イマワノキワ

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UniteUp! -Uni:Birth-;第6話『見つけないと』感想ツイートまとめ

 「仲間でライバル」という定型句の奥にある、思い出と湿度を掘り下げる旅へ。
 UniteUp! -Uni:Birth-第6話を見る。
 JAXX/JAXXエピ後編ってことで、楽翔がいないところでバズった影響が生み出す不協和音と、ノーテンキに思える関西弁ボーイと生きづらさを抱えた前髪ボーイの過去を、一気に掘り下げるエピソードとなった。

 一期で感じていたJAXX/JAXXの爽やかで陽気で…奥行きの薄い感覚を補うように、クッッッソ面倒くさい潤の感情が暴れ倒して、大変良かった。
 やっぱこんぐらいの暗さと湿度と重さでもって、アイドル稼業を彫り込んでいく筆致がこのアニメらしいよ!

 スタートラインを踏んだばかりの、真っ白な雰囲気が特徴のPROTOSTARに対し、JAXX/JAXXは個性も関係もバラバラな五人が、複雑怪奇な因縁の果てにより集い、バンドになっている所に面白さがある。
 前回ほまれ兄さんが抱え込んだ思いをゲロといっしょに吐き出させ、一人で遠い場所に行っちゃいそうな楽翔の背中を書いたことで、残された連中が何を思い、何を絡み合わせて答えにたどり着くのか、中々見ごたえのある拗れ方だった。
 この絡み合いからちょっと離れた場所で、一期で既に課題を終えた一澄くんがいいポジション取ってるの、このアニメらしいじっくりした話運びが、実を結んできた手応えもあったな。

 

 未熟で幼い時代も含め、時に反発し影響を与え合いながら進んできた、幼馴染の二人。
 そんな関係が新たな異物たる楽翔の乱入で変化し、JAXX/JAXXという形にまとまり、だからこそ生まれるわだかまりを、忘れ去ってバンドの明るい担当をやれてる男と、ずっと覚えていて黙り込む男。
 この陰陽二男子のネトツイた関係性が大変に良く、ようやっと前髪の奥の潤の素顔が見れた感じもあった。
 個別回はキャラの深奥を探るためにあるわけで、朗らかな仮面の奥に結構面倒くさいものを抱え込んでいた奏太も含め、ようやく五人全員の魂を感じ取れた感じがあったなぁ。
 それを描ききった後での楽曲には、凄く説得力があった。

 Bパートの横浜ぶらり旅も単なるファンサービスで終わらず、自分たちで楽想を掴んで曲に仕上げていくバンドらしいまとめ方になっており、ユニットの個性をしっかり出せる展開だったと思う。
 まー地元なもんで、あんなに綺麗で素敵な場所として描かれると格別の嬉しさがあるものだが、旅と挑戦をテーマに夜景と星と宝石を重ねて、コンセプトをしっかりまとめ上げたステージングの見せ方は、大変良かった。
 ユニットバトル編に入って、表現者としてどういう説得力を出していくか、ドラマパートで背景を掘り下げつつファンの前に提示されるものを共有できて、創り手としての彼らを尊敬できる話が積み重なってるの、凄く良いなと思う。

 

 

 

 

 

 

画像は”UniteUp! -Uni:Birth-”第6話より引用

 というわけで、バズったが故の不協和音を察して曇る陽キャと、フードの奥に本音を隠してメラつく陰キャの、スレ違いから物語が始まる。
 感情表現やコミュニケーションが得意ではない潤が、一見コミカルな表情の奥に何を隠しているのか、「先に進む」ために照らされうはずのバックランプで赤く暗示しているの、天才の演出過ぎてビリビリ震えた。
 こういう情動の爆弾を画面に埋め込むのがアホほど上手い話は、自動的に色んなモノを画面から読み取らなきゃいけない複雑で重たいアニメにもなってしまうわけで、ポピュラーとはまぁ言えないわな…。

