オンボロ商店街の日常を守るべく、無茶を通して道理を引っ込める!
凄腕魔法ベンチャーの本領発揮、社員一丸となっての真心大作戦の行方を追う、株式会社マジルミエ第4話である。
今まで社会のカタにハメられハメきれず、自分らしさを活かす場所を見つけられなかったカナちゃんだが、ド新人だろうが出てきたアイデアをしっかり聞き届け、実現可能性と理想を天秤にかけ…というか、圧倒的実力で理想を現実に引き寄せる職場で、なりたい自分にキャラチェンジ達成! となった。
この魔法少女歴で現場の喧騒に飲まれず、為すべきを為しそれを踏み越えたアイデア出しまでやってるカナちゃんも大概だが、それを支えるバックエンドも怪物めいた実力の持ち主で、「やっぱマジルミエは、マイナーリーグの超エースなんだなぁ」という気持ちを顕にした。
組織としての健全度も、魔法技術企業としての実力も、自分と波長の合うコーポレートアイデンティティも、奇跡的にドハマリできる就職だったと、会社一丸になって問題に取り組む中で見えてくる回だった。
…現状アスト経由で、拝金効率最優先主義だの情熱なき仕事ぶりだの、メジャーリーグのヤバいところが描かれてるけど、こんだけ産業としてデカいとマジルミエと同規模の底辺企業に、相当ヤバい爆弾会社ありそうで気になる。
そういう世知辛さと”魔法少女”のギャップで見せる話でもないかな?
今回は理想だけ追いかけたド新人のアイデアを、タイムリミットがある怪異災害の渦中で新規にプログラミングしきり、生活基盤の保護と問題解決を両方やりきる、マジルミエの柔軟性と先進性が見て取れた。
社長譲りの死んだ眼で仕事してる、アストの魔法少女ちゃんも驚いていたけど、あの規模の大規模プログラムを災害中雨に間に合わせるのは、結構なチートなのだろう。
そういう技術持ってる会社が、なんで社員五人のド底辺なのか。
お土産もたっぷり貰い、自己実現の嬉しさに主役が浸る明るい物語の奥で、そういう疑問が静かに脈打つ。
ここら辺、魔法少女産業の全体を描かないと見えん部分だわな。
あきらかイヤな金持ち悪役として描かれている古賀社長と、変態ながら腕が立つ理想主義者の重本社長は、若き志を共有しつつ、魔法少女産業の上と下にキレイに分かれて、今を生きている。
そこに何があったかは、なんで社長がイカれた格好してるかの種明かしも含めて、キッチリ踏み込んで欲しいポイントだ。
いやー…散々変態変態好きに煽らせた挙げ句、重たい定めをその裏側から突きつけて、観客に土下座させるセッティングでしょ絶対。
人間を測る視力も、理想と現実の距離感を探りつつ理想側に体重を預ける決断も、社長の”マトモさ”はここまででしっかり描かれていて、しかも今回実務の腕もあると明かされた。
そういう人が”マトモじゃない”ことし続けているからには、なんらか理由はあるはずだし、それをテコに使って魔法少女産業の重たさとか、理想を追いかけているとてっぺんは取れない厳しさとか、更に深く暴いて欲しい気持ちがある。
ここら辺、ワクワクで魔法少女業界に飛び込み、夢いっぱいの理想的会社に受け止めてもらったカナちゃん視点では見えにくい部分だと思うわけで、オジサン世代で掘るのが適任かと思う。
まぁアニメの尺が、主人公の魔法少女業界体験記以外のものを描く余裕があるかは、また別の話になるんだけども。
ただ相当旨い出汁が出そうなんだよなぁ、W社長過去編…。
顧客の事情を慮り、天才たちにしか出来ない無茶を押し通して理想を形にするマジルミエスタイルは、確かに素晴らしい。
その上で、それが業界のスタンダードになってない事情が確かにあるはずで、現状見えていないそういう足枷を、ちゃんとエピソードの中で削り出していく話が今後くると、皆の力を合わせて何事かを成し遂げた今回の達成感が、いい感じに裏打ちされていくとは思う。
