イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

真夜中ぱんチ:第9話『お帰り。ここが今からあんたの実家だ!』感想ツイートまとめ

 真夜中ぱんチ 第9話を見る。
 動画投稿者に盆も正月もないッ!
 実家に帰ってなおネタ探し、数字に踊らされる電脳亡者の生き様見晒せッ! …と思いきや、真咲の柔らかい部分にしっかり迫る、マヨぱんらしい第9話である。

 前回フェスでお外に開けた話をやった後に、生身の真咲をよく知る妹、であり最初のファンでもある存在にクローズアップして、顔の見える身近な相手の大切さを際立たせる。
 終盤戦に向けて、生来の故郷喪失者であるヴァンパイアの悲しみと、それに騒がしく寄り添う真咲の横顔なんかも切り取りつつ、ヤラセ動画と思わせて撮影全部が冴えたネタという、最後のどんでん返しも気持ちがいい回だった。

 僕は純情健気な色情狂のりぶちゃんが好きなので、真咲が実家帰ってムチュムチュ狂ってる様子も、久々の骨休めに騒々しく押しかけてくる姿も、たっぷり見れて大変良かった。
 妹のさくらちゃんがエピソードヒロインなおかげで、りぶちゃんがあくまで真咲個人に狂っている”純度”が感じられたのも嬉しかったな…。
 やっぱこの話のエンジンは、りぶちゃんが真咲に恋慕と欲情を燃やすエネルギーで回っていると思うので、好きすぎて頭おかしくなってるあの子がたっぷり楽しめたのは、なかなかありがたかった。
 あんだけボーボー発情してんのに、とびきり純情な所が好きよ、りぶちゃん…。

 

 お話の方は騒がしくもどこかまったり、年末情緒を色濃く宿して展開する。
 やっぱ終盤戦は配信者・まさきちをいかに復活させるかが一つの鍵になりそうで、前回ホコリまみれの舞台裏から仲間が脚光を浴びてる様子を見て、湧き上がった複雑な心境を、実家舞台に静かに着地させていく。
 姉がどんな立場になっても、むっつり分かりにくい表情でずっと好きでいてくれている、一番最初のファンと間近に過ごしたことで、真咲を縛っている枷がまた一つ外れた感じもあった。
 最悪の結果で終わったけども、ギラつき走り抜けた日々の全部が嘘になるわけじゃないし、そこにあった輝きが消えてなくなったわけでもない。

 舞台裏に身を引っ込めたからこそ、人間社会でどうにか自己実現したいのに上手くいかない異形どもが、動画を通じて社会に繋がれる足場を、真咲は整えられた。
 やっぱ生き馬の目を抜く配信業界で、必死にいろいろ考えてやり遂げてきたことは、新米Newtuberでは到底追いつかない実力を、彼女に与えていく。
 手慣れた様子で冒頭の挨拶をこなし、しかしダルくてつまんねぇ休日しか撮れない苺子たちの様子と、視聴者引っ掛けるならまず身内から、ワイワイ騒がしい中実家ドッキリをキッチリやりきって、企画を成立させてしまう真咲Pの頼もしさが、分厚く対比される回でもある

 

 あくまで裏方、縁の下の力持ち。
 その立ち位置に真咲がこだわるのは、一回しくじった罪滅ぼしの気持ちと、気づけば運命共同体になってた仲間に迷惑かけたくない思いと、ぶっ叩かれて傷つきたくない弱気が、入り混じった感情だと思う。
 その上で闇の種族を光の中に押し出すだけじゃ、どうにも満足できない気持ちがあることを、前回真咲は意識してしまった。

 彼女が”真夜中ぱんチ”ではない以上、どんだけデカいフェスに関わっても、自分を求めるファンの声は届かない。
 んじゃあどこから光の中に踏み出しても良いんだっていうエールを得るのかっていうのが、実家に帰って妹といちゃつく今回示される。
 「まぁそら、家族だろーが!」というド直球を、しっかり速度出して真っ直ぐ投げてくる所が、このアニメの良いところだと思うね。

 

 ヨヨヨなギャグで流される苺子100年前の思い出、深堀りすると全く洒落になってないのがマヨぱん味だと思うけど、時の流れに置き去りにされた吸血鬼には、帰るべき故郷がない。
 横暴Pのハチャメチャ企画に見えて、さくらちゃんとマヨぱんらしく距離を縮めていく今回は、人間モドキがずっと欲しかったものを真咲が(また)手渡すお年玉回でもあろう。
 数字に狂わされ露悪に走り、ピュアな自分を見失ってはいるものの、真咲の根本は生真面目と人情…めっちゃあったけぇ女(ひと)だってことを、改めて描くエピソードだった。

 ここでサブタイにある通り「べ、別に悲しい夜の種族にせめてもの温もりを手渡そうだなんて思ってないんだからね!」と、自分の中にある真っ直ぐであったけぇモンに素直にできねぇ真咲の有り様が、チャーミングに凹み傷つき歪んでていて、おれはいっとう好きである。
 可愛いねぇ……ステレオタイプな養殖モノじゃない、生粋のツンデレを摂取できるんで、俺は真咲好きだよ!

