槍使いの少年と妖怪のドタバタ珍道中、出立の第八話は空の脅威と少女の決意のお話。
飛行するジャンボジェットでの妖怪折伏ということで、クライシス・パニックの要素も含んだ常時ピンチなエピソードでした。
勇ちゃんと厚沢さんのトラウマ克服、残虐非道な衾（高木さんがベストマッチでした）との対決、そして主軸となる潮の英雄的決断と、盛り込まなきゃいけない要素が沢山ある中で、スマートな選球眼が冴えてスッキリした構成になっていました。
今回いろんな要素がお話に混じっているのですが、ゲストキャラクターの良い仕上がりが混乱しそうな状況を支えています。
父を失ったことで傷を受けた勇ちゃんが、潮と偶然の出会いを果たし、その有志に奮起して仇に一発入れるという、ストレートな挫折と克服のお話には、やっぱりパワーがある。
やること多いのでヒロインに使える時間はそんなに多くないはずなんですが、初対面で手を握るシーンや、自分も戦うと決意するシーンに説得力があって、シナリオヒロインとして魅力的だったなぁ。
勇ちゃんが心をねじ曲げる理由になった、衾の描写がちゃんと恐ろしいのが効いてるんだろうな。
セカンドヒロインである厚沢さんは、勇ちゃんとのこじれた関係を解消しつつ、空自パイロットで大人という立場を活かし、事件解決のために動くサブ主役でもある。
異常事態を誰よりも早く察し、腹に穴ブチ開けられつつも操縦をやり切る根性は、一般人の気概を見せつけるいい動きでした。
勇ちゃんと潮の共同作業もそうなんだけど、ただ突っ立ってるだけのヒロイン用意しないことが、キャラにイライラしない大事な要因なんだね。
そして彼らをまっすぐに受け止める潮と、コメディリリーフから状況解説役、メンターにメイン戦闘担当までこなすPC3の鑑とらちゃん。
特にとらちゃんのトス上げは冴えまくっていて、早い段階から火炎弱点を教えてラストの展開を予期させたり、『戦ってたら偶然くっついてきた』体で勇ちゃんと潮のモチベアップアイテム『お父さんの写真』を見せたり、お話の盛り上がりを支えていました。
相変わらず潮とのツンデレアーツは黒帯レベルだしよー……『終わったと思ってんのか潮？』とか、ランディングギアの代わりになるために煽ってもらってる所とか、うしとらのツンデレ合戦はやっぱ最高やな。
動きの少ない序盤をお道化ることで保たせたり、クライシス・パニックには絶対必要な『危機を脱したと思ったら、最後にして最大のピンチが！！』というシーンをかっこ良く決めたり、メインヒロインを潮に譲りつつ見せ場を作る、見事な動きだ。
イキイキとしたキャラの動きが映えるキャンバスが、複数ジャンルにまたがるストーリーライン。
損傷した飛行機を舞台としたクライシスパニックの要素、成層圏の悪魔・衾の襲撃を描いたパニックホラーの要素、傷を追った少女とパイロットと青年の出会いと成長を書いたヒューマンドラマの要素。
どれも効果的にコンパクトに刺してくることで、お互いが引き立つような見せ方になっていました。
まず怪物としての衾の描写が良くて、ケレン味満載の登場シーン、ジャンボジェットを一巻きにする異形、何度切りつけても帰ってくるしぶとさと、恐怖のモンスターとして貫禄十分でした。
コイツが怖いからこそ潮の活躍も、勇ちゃんの決意も、厚沢さんの奮戦も輝いてくるわけで、敵を魅力的に描くことで味方も輝きを増してくるっていう、理想的なシナジーが生まれてる。
ここら辺は戦闘を担当していたとらちゃんのバンプが良かったのもあるね。
そして、空中という極限状態で起こる危機の描き方が良かった。
青い空と緑の衾の対比で異常状況を強調し、上手く行きそうだと思ったら覆される、パニックモノの基本を抑えた展開がとってもグッド。
飛行機内部での一般人のパニックと、それを鎮める描写があれば完璧だったが、今回色々やんなきゃイカンので、泣く泣く切ったんだろうな。
それがなくても衾の脅威と危機的状況、それを打破する人々の力は伝わってきたので、良い構成だったと思います。
『人間は落ちたら死ぬ』という危機的状況を前半強調することで、後半その禁を破って『なんとも特別な状況になったぞ！』というドラマを作るのは、やっぱ最高に盛り上げ巧いわって感じ。
今回最後のトドメを自衛隊が担当していましたが、この世界の国歌組織は『口だけの怪しい情報』では動かないけど、レーダーで確認できるような『確固たる情報』があれば真っ向から化け物に立ち向かう組織だ、という描写でもあります。
現状闇の世界に封じられたバケモノたちと戦うのは潮個人の宿命ですが、餓眠様あたりから事件が大きくなり、個人レベルで背負いきれない規模になってきている中で、面白い解決法だったなと思います。
ここで大きく世間に向けて開いておいたことが後々生きてくる（もしくは後半の展開で活かした）のは、お話の構成要素をただのゲストエピソードで終わらせない、素晴らしい活用法だよなぁ。
常時気を緩ませないピンチの連続と、真っ向勝負のヒューマンドラマ、強大なモンスターの脅威が的確に絡み合った、良いエピソードでした。
潮たちの旅立ち一発目として、これ以上望むべきがないほど充実感のあるお話だったんじゃなかろうか。
来週はかまいたちのエピソードですが、作中最高級の聖人（エル・サント）坂口っつぁんが登場してくれるのか、今からドキドキです。