 しかしその繊細な筆致だけが削り出せるものは確かにあって、潤がメラつく奏太の明朗な明るさ、楽翔の気持ちをすぐ察せれる視野の良さは、長所でもあり短所でもある。
 広く短い奏太の視界と、深く狭い潤の視線は時にすれ違い、時に強く絡み合って彼らを現在まで運んできていて、どっちが正しいという話ではなく、それぞれの個性であり繋がり方なのだ。
 そこにどういう助け舟を出して、二人の気持ちが一つに重なるかを今回のエピソードは掘り下げていく。
 ここは二期の基本に則って、周りの人の助け舟を活かす形で突破口を探していて、お互い様な助け合い事務所の空気を強く感じられた。

 

 俺は幼馴染が好き過ぎてやや具合がオカシイ小デブがなにより好物なので、かっちゃんが再登場し明良くんと超イチャコララブラブしてたの最高だった。
 幼馴染だからこその距離感を暴き立てるのに、この二人以上の人材はいないわけだし、アイドルでもなんでもねーかっちゃんがこういう仕事を任せられるの、彼の重要性を制作者サイドが解ってくれてる感じがあって嬉しい。
 外に対して開けた視界を持つ奏太は、周りに人がいるファーストフード店で。
 内側に籠もる生き方をしている潤は、楽翔と二人きり私室で。
 それぞれの個性を活かしつつも、重なり合う因縁と心をカットアップしながら魅せる演出も冴えていた。

 潤が寡黙で心をあまり見せないからこそ、溜め込んだ感情が炸裂する瞬間が最高に刺さるわけで、フードや前髪を活かして心の内を隠し、思いのマグマを溜め込む演出を重ねてくれたのも、大変いい。
 それが噴出する先を予言するように、雪景色がエモい回想をしっかり折り重ねて、二人だけの特別な関係を視聴者に開示してくれたのも、幼かった彼らが大人になりかけている”今”、どこへたどり着くのか見届けたい気持ちも強くなる。
 過去と現在と未来が錯綜する瞬間に向けて、丁寧にレールを敷く演出が今回は鮮明で、そういう迷い道と脱出口を見るのが好きなアニオタとして、大変素晴らしかった。

 

 他人とうまく繋がれない自分に、生きづらさを感じつつも生き様を変えられない潤の、マイペースな頑なさと結構シリアスな摩擦熱。
 周りが何をしようが俺は俺と、揺るがぬ芯を持っていることは時に(長く伸ばした前髪のように)世界への扉を塞ぎ、彼を孤立させる。
 周りが見えているのにそこに合わせることも出来ない、尖った個性を持ってた奏太はそういう扉をこじ開けて、感情を素直に表に出すことで生まれる熱量…潤が縁遠いと思っていた星を、間近に手渡した。
 だから、ライバルで親友だと思い続けて欲しかった。
 このピュアな凶暴さが、メカクレボーイに隠れていたと解った時の興奮…アンタ解りますッ!?(いきなり大声マン)

 幼年期の生きづらさを、アイドル稼業に揉まれる中で巧く乗り越えて、社交的で視野の広い自分を創れてしまった人生巧者が、その巧さ故に取りこぼすもの。
 陽キャの中にある影と、陰キャの中にある光が錯綜する作りになったのは、真逆な幼馴染がだからこそ惹かれ合った運命を高らかに奏でていて、感情の温度が高くて良かった。
 潤の想いを時に置き去りにする、奏太の開けた感性って、実際楽翔が抱え込んでいた複雑な気持ちに素早く共感して、ユニットの未来のため、大事な友だちのため必要な”正しさ”を、引き寄せる助けにもなっている。
 その意味は、もうガキじゃない潤も解ってて、でも飲み込みきれない。
 う、美味い美味すぎる…。

 

 

 

 

画像は”UniteUp! -Uni:Birth-”第6話より引用

 そういうバックボーンを描いた上で、ファンサを兼ねた横浜ぶらり旅に炸裂する感情ッ!
 ぶっちゃけJAXX/JAXXって陽気なリア充が肩寄せ合って、約束された成功を気楽に掴み取るような良くねーイメージがどっかにあったわけだが、そういう偏見…あるいは頑張って造ってる商売用の外面の奥に、かなり捻じくれたコンプレックスと複雑さがあることを、ここの連作は良く暴いてくれた。
 楓雅が抱えた湿り気を暴き、LEGITがエロい雰囲気売りに出してるオラついたユニットではないと、改めて刻んだ第2話・第3話と同じ、気持ちの良い裏切りがある。