 

 なかなかツッパった鎧を外してくれない彼女が、鎧を外して原点回帰できる場所。
 それはとにかく人の世と縁が切れているアウトサイダーたちが、失われたからこそ求めている温もりを手渡して、なんか良い感じに繋がり直す好機でもある。
 撮影だろうがフェスだろうが他人のお家だろうが、常識飲み干してお行儀よくなんて過ごせないおバカ吸血鬼の、あるがままをさくらちゃんは許容し…というか分かりにくい表情の奥で、心底楽しみファンになってくれる。
 実はマヨぱん初の、顔が見えて手触りがある”ファン”の好意が、姉に向けるのと同じく分かりにくい鉄面皮で覆われているのが、不思議とチャーミングな回だった。
 さくらちゃんがむっつり可愛いの、とにかく良かったな…。

 表立って愛を示すわけではないが、ダメ姉なりに妹と仲良しで、良い距離感で繋がれている様子は、だらけた帰省描写の中にしっかり感じ取れた。
 そんな一番近い人の温もりが、パフォーマーとしてのマヨぱんを好きでいてくれる人の思いとか、人生のレールどんだけ踏み外しても味方でいてくれるありがたみとか、今後クリアマックスへ加速する物語の、大事な足場になってくれるだろう。
 息抜き回…というには、お話の中での仕事がカッチリわかりやすい手堅さがあるのが、このアニメらしくて好きだ。
 真咲の根っこにある生真面目さと、作品の雰囲気がシンクロしてんだよなぁ…。

 

 

 ダメ吸血鬼の好きにさせてても、いい塩梅のフェイクは全然作れず、しかしその八方破れな素顔がエンタメになるよう真咲が”編集”を入れることで、マヨぱんの正月企画が完成する。
 今回のエピソードは主役がどういう”お仕事”しているのか見せる回としてもかなり冴えてた。

 ほっとけば全自動でグダグダになるクソボケどもが、曲りなりとも40万登録の動画配信者でいられる要が誰か、改めて示していたと思う。
 ゆきみたいな秩序の奴隷ってわけじゃないんだけども、なんだかんだ配信業のルールを熟知し、自分の”好き”が商売になるために何すれば良いのか、解って教える真咲あってこその、”真夜中ぱんチ”である。

 人間のフツーを溢れるノリと勢いで蹴り飛ばし、お行儀よくしなきゃ腕を吹っ飛ばす夜の秩序にも、素直に従えない。
 マヨぱんはホントーにどうしようもないクズであり、そういう連中が社会の窮屈な鋳型にハメられないまま、どうにか生きていけそうな自由が、動画配信業にはある。
 しかしそれは野放図を意味せず、欲望の赴くまま原点を見失って暴れれば、”まさきち”がたどったように何もかもがぶち壊しになる。
 他人がとやかくトゲ刺してくる”好き”を譲らぬまま、社会との適切な接点をどう作り、自分と世界を”編集”していくか。
 褒められたもんじゃないフェイクをドッキリ企画に変貌させる今回の話運び、作品全体の縮図って感じもある。

 

 心根では結構傷ついて痛い目見て、そこからすくい上げてくれた仲間に感謝もしてるけど、荒んだ態度で純情を覆い隠して、クズな自分以外なかなか見せない。
 真咲の素直じゃなさがどっから来てるか、さくらちゃんのむっつりを見て改めて理解する回でもあったけど、やっぱ我らがプロデューサーの根っこはメチャクチャピカピカしてる。
 そこに戻るのもなんだか気恥ずかしく後ろめたく、二度目の失敗に耐えられそうもなく、真咲は影の中に自分を沈めて安定しようとするけど、でもそれはやっぱり、心から望んでいる未来じゃない。
 ここら辺の輝きへの羨望が、ヴァンパイアの生き方と重なってるのも好きだ。

 寄り道、あるいは動画投稿者の騒がしいルーチンワークにも思える回だったけど、実家を定点に真咲と彼女の仲間が今何処にいて、何処に行けるのかを、凄くこのアニメらしく照らしてるエピソードだと感じました。
 やっぱこういう話がこのタイミングにしっかりあるから、僕はこのアニメが好きだ。
 根っこの部分はかなりしっとりしてんだけど、ちゃんといつも通りワーワー騒がしくてダイナシで、みんな可愛かったのも良かったな…。

 

 

 後ろめたさを越えて、新たな輝きへ進み出す前に確かめた、自分の原点。
 殴りつけた絆に改めて向き合う準備が整って、いよいよはりシス再会の機運も高まってきました。
 次回も楽しみです!