イマワノキワ

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夢中さ、きみに。:第1話『かわいい人』感想ツイートまとめ

 夢中さ、きみに。 第1話を見る。

 

 

 

 

 

 

 

画像は”夢中さ、きみに。”第1話より引用


 全4話の枠を使い切り、シャープに駆け抜けた傑作”カラオケ行こ!”に引き続き、和山やま原作の短編がアニメに。
 単行本数冊しかなくて1クールアニメでやるのは難しいが、抜群の切れ味を誇るアニメも、色んなアプローチでアニメになる時代で面白い。

 話としては「かわいい」にこだわる変人と縁ができてしまった中学生の、ヘンテコで眩しい青春を心地よくスケッチした感じ。
 前作よりも肩の力がさらに抜け、魅力的な奇人が振りまくオーラ一本で走り抜けようとする、力強いうねりを感じることが出来るスタートだった。

 

 ”カラオケ行こ!”は合唱部員の有り触れた鬱屈とはかけ離れた、サバンナの珍獣めいたカラオケヤクザとの思わぬ出会いが、青春に何をもたらすのかという、普遍的で力強いドラマがとぼけたセンスと噛み合う作品だった。
 全4話を起承転結に綺麗に割り振り、狂児との奇妙な関係を愛しく積み上げていった構成が、作品の背骨として鮮明であり、そこに惹かれて見続けていた部分も多い。
 対して”夢中さ、きみに。”はあんまガッチリした構成がなく、だからこそ奇妙で素敵な日常を軽やかにスケッチしていく、軽妙な自在さが魅力かなと感じた。
 こういう味の強い面白さを出せる作家の物語が、続けてアニメにされるのは面白い現象だなぁ…。

 この世の果てみてーな最悪男子校(その最悪さも可愛い)の、泥に交わらぬ林くんは不思議な蝶のようで、ボンクライモムシどもがうぞうぞしとるクラスからは、やや浮いている。
 その浮きっぷりを遠くに眺めつつ、気づけば「かわいい」引力に引き寄せられて、フラフラ世界の真ん中に据えていってしまっている江間くんが、トボケた可愛さ満載で大変良かった。
 どーも和山先生は「制服に身を包んだ、思春期の青少年」というイデアそれ自体に相当萌えてる気配があり、それが多彩な青春ボンクラ共を魅力的に描ける、火種になってんじゃねぇかなぁ…と思う。
 やっぱ作家の中にある猛然としたフェティシズムこと、お話を加速させるエンジンだわ。

 

 奇癖連発、ちょっかい出しまくってくる林くんが、江間くんに投げかけられた「かわいい」をどう思っているのか。
 岡くんと狂児の間にもあった、他者性というミステリはこっちでも健在で、世界は江間くんの主観で綴られ続け、林くんの考えはさっぱり分からない。
 その不鮮明こそが、江間くんが不思議系クラスメイトに惹かれる引力と、見てる僕らをシンクロさせるかすがいにもなってくれてて、なかなか面白い構図だなぁ、と思う。
 「変なやつ~」と、自分に向けてくる謎の好意に戸惑いつつじーっと見つめている内に、気づけば絆されてしまっているけど、それが悪くないなと思える間合いと呼吸が、心地よく活写されていた。

 ここら辺は流石に小野賢章の芸達者、ダウナーなのに妙に感性が鋭く、ブツブツ文句いってるくせに不思議とアクティブな、語り部江間くんの魅力に牽引もされている。
 学校では髪型バチッと決めて、ちょっと突っ張った感じがあるのに、家ではだらりと前髪を垂らし、年少の妹に優しいところとか、すごくチャーミングだと思う。
 ドヤ顔で前面に可愛さアピール押し付けてくるわけではないが、ぬるりと染み込んでくる魅力をキャラにまとわせるのが巧いお話で、そこ一本で走りきれてしまう短編アニメという形式は、作風に合致した選択でもあるのだろう。

 

 原作に全く触れていないので、この後どういう話数の使い方で話が転がっていくかも解らないが、不思議なパンダの来訪で暖かく爽やかに終わった後、もうちょい二人の時間を見つめたい気持ちにもなった。
 タイトルに刻まれた「夢中さ、きみに。」と思える熱には、ちょーっと二人の関係は低体温な感じではあるのだが、むしろこのじんわり穏やかな繋がりこそが愛しく尊い…みたいな気持ちもあり。
 過剰に心の内を叫びすぎず、ダルく日々を過ごすその足元に、ガッチリ日常を支えてくれる確かな”善さ”があってくれるありがたみみたいのが、色んなお話、色んなキャラで力強いのが、この作者の強みなんかなぁ…などとも感じた。

 心の奥底には全く手が届かないながら、不思議な魅力でクールぶってる少年を自覚なく翻弄し、でも自分を「かわいい」と言ってくれた相手がやぶさかではなさそうな、謎めいて自由な少年。
 男子校ノリにブツブツ文句言いつつ、堂々反旗を翻して浮く腹もかたまんない江間くんの、小さな鬱屈がどこへ流れていくのか。
 ゆったりした空気感を保ったまま、見届けさせてくれるようで嬉しい。
 12話一繋がりが最低単位という、深夜アニメの形式からちょっと外れているところも面白いので、そこひっくるめてどういう読後感になるのか、今から楽しみである。
 こういう形式のアニメ化、もうちょい増えてくんねーかな…。