イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/06/06

アイカツ!:第136話『その名も、あまふわ☆なでしこ』
神戸からやってきた主人公体質、栗栖ここねちゃん強化月間の第二週は、本筋の大きな流れであるユニットにブースターを積む展開。
ここねと同じストレンジアである京都の美勇伝、藤原みやびちゃんも三ヶ月ぶりにスターライトに帰ってきて、関西コンビがイチャイチャしくさる話でした。
ここね単体のエピソードとしては前回あらかたやってしまった感もあるので、生真面目みやびと天然ここねの落差を梃子に話を回しつつ、ユニット話で本筋に燃料を足すのはいい流れですね。
あ、先週京都から帰ってきて即神戸に行って、今週即東京に帰ってくるユウちゃんの都合のいい女(脚本的な意味で)っぷりはほんとスゴいやね。


アイカツ! はアイドルの話なので、各キャラクターがアイドルとしてどんな強みを持っているか、説得力を持って見せることは大事です。
メインで言えば、あかりちゃんは天才的な直感力と泥臭い地道な努力、スミレちゃんは天性の美貌、ひなきちゃんは地頭の良さとそれを活かした説明能力となります。
前回の話がここねというキャラクターの人格的な部分に迫った話だったのに対し、今回はアイドルとしての強みを説明する側面があります。

今回説明されたここねの強さは、一つにはみやびちゃんが惚れ込んだ、物事の真ん中になる力です。
自分がやりたいようにやっていることが、結果的に他人を巻き込んでいくカリスマ性は、アイドルのみならず人の真ん中に立つためには、必要で重要な力です。
世界の中心という野望に比して、実力が少し足らないところも引っ括めて、主人公力の高い強さだなと思います。

もう一つは地方アイドルという特異な立場がもたらす、泥臭く地道な営業活動。
スターライトという強烈な後ろ盾がない交換留学生だからこそ、アイドル自身が体当たりで道を切り開いていく積極性が必要になる。
ここら辺は、前回描写されたここねの井の中の蛙っぷりと呼応する所で、今回の地回り描写はあの空回りを接地させ、弱みを強みに変える意味を持っているわけです。


こうしてアイドルとして飛躍する事前準備を整える以外にも、今回のお話には『ユニットの掘り下げ』という大事な狙いがあります。
これはあまふわ☆なでしこだけの狙いではなく、これまで準備してきたユニット編という大きな話しの流れの中の一側面でもあり、他のユニットにも強く影響する切り口になります。
あまふわ☆なでしこがどう魅力的なユニットで、二人の間にはどういう絆があるのかを見せることで、ユニットという属性を共有している他のキャラクターにも良い影響があるし、ユニット編の総決算とも言えるユニットカップへの期待を強める効果もある。
なので、『ユニットの掘り下げ』を丁寧にやることは、今後のお話にも影響してくるわけです。

三ヶ月前に自分の物語を終えているみやびは、ある意味人格的な成長を既に終えていて、完成度の高いキャラクターと言えます。
元々落ち着きのあるキャラなので、『感性のまま走るここねをみやびが受け止める』という関係は、安定感があります。
無論それだけだと起伏にかけるので、みやびの恥ずかしがり屋な側面を強調するため、レトロクローバーの可愛い衣装をスパイスに持ってきて波風を起こす流れは、なかなか良かったです。
堅物の凛とした女の子に可愛い服を着せ、みやびちゃんかわいい祭りを開催したくなるのは人類共通の欲求なので、ここねの気持ちはよく分かる。

可愛い衣装を着せたいここねと、自分には似合わないと拒絶するみやびで小さな対立が生まれ、それを解決しようとレギュラー陣が走り回ることで、ここねがみやびに、みやびがここねに惹かれる理由を掘り下げていくのが、Bパートの流れになります。
シーンを分割して掘り下げられたのは、お互いがお互いに無い部分、ぶつかり合う理由にもなった差異こそが、相手を認める長所でもあるという、バランスの取れた結論でした。
アイドル登山という同じ時間、同じ場所を共有した上で、お互いの異なる魅力に気づいていたという見せ方は、ちょっと運命的な匂いを漂わせていてとってもグッドでした。

これまでのユニットの描き方を見ると、スミレちゃんが持ち前の魅力で凛ちゃんを惹きつけたダンディヴァ、天才すぎる珠璃の世界を唯一ひなきが共有したハラペーニョと、同じ方向性を向いているユニットが多いと感じます。
お互い顔を寄せ合い同じ方向を見る関係は濃厚で良いんですが、どうしてもアモラルな空気が漂う。
『異なっているが故に、一緒になれる』という、スターライトのユニットには無い関係性を見せたあまふわ☆なでしこは、スターライトの湿度の高いユニットたちとはまた違った、風通しの良い間柄を見せてくれました。
交換留学生というアウトサイダーな立場を活かし、ユニット編に新しい風を起こしたと言えるでしょう。

(Skipsは……まだ一歩踏み込みが足らない感じがして、特にあかりちゃんの内面にもう少し切り込む描写が入ると、どのように世界を共有しているのか見えてくる気がします。
まどかちゃんはベタ惚れなんだけどな……やっぱスターライト湿度高いよ!
そこが良いんだけどさ、ウン。)


スターライトのアイドルたちとは違う立場、違う魅力、違う繋がり方を持つあまふわ☆なでしこが良く描写された回だったと思います。
ここねの物語第二章としても、第四のユニット紹介編としても、しっかりとした構成だったように感じました。
しかし久々に見るみやびちゃんは爽やかで前向きで、やっぱ好きなキャラだなぁ。


