イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/05/08

放課後のプレアデス:第5話『帽子と氷とお姫様』
きっと何者でもない少女たちが、自己を確立するための一歩を宇宙遊泳していくアニメ、五話目はいつきちゃんメイン。
お姫様イメージから一歩踏み出し、幼いころに抱いていたわんぱく王子に立ち戻るというストレートな青春譚を、土星のリングへの強い拘りで彩る素敵なSFでした。
土星のリングに女子中学生を放り込むとどういう変化が起きるかを、各種研究機関に手伝ってもらいシミューレーションするアニメ、放課後のプレアデス

放課後のプレアデスは宇宙人を妖精にしたフェアリーテイルであり、同時に何者でもないがゆえに何者にもなれる、可塑性の高い青春期の少女を主役にした、アドゥレ・サンスの物語でもあります。
なので、前回同様今回も、幼いころの小さなつまづきが人格の、そして人生の進む道を規定してしまい、そこからなかなか抜け出せない不自由さが、重要なテーマとして据えられている。
それは僕達にも馴染みの深い、青春の蹉跌です。
そういうオーソドックスでありふれていて、何よりも大事なテーマをしっかりと捉え、真っ直ぐに表現していることが、このアニメの持っている何よりの強さだと僕は思っています。

そして、その強い骨格に合うよう、キャラクターも必要な変化を加えられている。
『彼女はきっと○○だ』と名指ししてしまえば逃げていく、不安定な自我イメージとの追いかけっこがお話の根底にあるので、キャラクターは類型的な記号を巧く使いつつも、そこから一歩外したツイストがかかっているわけです。。

幼く天真に見えるすばるは星に関してはオタク気質で、自己評価が低い。
ツンツンしているあおいはその実ウェットな乙女体質で、ちょっと周りが見えない時がある。
そして前回、一話○○使って、元気印のように見えて天才、覚めているよで誰よりも未知に飢えているひかるを描写したことからも、キャラクターが持っている人格は、第一印象からずれた所に足場があるよう、共通した作り方をされています。
(ななこちゃんに関しては、ミステリアスな第一印象からまだ踏み込んでいないので、個別回が楽しみです)


今回主役を張ったいつきも、クラス満場一致でお姫様役に選ばれる、『お姫様』な印象を与えておきながら、内実は腕白お転婆負けず嫌い。
その上で、本来の自分を秘めているのにはひかる同様幼年期に理由があります。
いつきの場合は幼い万能感の喪失と、その結果としての周囲へのダメージが、額と心の傷となって残った結果、周囲に望まれるお姫様に自分を押し込めた、という経緯があります。
心に掛かった鍵、不必要な形での成熟を幼い日に立ち戻ることで解体し、より善い態度で自己に向かい合うという筋立ては、やはりひかると共通する部分でしょう。
そこに肉親が深く関わっているのは、作品全体の統一されたトーンでもあるし、青春期の世界を考えた時、どれだけ家族という枠が重要かを加味すれば、当然とも言えますね。
人格的な成長が家族の和解と繋がっているのも、お話が落着した感じを強く与え、満足感を高めるのに寄与している、いいエンドシーンです。

今回はついに木星まで行動半径を広げ、遮るものの何も無い宇宙空間での飛行、ワンダーに満ちた木星リングの描写が、とても心地良かったです。
空を飛ぶ行為、宇宙という空間をただただ気持ち良く描くのは、一種童心に帰る無邪気な喜びを映像の中に閉じ込める行為であって、この亜に目を見るとき視聴者は、とても幼い快楽に立ち戻っているように思います。
この過去への時間旅行は、同時にキャラクターが青春期の自我を是正する旅路でもあって、このベクトルがシンクロしていることで、物語とキャラクターへの感情移入がスムーズになっているようにも思います。
今回で言えば、『帽子を掴まえる』というモチーフを繰り返し見せることで、彼女の欲求と抑圧、成長と変化がスムーズに受け取れる形に仕上がっていたのは、なかなか巧妙な作りだと感じました。