主役が足を置いている視点の後ろ側、”敵”になっちゃいそうな相手が抱えている”理”に踏み込んでくれると、一方的にワッショイして気持ちよくなるヤダ味が削れるわけでね。
ここら辺のバランス感覚は、結構いい作品なのかなと、ここまで見て思った。
僕はこのアニメを、魔法という新エネルギー技術が実在し、法に支えられた社会的インフラとして機能し、それに基づいて産業が駆動している世界のシュミレーションとして、SF的に見ている感じが強い。
魔法少女が「成人が行うべき、華やかで大事なお仕事」として認識されるまでには。
あるいは怪異対策が法的義務として企業や地域に課せられ、当たり前にサボられてヤベー事になる社会になるまでには、一体何があったのか。
結構な被害が頻発しているように思える怪異が、当たり前にある世界を飲み込むまでに、社会はどう変化したのか。
ここらへんを書いてくれると、なかなか俺好みの味だなぁと感じる。
この世界の魔法、どうやら大企業と官庁が絡んで統制している、キッチリ枠組みが整った”産業”なので、マジルミエみたいに理想を見据えて真面目に取り組む輩もいれば、可能性畑にまいて私腹を肥やそうとするゴミもいそうでさ。
そこら辺の生臭い実態を見せてくれると、実在する魔法(あるいは魔法が実在する世界)としての味わいもコクが出てきて、なかなか良いかなと思う。
ここら辺、今回書いた透明度の高い企業頑張りストーリーからはちょっとズレるし、話全体が濁る要素でもあるので、扱いは難しいと思うけど。
でもまー、この生っぽさだと色々ありそー…とは感じたわけで、そこにはカメラを入れて欲しい気持ち。
商店街全部に広がる怪異を相手取り、現場の二人もサポート組も大忙しな今回、魔法プログラミングと魔法少女オペーレーションを同時にやってる、バックエンド組の超人力が際立ってもいた。
人数少ないので何でもやらなきゃいけないのか、何でも出来てしまう超人が集まってるからこの規模でも立ち回れているのか、判断がちょっと難しいけど。
この超人軍団の中に交じるには、そらーカナちゃんも可能性の塊じゃなきゃ難しいだろうから、勤勉と記憶の怪物なことに納得が生まれる回でもあったな。
あとすげーシンプルに、越谷パイセンが前衛として仕事出来過ぎ面倒見良すぎで、頼りがい満載で良い。
こんだけ優秀でも人数足りないと出来ないことも多いと思うし、カナちゃんという超新星が仲間に加わったことで、マジルミエという組織がどう理想を現実に引き寄せていくのかも、今後見守っていきたい。
職能にしても性格にしても、いい感じに五人の凸凹を噛み合わせて有機的に機能している集団なので、会社全体がどこに進んでいくのか、ワクワクしながら見守れるのは大変いい。
人間が入るハコである会社が良くなることで、そこにいる人達の物語も、より良い方向へと転がっていくだろうしね。
それが魔法少女業界全体へと波及していくかは、物語が見据え制御するスケール次第…ってところか。
というわけで奇跡の出会いの次のステップ、会社一丸となって難題を解決し、働く実感を全身で受け止めるまでのお話でした。
魔法少女一年生が自分と仕事をわかっていく物語として、相当手堅い話運びで進めてくれているのは、なかなか大事な安心ポイント。
同僚たちもクセ強ながら優秀だと、具体的な事件を乗り越える中でしっかり描かれて、さらなる活躍が楽しみになりました。
一個大きなヤマを超えたことで、作品が乗っかる土台はしっかり作れたと思うので、ここからどういう方向に転がしていくかの手際と野心を図りつつ、まだまだ続く魔法少女頑張り物語を味わっていきたい気持ちです。
次回も楽しみ!