イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/02/02

蒼穹のファフナーEXODUS:第4話『継承者たち』
新生ファフナーも四話まで来たので日常回! ってことで、尻を強調するカットを挟みつつ、新兵共の世知辛い事情を映すお話でした。
子供を矢面に立たせ、戦争以外の時間を知らない中、何とか平和という文化を維持しようとしている竜宮島。
穏やかなる修羅たちの日常は、まぁこうなるなという重苦しくも爽やかな回でした。

このアニメ、親世代の情が溢れかえって洪水起こしてる所が良いところな訳ですが、今回は三人それぞれの家庭事情を写し、強い決意と重たい涙を見せてきました。
ロボアニメの大人は勝手で子供のことなど考えないゴミクズ人間も多く、ファフナーもまた例外ではなかったりするわけですが、そういうエゴ剥き出し人間とは異なる、当たり前の親子の情をじわっと見せる展開。
細かい表情の見せ方、仕草の映えさせ方が巧く、どうにかして子供を守りたいが守れない無念や、鬼の決断を支える情愛、割り切れない妄執などなど、しっかり感じ取れました。
涙味のケーキが、自分的には一番刺さったなぁ……。

子供世代も、未成熟な蒼い魂の中で戦いと生き死にを受け止め、親の真っ直ぐな眼差しを抱きしめて覚悟を見せていました。
いや、見せないほうが全然良いんだけどさ……世界観とキャラが置かれた状態がそうせざるを得ないというか、『こうあって欲しい』という願望を抱かせつつ安易に適えない所が巧いわけだけどさ……。
島を守る者達も、外の世界に出ていく者達も、両方厳しい戦いとその結果が待ち受けていると思いますが、その思いが無駄にならないような描かれ方をして欲しいと思います。
今回のじわっと情に寄り添う描写を見るだに、そういう願いを踏みにじるアニメではないってのは、再確認できるんだけどね。

ロボットの出撃も敵の襲来もない、出来事としては地味な回ですが、戦いに赴く子どもと、それを見守るしかない大人の情動が心を揺り動かす、ずっしりと重たい回でした。
いや、カノンが相変わらずヒロインポイント稼ぎまくってたり、弓子さんが育児ノイローゼの隙間を腹違いの弟に攻略されてたり、ホッコリポイントもちゃんとあんだけどさ。
そういう息抜きも入れつつ、創作世界に生きている登場人物たちの息遣いを感じさせ、彼らへの愛着を強めてくれる、立派なお話だったと思います。
ファフナー、やっぱ良いアニメだな。

 

・夜ノヤッターマン:第4話『湯けむり露天風呂紀行』
前回上げ調子で引いたし温泉回だし、お気楽ドンチキ旅道中だ! とでも思ったか、下がったガードにディストピアの生々しい現実を叩き込む回。
奥さんの頭に触覚あって時点で『あ、ハッチオマージュだ……』というイヤーな予感がしてたんですが、まぁタツノコアニメだしね、容赦なんてないよね……。
希望を踏みにじられても、差し伸べた手を拒絶されても、笑顔の仮面を被る九歳児の悲壮なヒーローっぷりが頼もしいやら、哀しいやらでした。

今回やってることは序盤のインチキ商売から始まって、正義のヤッターマンドロンボー一味がコミカルに負け、情けなく自転車漕いで帰るるという、ヤッターマンの様式美なわけです。
オールドファンとしたら過去作へのリスペクトを込めてやり切ってくれるのは嬉しいし、本来なら安心感と笑いを提供してくれるはずの一連の流れ。
しかし善悪逆転したこの世界においては、この様式美というのも綺麗に逆転しており、ワハハと笑ってハイオシマイという存在から、『いやそれおかしいだろ、どうにかならんのかマジで!』と言いたくなる理不尽に姿を変えております。
なまじオマージュとして必要なことを完全にやり切っている分、逆転してしまった世界の歪さ、ドロンボー一味の無力さ、ヤッターマン達の強大さを喉元に突きつけられる展開であり、巧い構成だなと感じました。
ほんとなー、キコキコ逃げ帰ってる時の無念さと苦さが尋常じゃなくてなぁ……。


今回はヤッターキングダムの圧政の中で、なんとか生き延びている『普通の人』が主役の話でした。
身重の不安な状況で夫を連れ去られても『バンザーイ、バンザーイ』と喜び、自身と妻子の未来の為にヒーローを売り払い、差し伸べられた手を跳ね除けて真っ暗な日常に帰還しなければいけない、『普通の人』たち。
彼らが背負っている業苦は、見事な無様さで僕らの胸に突き刺さるよう、丁寧に描写されてました。
それに対し、『反転した悪≒ヒーロー』であるドロンボー一味は何も出来ないまま、お話は終わります。
ドロンボー一味に付いて行く≒普通の人でなくなる』選択をした元『普通の人』たるガッちゃんアイちゃんも、無論何も出来ない。

非常に重たいこの展開は、主人公たるドロンボー一味の身の丈と、それを遥かに超える敵の強大さを皮膚感覚で解らせる、ヘビーなブロウでした。
レパードちゃんが喝破したようにヤッターキングダムは地獄であり、地獄を受け入れて悲惨な生を選ぶ『普通の人』を、簡単に救うことは出来ない。
敵幹部の力は圧倒的に強大で、対人戦でも対メカ戦でも、いい所なく負けてしまう。
それが、『ヤッターマンにデコピンしてやる!』と勇ましく立ち上がった、ドロンボー一味の現状なわけです。

