イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

すべてがFになる-THE PERFECT INSIDER-:第3話『赤い魔法』感想

ゆるふわオサレ日常アニメはもうお終い! 死人が二人も出たんだからね!! という、ゆるふわオサレ日常ミステリアニメ。
死人出てるのに主人公Sが一切うろたえないので、とんでもないことが起きている感じが薄いつーのが、このアニメらしい所だと思う。
もともと遊離感というか、日常から遠い場所にあるお話というムードは漂っていたのだけれども、殺人という非日常が起こり、通信手段が切断されてクローズド・サークルが発生し、より浮世離れした雰囲気が強まる回でしたね。

彩度の高い白で全てが覆い隠された研究所の異界感があればこそ、過去パートの生臭さはよく目立っていた。
13歳の真賀田博士が所長を誘惑するところは、未来の彼女には似合わない肉の臭いというか、作中人物で唯一血が通っている感じがする。
わざわざ構成を変えてまであのシーンを入れているのは、現在の事件の根底に真賀田四季の身体性が関係しているからで、そういう意味で生臭くなってるのはいいことだと思う。

過去でも未来でも、全然顔が見えないまま死んでしまった所長さんはそれでも漂ってくるダメオーラというか、超天才に良いように転がされて切り株になるキャラに相応しい覇気の無さがあって、好きなデザイン。
そらー13歳の木戸ちゃん声にモーションかけられたら、パツイチでコロッと行くわなぁと納得できてしまうというか。
そこら辺は、過去四季博士が巧い塩梅にニンフェットとしての説得力を持って描けているってことだわな。


過去パートの生臭さに比べ、現代パートが夢の中過ぎて、何処に足場を於けば良いのか迷ってしまうのはどうなのか。
死体も全体的に綺麗だしなぁ……そこ生臭くしてもしょうがないというか、したら台無しになるんだろうけど。
思い返してみればあの研究所の事件は閉鎖された空間での異常事態であり、いわばマヨヒガか桃源郷での殺人事件みたいなもんなので、遊離感が出ているのは狙い通りなんだろう。
なんだろうが、フィクションは超越的体験であると同時に日常的体験でもあるわけで、平たく言うと過去パートに比べて未来パートをこっちに引き寄せにくすぎて、見るのが大変。
とは言うものの研究所の異界感は維持しなきゃ話のテンションが切れるので、なかなか難しいところよな。

萌絵くんのウザさというか、頭のネジのハズレ加減は今回もよく演出できていた。
守衛さんとのズレたやり取りとか、犀川先生とのトンチキな会話とかね。
天才すぎて社会に馴染めてない二人の主役の、トンチキな悪戦苦闘と少しの人間味を楽しむ話だと思っておるので、ウザイは褒め言葉か。
いにお絵の泥臭さがドライブしすぎて、研究所関係者が愚鈍にすら見えるのは良いのか、悪いのか、悩ましい。

犀川先生は萌絵ちゃんを弄りつつ、密室の条件設定と現状の説明を担当。
いかにもミステリ的な説明シーンをわざわざ『説明シーン』と明言する犀川先生と、ミステリ的な殺人をミステリのように受け取ってはしゃぐ萌絵の姿は、ジャンル史と文脈の中でねじれているこのアニメらしいシーンだったと思う。
アニメ(というか映像?)でミステリって、ヒントの出し方がなかなか難しいジャンルだと思うけども、今回の提出された問題文が適切かどうかは、今後の見せ方をまたないといけないところですね。

そんな感じで、死体が二つ増えて現場が閉鎖されるお話でした。
こうして事件が転がりだしたわけだけど、それがどう収まるのか、収まるまでをどう見せるのか。
まだまだ楽しそうなすべてがFになる、第三話でした。