曖昧な僕らを繋ぐ、歪で足りない絆の体温。
アロマンスなくせに異様にモテるお姫様が、少年たちの純情を引っ掻き回す…と思いきや、意外な角度に突っ走るアクエリオンMoE第4話である。
敵さんに”杭”打ち込まれていよいよヤバいか? …と思いきや、ボヤケた現実は相変わらずノンキに日常を謳歌し、なんで命がけのロボバトルやっとるのかイマイチあやふやなMoE世界。
この不確実な震え方が結構好みだと解りつつもあるが、そこに打ち込まれる唯一の楔…前世の因縁。
取り戻した記憶は今生の性別や関係を完全無視して、姉妹の絆でモモヒメとリミヤを繋いでいく。
前世の縁を足がかりにして生まれる、男女間のシスターフッドたぁ…ね、ネジレてんなぁ!
合体時エレメントだけに感じられる実感は、シミュレーターでは再現できないし、搭乗しない大人に共有もしてもらえない。
特別な感情のうねりは当事者以外を弾き飛ばす排他性があればこそ特別で、それは取り戻した前世の記憶にもいえる。
誰かの中にあって客観視出来ず、しかし猛烈にその人を突き動かす何か…感情なり前世の記憶なり特別な使命なりが生み出すズレと熱量が、作品の真ん中にあんのかなと思う回だった。
(ナード気質とはいえ世界のため子ども達のためかなり頑張っているのに、その情熱が空回りして全然分かってもらえないサルタ先生の描写含む)
主観と客観のズレを扱うならそらーあやふやで電波系な話にもなるわけだが、それは視聴者にも中々掴みどころのない話になるので、どっかで作品に体重を預けうる強いネタが必要にもなる。
個人的にはサヨちゃんが”それ”になってくれそうだったのだが、あの子死んじゃったので現状、インパクトのある一発待ち…って感じではある。
第5話にして敵サイドの転校生来襲って感じだが、七海ひろきボイスの美少年が何をもたらすのか。
最後にサッコが見せた、共感できないなりに微かに心配できてる自分にちょっと安心したような笑顔を見ていると、あんま焦らずジリジリ煮込んでほしいなぁと思う。
でもネタ元にマオリ神話持ってくるようなひねくれアニメなので、ダイレクトでキャッチーな一発はやっぱ必要かもしんない…。
こじらせたオタクの夢の煮凝りだよな、ポリネシア神話図書館で読んでるそばかす少女…。
というわけでモモヒメ加入回後編、エノスイデートで自分たちの心をさぐれ! というエピソード。
モモヒメ-リミヤとサッコ-トシにエレメントが二分され、前者だけが凄い勢いで特別な繋がりを生み出し/思い出し、前世でそうしたように幾度も手を重ねて解りあった場所へと突き進んでいくのが印象的だった。
当事者は強烈な繋がりで結ばれているのに、あるいはだからこそ、その外部にいる他人にはそこに入り込むことが出来ない。
恋ともまた違う、より強く余人には理解されない”本当”が、欠けているものを埋め合わせていく。
エレメントに選ばれ、日常の裏に潜む異様な戦いに身を置いているからといって。
あるいは感情を繋ぎ合わせて動くアクエリオンが、マナの相互流入/相互補完を後押しするからといって。
モモヒメ(セドナ)とリミヤ(ハイダ)が掴んだ/思い出した、性別を超えた唯一絶対の真実が仲間に共有されるわけではない。
トシは二人の関係が見せかけどおりの甘酸っぱいロマンスだと誤認するし、モモヒメの幼馴染でありながら彼女の特別から弾き出されたサッコは、自分が感じる居心地の悪さの正体すら解らない。
そういう解りあえなさを、越えて繋がる特別な思いは、世界をどう変えていくのか。
周りに合わせるのが異様に上手かったリミヤが、カミサマのビラを友だちと一緒に嘲笑うのではなく、既に狂っていると思い知らされた実感を込めてスルリと受け入れるシーンが、大変良かった。
前世の因縁が強く絡む放課後救世主に体重を預けるほど、リミヤは”日常”から疎外され、自分を分かってくれる特別な仲間との繋がりを深くしていく。
世界の命運を賭けた特別な戦いなんだから、そういう閉鎖性は大事…なんだろうけど、端から見てるとイカれて危うくて、多分このアニメはそういう自分の歪さに自覚的だ。
閉じて特別で(どこか懐かしく手垢が付いた)オカルトを、少し遠いところから客観し、あるいは冷笑しているシニカル&ポップな手触り。
数年前より遥かに洒落にならない手触りを宿した、陰謀論と自分たちの紡ぐ物語がかなりスレスレであるとわざわざ入れ込んでくる手つきには、そういうモノも感じられる。
この”アクエリオン”っぽくない正気の視線が、長く続き構造疲労に軋んでるシリーズの挑戦としては結構良いなと感じているが、同時にピーチボンバーブッ込む一連の流れを見ると、”アクエリオン”っぽいチャーミングなトンチキ、かなりありがたいなとも思う。
カトゥーン調のデザインを裏切って、徹頭徹尾不安定で重たいMoEだからこそ、狂いきった日々に差し込まれる笑いが効くね。
今期このアニメ、一番暗いからね正直!
常識とされている歴史には乗らない、秘されし真実の神話。
その過去生を思い出す特別な体験は、リミヤに心からの共感を与え、恋心を知らないモモヒメを特別な尊さで満たす。
合体によって機械的/物理的に欠損を満たす以外の充足が描かれたわけだが、これも一般性に欠けた特別な…特別過ぎる体験なのには変わりがなく、子ども達の思春期は他人が踏み込む余地がないまま、危うく転がっていく。
ここら辺の不健全な閉鎖性、それ故生まれる見通しの立たなさを、今後どういう手つきで扱っていくかは気になる。
作中追い求めるべき”正解”になるのか、その正しさを認めつつバランスを取っていく”課題”なのか。
あるいは正されるべき”問題”なのか。
4話の段階で全容が見えないのは当然だし、他のエレメントが前世を思い出した時とか、その特別さを活かして欠落を満たす様子から、そこら辺も見えてくるのだろう。
「男女は恋で繋がるもの」っつー薄っぺらな常識を、バキバキ前世系の繋がりで蹴っ飛ばして、強く誰かの手を取れる特別さをモモヒメとリミヤが捕まえられた事自体は、かなり好きなんだよな。
二人共クラス内部の価値観からすれば、上手くやれてるリア充階級で、でもその内側には決定的に壊れてしまって満たされないものが、確かにある。
ならそれを満たすのは、個人的で閉じて危ういもので良い。
そうして得られた心の繋がりを力に変え、アクエリオンは今日も世界を守っていく…わけだが、謎の転校生がそれをどう揺らしていくのか。
日常とやらがすっかり狂っちまってる事は中々いい感じの湿り気で示せてると思うので、それを破壊し再構築する真実を、サンくんがどんくらいの強度でぶっ込んでくれるのか…来週も楽しみです。
今のMoEが捉えてる光景って既存の作品が切り取った風景(”アクエリオン”自身含む)のリフレインを超えてないので、足場を整えた現状から無謀でもジャンプして、どっかで自分だけの歪な特別さを差し込んできて欲しい。
それは作中、サッコ達がじっくり追いかけているテーマでもあるわけでね…。