木星のリングの中で無邪気に、気持ち良く飛びまくることでいつきはお転婆な自分を思い出すわけですが、その運動は視聴者の心のなかでも起こっている。
それを可能にしているのは、やはりとにかく気持ちよさそうな飛行シーンと、強い憧れを感じる宇宙の描写なわけです。
作品を好きになる根本が映像体験の内部にあるのは、強いアニメだなと思います。


『お姫様』と『王子様』の役割交換が今回話しの軸になっているわけですが、あんまりフェミニズム的な印象は受けず、あくまでいつき個人の欲求にまつわる話、という印象を受けました。
ジェンダー役割はあくまで社会的立場と関係して生まれるものであり、中学1年生という子供と大人の中間地点にあり、一般人の目に触れることのない魔女として世界を守っている彼女たちには、あまり関係のない要素なのだ、ということかもしれません。
コスプレ部のメンバーも、皆女性(+無性の宇宙人)だしね。

そういう意味ではみなとくんは世界唯一の男性として特異な存在なんでしょうが、彼が『男の子』であるのはいつきでもあおいでもななく、すばるに対峙した時。
しかもすばるは明確に幼い存在として描かれていて、その幼い無垢さ故にいつきやひかるの幼年期を再獲得させる触媒の仕事ができているわけです。
登場人物で唯一『王子様』と触れ合う『お姫様』は、まだ性的に成熟していない、というかこの出会いを契機にして成熟していく存在と言えます。
どちらにしても、このアニメは性選択の前風景を時間設定して描かれているわけで、今回の役割交代もまた(背景に『お姫様』と『王子様』の社会的イメージを置いて描写されているとはいえ)、女の子が『お姫様』であることを拒絶し『王子様』であることを選んだというよりは、いつきが『王子様』に代表される積極的な人格を肯定したお話として受け取った方が、より的確な読みかな、などと考えました。
それは『お姫様』であることに憧れ続けるあおいについても、また同様なのでしょう。

小さな少女が大きな宇宙で手に入れた、小さな、そして大事な一歩の物語として、とても綺麗なお話でした。
放課後のプレアデスはやっぱりとても清潔で素直で、貴重なお話だと僕は感じています。
そして清潔で素直で貴重な物語を、僕はとても好きなのです。
来週も楽しみですね。


アイカツ!:第132話『灼熱のハラペーニョ!』
新キャラのブースターも兼ねて始まったカップル……ユニット編、第2弾はひな珠璃をくっつける回でした。
前回アイカツ!では新顔な柿原優子さんが思い切りアクセルを踏み、それに当てられたのか、ナツコ先生が全力で少女漫画しにきたお話。
もうメタファーというのも憚られる印象操作が炸裂しまくり、大あばれ天童な展開でした。

話の筋としては『残念なイケメン女子珠璃ちゃんが持て余した情熱を、昔なじみ嫁さん気取りひなきちゃんが柔らかく受け止め、無事ユニット結成』というもの。
珠璃ちゃんの突飛な発想力と人格が持ってる魅力、そして近寄りがたさを笑いとともに強調し、それを乗り越えるひなきちゃんにパートナーの資格アリと見せる描写は、分かりやすくてよかった。
珠璃ちゃんの天才性を、『チョコがけポテト』というアイテムを軸に飲ませる手腕とか、ただレズレズしてるだけじゃないのよ今回。

いや、むっちゃレズレズしてたけどさ。
レッスンのシーンで押し倒す必要ある? とか、鼻キスする必要ある? とか、ユニット結成に刺激受けるのいいけどダンディヴァがホテルに移る所写す必要ある? とか、やりたかっただけなオーラムンムンのシーン大量生産であり、まことに素晴らしい。
珠璃ちゃんの闘牛士妄想は『ラテン系で攻め攻めな珠璃ちゃんが、実は受け止められ翻弄されたい姫願望を持っていること』『それが出来るのがひなきだけであること』『闘牛は最終的には死を以って終わること』などが透けて見える、フロイト先生に判断させたら色々問題アリそうなシーンでしたね。