その上で、レパードちゃんは自分を拒絶し『普通の人』として生き延びることを選んだミッちゃんを恨まず、涙を隠して笑う。
ドロンボー一味の身の丈では、それが精一杯出来る限界の『ヒーロー』らしさなのであり、しかしその無意味な強がりを見せなければ、この地獄の中で『ヒーロー』足り続けることは出来ない。
コミカルな様式美を再演しつつも、ドロンボー一味がどれだけギリギリのラインで『ヒーロー』しているかを見せた、見事な線引の回だったと思います。

これから先、ドロンボー一味が世界を変革していく力強い『ヒーロー』たる側面を見せていくのか、地獄の中で己の無力さを噛み殺していく展開になるのか、僕には全然分かりません。
今回の重たい話があることで、明暗浮沈どちらに動くにしても、ドロンボー一味が歩いて行く物語の背筋を正す基準が生まれたと、今回見終わって思いました。
地獄を歩く道化師たちが、世界を正す日は来るのか。
期待して見守りたいと思います。

 

・少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR 50-:第17話『僕は君のアイドルだから』
少年ハリウッドの個別回セカンドステージ、二番目は運気上昇担当の番でした。
初代トミーに引っ張られる形で素を出た二代目トミーの、困惑と成長がよく見える、見通しのいいお話。
トミー個人の成長と同時に、少年ハリウッドというグループ全体の成長も、ちゃんと段取り分で見せてくれるので、このアニメは満腹感が違うなやっぱ。

トミーは第一回目の個別会も初代絡みであり、その時は背中に憧れ、背中越しに夢の残骸を覗き見てショックを受け、それでも走り続ける決意を見せたお話でした。
今回はゴリ押しの抜擢とはいえチャンスを掴み、初代トミーとはまた別の目標を見つけ、まがりなりとも横に並ぶ形で話を終えており、1クール分の成長がクリアに見える構図。
同じテーマを反復した上で、一回目とは別の答を出すことで、トミーの成長だけではなく、作品全体として取り上げたテーマをどう見ているのか、立体的に示せるているのがとても良い。

『永遠にアイドル』という初代が諦めた夢を、二代目は大真面目に追いかける決意表明を今回トミーがしたわけですが、それはシャチョウが狙っているものでもあります。
前回カケルが見せた決意も合わせると、二期の個別回は少年ハリウッド各員が、自分なりの『永遠にアイドル』を見つけていく展開にするのかな、と思います。
そういう大テーマは共通させつつ、取り上げるトピックやその切り口、語り口をガラッと変えてくる所が、少ハリの良いところだと思っておるわけですが。

今回で言えば、実先輩に向かって『永遠にアイドル』であり続けると宣言したトミーはしかし、初代トミーがいればこそその夢を追いかける事が出来、それを信じることで『永遠にアイドル』という夢を一度諦めた実もまた、トミーに取ってのアイドルを続けることが出来るという対応関係は、何かを否定するわけではない豊かさに満ちていて、とても好きな視点でした。
『夢を見続けるもの/夢を諦めたもの』という対立項は、後者を負け犬に描いて終わってしまいがちなわけですが、後者が前者をもり立てることもあれば、前者が後者を支えにしていることもある。
大人だって夢を見続けているし、形を変えたとしてもその輝きは消えない。
2つの一見矛盾する立場が実は相補的であることの豊かさと魅力を、ただの題目ではなく描写として活かしている作りは、非常に少ハリっぽい魅力だと思うわけです。

自分がいなくなっても何とか回ってしまう舞台、持ち歌をキラが歌ってしまうステージを見るシーンも、衝撃と頼もしさ、外側から見た自分たちの魅力と、色んな感情が一箇所に詰まった、密度の濃いシーン。
あれを見てポジティブな方向に吹っ切れる前向きさは、トミーの大きな魅力だと思います。
いや、このアニメの子らみんな素直で真っ直ぐな子ばっかだけどさ、トミーは特に素直だよねっていうね。


トミーが一人欠けても、故郷である少年ハリウッドは平常運行。
これはただ男子校ノリのシーンを演出して俺らをホッコリさせるだけではなく、平常運行できる対応力を、彼らはしっかりと手に入れてるという描写でもあります。
相変わらず部室ノリの描き方がびっくりするぐらい巧くて、『アイツラがキャッキャしてる映像だけ、2時間ほどくれないかな』と思わせるパワーが有る。
今回トミーが見せた成長は彼を取り巻く日常があってこその飛躍なわけで、足場となる普段の描写が魅力的だと、特別な瞬間も輝くのが強いわな。

サブの描写としてはキラのプロ根性がやっぱり目立っていて、社会的認知度を挙げ、露出も増えてきたプロアイドル集団『少年ハリウッド』を考えると、非常に頼もしい。
群像劇は違っている人々が、同じ目標を目指し集団になることが面白いわけで、キラの安易に馴れ合わない個性は魅力的です。
個別回のターンが来ているので、キラ回むっちゃ楽しみだなぁ。

というわけで、トミーの成長と新たなビジョンを見せる回として、とてもまとまった良い仕上がりでした。
自分の中の課題を克服したと思ったら、また別の課題を発見してさらに成長し、どんどん大きくなりながら前進していくという少ハリの終わらない成長物語を、強く確認出来るいいエピソードだったと思います。
二期の個別回もみな素晴らしい切れ味で、これに続く三人の話がどうなるのか、今からワクワクしますね。