俺物語!!:第8話『オレとトモダチ』
冷静さと熱血さが幼馴染なアニメ、今回はクール担当男子、砂川エピソードの後編。
普段は持ち前の冷静さで、暴走気味な猛男を御している砂川が、思う存分弱みを見せてヒロイン力を稼ぐお話でした。
お話をコントロールする仕事を担当する砂川は、ともすれば完璧な人間になりがちな立場だと思います。
肉親の病という納得できる弱さをしっかり描写し、それを受け止め分かち合う猛男との熱い友情も描いて、砂川の持つ『クールなイケメン』以上の魅力を、120%引き出したエピソードになりました。

元々このアニメ、恋愛一本に思いつめていくというよりは、恋を知ったことで高校生である猛男が幅広い価値観に目覚め、人間的に成長していくお話という側面が強いです。
ファーストエピソードからして、主人公が恋人を手に入れる話なのに、半分くらいは砂川との友情に力点をおき構築されています。
なので、恋と友情はけして排他的なものではなく、お互いがお互いを補い、高め合う豊かな関係性にあるというのが、このアニメの価値観なわけです。

この綺麗事を全うするために、砂川は徹底的に猛男の後押しをするし、それを受けて猛夫も凛子とのデートに赴くし、『親友の助けになりたい』と告白された凛子はそれを受け入れる。
一見お話を軟着陸させるための都合のいい選択にも見えるのですが、そこに込められている柔らかい感情の描写が巧いので、彼らの決断は素直に飲み込めます。
主人公と恋人と親友の三角形は、お互いを排斥するのではなく、お互いを思いやる繋がり方で構築されていると、理屈ではなく気持ちで感じ取れるように、このアニメは表現されている。
それがあってこそ、今回の気持ちの重なり合いが素直に受け止められるのだと、僕は思います。


しかしお話が収まる形に収まりきれないのが人間の気持ちでもあって、そこを切り捨てないのもこのアニメの繊細なところです。
当の本人に後押しされていても、砂川のことが気になってデートを楽しみきれない猛男は、デート中幾度も『砂川が』『砂川が』と言い続ける。
いかに砂川のことを、砂川を案じる猛男のことを愛していても、結果として『親友に負けた恋人』である凛子には割り切れないものが残り、だからこそ猛男の背中を見送った後、ひっそりと涙を流す。
道理の枠内に収まりきらない気持ちがあるからこそ、本当に納得の行く結末にたどり着くエネルギーも生まれるわけで、このように矛盾する気持ちを切り捨てず、カメラにしっかり収める演出はとても良いと思います。

今回の主役である砂川も、笑顔で親友を送り出す『完璧なイケメン』であると同時に、倒れた原因が自分にあると己を攻める弱さを持つ、『只の人間』でもあると、説得力を持って描写されています。
約束を破る形で駆けつけた猛男を責めるでもなく、静かに受け入れる砂川の姿はとても頼りなく、弱々しく見える。
あのシーンはまさに信長くんの独壇場というべき見事な芝居でして、これまでもエピソードで猛男を支え導いてきた砂川が、一人の人間として当然持っている脆さや弱さが浮き彫りになる、重要な見せ場でもあります。
あのギリギリ感がしっかり駆けているから、主人公猛男の決断が弱いものを守る正しい選択だったと納得できるし、二人がお互いを補い合う強い絆をもっているのだと見て取れる。
お話の中での役割分担がよく出来ていればこそ、普段のそれとは真逆の立場に入れ替わるシーンはダイナミズムとカタルシスがあって、見ていて気持ちが良いですね。


今回見せたのは、ともすれば綺麗事として『判ってはいるけど、実際は出来ないよね』という受け取られ方をしがちな、すべてが上手く収まるような矛盾の解決です。
それが上滑りせず視聴者の気持ちに届くのは、やはり綺麗事に収まりきれない感情のうねり、人間なら当然持っている弱さを繊細に、丁寧に描写する演出の手腕が、大事な仕事をしているからだと思います。
オールド・スクールな少女マンガ演出を大胆に取り入れ、分かりやすいメタファーを多用する画面作りは、キャラクターの心情に視聴者の気持ちをシンクロさせ、作品世界に没入させる仕事を、十二分に果たしているわけです。

その上で人間の持つ弱さに過剰に逃げない、正しいことを正しく完遂する強さが揺るがないことも、作品への信頼感を強化している。
『猛男なら、この悩ましい状態でも、みんなが納得できる結論に持って行ってくれるはずだ』
『凛子なら、親友の弱さを守りたいという猛男の気持ちを尊重してくれるはずだ』
そういう期待を登場人物にかけれるのは、お話として幸せなことだし、とても強いことだとも思います。

そういう気持ちを絵空事の架空人物に抱くためには、そいつらのことが好きにならなければいけないわけで、この作品もう一つの武器である切れ味鋭い笑いは、そこでも仕事をしている。
今回で言えば変幻自在に内心を代弁するTシャツの文字とか、お医者さんのキラキラ光るゲロ芸だとか、細かいクスグリがやはり巧いアニメ。
今回のお話はやや重たい展開だったのですが、ムードを壊さず、シリアスな空気をうまく抜くタイミングでコメディを入れてくれたのは、見ている側としては気持ちが楽になる演出で、とてもありがたかったです。


前回と合わせて、二人目のヒロイン砂川が持っている弱さや脆さ、そして強さと優しさがドシンと胸に突き刺さる、いい話でした。
こうしてキャラクターを多角的に見せてくれると、よりそのキャラクターと彼らがいる作品世界が好きになっていくので、個別エピソードは大事だなぁとつくづく思います。
しっかり感情を盛り上げ、叙情性のある終わり方をしてくれるのも、安心感があって良い。
やっぱ俺物語!! のアニメ化、文句なく大成功やね。