今回珠璃回に見えるわけですし、実際目立ってたわけですけども、内実としてはひなきを掘り下げる回だった気がします。
常に『普通』であることに悩んでいる彼女ですが、その資質は一般的なアイドル、というかスターに向いていません。
天才発言を乱発し周囲から浮き上がる珠璃ちゃんの発言を翻訳し、スムーズに受け入れさせる今回の描写は、逆に言えば飛び抜けた個性でなにか新しいものを生み出す才覚が、ひなきには薄いことが見て取れる。
ここら辺は、第129話『トークの花道』でも強調されている、ひなきの特質です。
天才の発想力を一般向けに噛み砕き、共通性のある言語に変換する能力は素晴らしい価値を持っていますが、それはNO2向きの資質であり、自分がトップになって輝くアイドルの才能とは、やはり異なる。

無論アイカツは様々な資質を許容する豊かな世界観を持っており、例えば有栖川おとめは凡人ながら自身の強みを磨き上げ、周囲の凡人を少し高い位置から引っ張り上げることでクイーンの地位を存分に発揮していました。
『神崎美月や星宮いちごのような、圧倒的なカリスマで先頭を走り続けるアイドルだけが価値を持つわけではない』というのは、先行する二人のクイーンとは全く別のキャラクターを配置したあかりジェネレーション全体のテーマとも呼応する部分であり、興味深い所です。
今回描写された『発想の産婆役』としてのひなきちゃんの資質、才能、能力は確実に有効だし、善なるものだと思うので、それと『アイドル』という存在をどう関係させて、どう価値を描写していくのか。
今回珠璃と組んだことが、その一歩目になるとイイなぁと思っています。

『なんでひなきちゃんは、自分が珠璃に選ばれると思ってなかったのか』ということを考えると、青い鳥理論で近くにいるものを見失っていたという理由とは別に、ひなきちゃんの根深い部分にある自己評価の低さが透けて見える気がします。
幼い頃から『誰かが選ばれる』芸能界に身をおいて、『選ばれない自分』をいやというほど見せられてきたひなきちゃんにとって、『誰かに選ばれること』を信じ切れない気持ちが、やっぱどっかにあるんじゃないかなぁ。
同時に前々回の『公開プロポーズ』だの今回の『一目惚れみたいな』だの、ユニットを何かと恋愛に例えるひなきの憧れ、変化に対する強い渇望も、ユニット辺始まってから強調されている気がする。
今回珠璃に選ばれたことで、素敵な彼女が自信を持つ切っ掛けになってくれれば、とても良いなと思います。
……その尺が回されるかどうかは、バンダイ様にかかってんだけどさ。


メインのカップルは収まる所に収まったわけですが、負け犬軍団ことあかり&まどかもジワジワ距離を詰めてきました。
先輩三人に物怖じせず混じり、厄介な天才と花のない引き立て役をそれとなくくっ付け、主役の隣をかっさらいに行くまどかちゃんの根性の太さは、マジすげぇ。
あの子カメラに映るシーン全てであざといポーズ決めてて、今までのアイカツ! にはあまりいなかったタイプだなぁと再確認しました。
ラストカットで恋心入っちゃった描写も入れて、次回へのヒキも完璧であります。

あと、今までは一般論の薄い殻を被ることを一応忘れなかった学園長が、ついにユニットの素晴らしさを個人的体験と絡めて喋りだして、我慢できなさすぎて面白かった。
あの人星宮りんご好きすぎ忘れられなさすぎ、マジで。
ユニット編が続く限り、指導にかこつけた相方自慢は続くと思うので、りんごさんにズブズブな学園長好きとしては有り難い限りです。

凛ちゃん重点で展開してきた三年目後半ですが、次回はようやくまどかちゃんのターン。
彼女を構築する大事な要素である『天羽さんの孫』という七光り要素を、どう料理するのか。
色々蒔かれたあかりちゃんとの交流の種を、どう開花させるのか。
ユニット編に入ってからブレーキを踏む気が感じられない、ラディカル・フェミニズム旋風はまた巻き起こるのか。
色々楽しみですね。