イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Go! プリンセスプリキュア:第32話『みなみの許嫁!? 帰ってきたスーパーセレブ!』感想

金持ちなら許嫁! という直線的な発想に寄り、みなみパイセンの憎めないフィアンセがやって来るお話でした。
キミマロさんはイヤミも言うけどみなみパイセンを心から愛していて、内省も反省も出来る立派な人物でした。
そういう人物の愛情をにくからず思いつつも、女達の絆に立ち返る辺りがすっげープリプリだなと思った。
伏された強かなフェミニズムというか、そんな感じだ。

今回はキミマロという分かりやすい壁役がいることで、スマートにみなみの変化、それをもたらしたはるかの意味が見えてくるお話でした。
第12話で出てきたらんこパイセンと同じで、お話を盛り上げつつも根っこは善良で、熱意に溢れ、己を鑑みて謝ることも出来るバランスの良さ。
あくまで壁役であって敵役ではないところに、プリプリらしい配慮みたいなものが見える。

キミマロがあまりに見事に道化を演じたので見えにくいのですが、手の届かないところに君臨する高嶺の花という、キミマロが憧れたみなみは確かに実在していた。
はるかというスーパー庶民と触れ合う(意味深)ことで、上に立ち続けるのではなく地面に降り、手を汚して導いていくやり方を学習したからこそ、今のみなみに為ったわけで。
そういう変化の可能性が、たとえみなみとの直接的交流ではなく自問自答で手に入れたものだとしても、キミマロの前に開かれて終わったのは、なかなか良かったですね。


つーかナツコが『最後に男女の恋愛扱うんだから、真ん中はベタ踏みでいいでしょ~?』と言わんばかりにアクセル踏みぬいて、今回濃厚すぎた。
建前として『変化を恐れず、より近い距離で人に寄り添える存在になる意味』を表してるのは判るのだが、はるはるに諭すシーンの湿度はホントとんでもないことになってた。
男の行為を戦略的にはぐらかす辺りも、恋愛に対するフェミニムズ的みぶりが織り込まれていて、濃いなぁと思いました。
はるかが異常に結婚に拘るのは、学園という檻/禁猟区の中でみなみ先輩とじゃれあう期間が終わってしまうという、モラトリアムな恐怖の裏打ちだと思うけどね。
トワは別世界の住人なので、『女性と女性が結婚することの、何がいけないんですの~』とかラディカルなこと言ってたしな。

淑女的な振る舞いに妄想を抱くキミマロが、ショックに耐えかねて突然失神し、お付の騎士に介護されるという淑女的な振る舞いをしているのは、なかなか面白い捻れ。
訪れた変化を好意的に受け止め、役割を押し付けられるのではなく望む立ち位置を手に入れていくみなみが、『男らしい』存在感を持っていたのとセットで、プリキュアフェミニズム・フィクションだなということを再確認する。
共同作業で百合の花が舞い散ったり、屈強な男の取り出す救急箱にハートマークが付いていたり、言語化されていない意匠レベルの表現でも、今回は一般的性差にプロテストする描写が多かったように思います。
『婚約者』という社会的性制度を扱うときに必要な繊細さとウィットは、『子供だまし』と思われがちな女児アニのほうが成年をターゲットにしたそれよりも充実してるというのは、安心すると同時に不安でもあるなぁ。

男の人との恋愛と結婚制度の準備をするより、自分の人格を豊かにし、戦士の紐帯を結ぶことを重視したいという、みなみのラディカルな意見表明がなされる回でした。
もともと家のことは巧く乗りこなしているというか、社会的要求と個人的欲求のバランスは取れてる子だったので、キャラに逆らわず巧く成長をまとめたなぁという印象。
キミマロはあんまり良い所なかったけど、善人かつ人格者であり報われて欲しいキャラなので、最終決戦でキミマロ軍を率いて颯爽登場してほしいですな。