
 ここら辺、父母を奪われ身近に誰かに頼る経験値が少なかったこと、爺からカミの責務ばかりを背負わされてきたこと、それに応える誠実さが、村の厳しい暮らしの中でグングン芽生えたことが、ワンオペ気質に拍車をかけた感じね。
 なまじっかなんでも出来てしまうだけに、他人に頼るという発想が浮かばないのは、カミだからこその弱さだ。
 出来ない弱さを見せると、高貴なカミとして果たすべき責務に向き合えないし、泣きじゃくりながら出来ない自分を優しく、父母に抱きしめてもらった経験もない。

 『結局、自分は一人なのだ』という孤独が、サクナの弱音も愚痴も(あんま)言わず、現実を地道に切り開いていく気高さに繋がってもいるのだが…まぁ限界ってのはある。
 ここで父母に縁が深いアシグモ族の助けを借りることは、彼らがこの島で成し遂げた偉業、生まれた絆がまだ死んでいないことを確かめる行為でもあり、田右衛門のスタンドプレーはサクナがずっと希い、自分ひとりでは取り戻せないものを、そっと手渡してもいる。
 そういう、人間の一番柔らかくて大事な部分を思いやり合うことで、赤の他人は家族となっていき、ただ生きることに汲々としていた集団に、歌が生まれてもいくのだ。

 

 田を起こしてから、たらふく食えるまで10年。
 土に根を伸ばしロングスパンで生活基盤を整えていく、古き村落共同体の時間感覚が、今回は描かれもした。
 農耕をベースに生活を営む時、否応なく人は土地に縛られ、縁に紐づけられていく。
 それが生み出す陰湿なアレソレも確かにあるが、同時に存在する緊密な結びつき、苦労をともにすればこその絆も、土臭く古臭い日本の景色には、確かにある。
 ドクズと低能が頭を寄せ合い、餓えに追い詰められながらちょっとずつ変わっていく様子には、都市化社会が置き去りにしたそういう眩さを、あらためて描きなおすキャンバスとしての強さを感じる。

 出来なかったことが出来るようになったり、見えなった他人の苦労が解るようになったり、頑なな自分を変えていったり。
 荒れ地に命を吹き込み、新たな芽生えに瞳を輝かせる農業の喜びと、赤の他人が共同体を形成していく足取りが重なって描かれているのは、なかなかに力強い筆致だと思う。
 手間と苦労と喜びが渾然一体となった農耕の良さに、人間が変わって繋がっていくドラマが混ざると、作品独自の面白さがグンと際立って、たいへんいい感じだ。
 この面白さを際立たせるためには、耕すべき土地は荒れ果てていなきゃいけないし、人間共は身勝手でクズで無能じゃなきゃいかんのだな…基本に忠実な、力強い作りだ。

 

 ギスギス同じ場所に立てなかったサクナ達が、同じ歌を口ずさみながら一つの田に苗を植えれるようになったのは、アシグモ族との絆あればこそだ。
 誰かと繋がり、共に苦労を分かち合うことで、荒れ地に豊かな実りが生まれていく。
 サクナの悪童っぷりがどこから来てるのか思い返すと、『孤独…良くねぇよ!』という、ド直球ストレートなメッセージを作品から感じ取ることが出来るのも、自分的には嬉しい。
 いや、マジ良くねぇよ孤独…。
 村落構成員全員が働かなきゃ飢え死にする、農耕社会のシビアさをテコにする形で、徐々に繋がり変わっていくヒトとカミのドラマが親身に感じられるのは、やっぱ良いなー。

 あと爺いわく、農耕パートでむっちゃ頑張るとバトルボーナス確定ッ! らしいので、ここらへんも物語の諸要素が上手く連動してる感じを受ける。
 豊穣神であり武神でもあるサクナが、里の実りを奉納されることで強くなっていくのは、かなり納得行くロジックだしな。
 今回は農耕要素にどっしりカメラを寄せて、その善さをたっぷりと味合わせる構成だったけども、バトル要素の面白さも今後、ゴリゴリ掘ってくれると楽しそうだ。

 

 荒れ地を豊かな田畑に変え、赤の他人が家族になっていく。
 変化と豊穣、絆と戦いの物語はまだまだ始まったばかりだが、早苗の段階で言い実りをえられそうだと、思えるアニメです。
 次回も楽しみ!