 幼いヒ約束を交わしたダーリンが、自分の気持ちを察してくれるまで頑なに足掻き続ける潤の不器用は、ぶっちゃけ超めんどくさい。
 しかし色んな人がついていけないと離れていった、そういう潤の個性をこそオモシロイと思ってくれからこそ、余り物ユニットはお互いを尊敬しあえる、特別な関係で繋がれた。
 ぶっ倒れるまで走り続け、二人きり車中で語り合い心を曝け出さなきゃ、新しく繋がれない、幼馴染の面倒くさい距離感。
 ここをゴリッゴリに彫り込んでいて、大変良かったです。
  「気づいてよ!」とほざく潤に、「言えよ!」と返さないから、奏太は彼の親友でいられたんだろうなぁ…と思う。

 

 しかし複雑に絡み合った関係は、幼い約束を置き去りに転がっていってしまっていて、それを新たに取り戻すのなら、黙ってばっかじゃ道は開かない。
 雪の日手渡した優しさを再演し、思い出を手渡し直すだけじゃ全然満足できないこじらせ方、ホント面倒くさくて最高。
 こういう重力を抱えた男と、親友でありライバルでもある関係続けたいってんなら、奏太も”正しい”だけじゃない特別さでもって、本音をぶつけ受け止めなければいけないのだ。
 長くめんどくせー回り道を経て、ようやく前髪の奥から叫びを引っ張り出したの、大変偉かったです。
 ぶっちゃけ奏太以外に無理だろ、このコミュニケーション難易度に付き合うの…。

 タイマンでガッチリ幼馴染と組み合うルートに入った奏太が、気にかけていた楽翔の想い。
 ここは既に面倒くさい所を乗り越えたお兄さんたちが、しっかり向き合い吐き出させていて、大変良かった。
 masaさんの喉の良さもあって、楽翔だけがワントップで独走してしまってる感じを是正する上でも、バズに取り残され孤独を感じ、それを素直に吐き出して受け入れれられる過程は、必要だし大事だったと思う。
 エースの弱さをしっかり受け止められえるくらい、ほまれ兄さんと一澄くんが頼りがい育てていたのも、ここまでの話がどういう果実を付けたか確認できて良かった。
 こういうのは話数積んだ醍醐味で、とても嬉しい。

 五人一緒に、横浜で一番高い場所まで運んでくれる観覧車に乗り、見下ろす美しい夜景。
 ユニットへの思いを吐露し、新たな展望が開けた楽翔がそこでの景色に着想を得て、ユニットバトルに差し出す”答え”は、大変素晴らしい楽曲とステージとして結実してた。
 クスグリ程度で終わるかなーとも思ってた横浜の景色が、ユニットの現状をしっかり反映して過去と現在と未来を繋ぎ、仲間だけどライバルな自分たちを代弁するステージへと繋がる感じに活かされていたの、本当に良かったな。
 二期のユニットバトルは、イケメン達のクリエーターとしての顔をしっかり掘り下げてくれてるので、かなり好きだぜ。

 

 

 という感じの、JAXX/JAXXユニットバトル後編でした。
 とにかく潤の面倒くささが凄まじいことになってて、動かぬ表情の奥に煮えたぎった感情を溜め込んでいる存在大好き人間として、大変素晴らしかったです。
 過去に拘り狭く深く潜る彼の個性が、必ずしも暗いだけじゃないと描くことで、一見問題なく思える奏太が取りこぼすものを、好対照で切り取れていたと思います。
 前回種をまいた楽翔の陰りにもしっかり踏み込めていて、ユニットが持つ複雑な陰影と共鳴を、魅力的に描けていました。

 かくして新曲に自分たちの”今”を刻み込めたJAXX/JAXX。
 残るは新星の主役ユニット、どう描いてくるか楽しみ!