イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドルマスターシンデレラガールズ感想 最終回記念外伝 -過去の感想に見る期待と願望- 第6話~第10話

もしくは、灰かぶりノスタルジア

というわけで、思いの外長尺になった振り返り企画、第6話から第10話まで。

第7話で一段落付いて、個別エピに入っていくタイミングですね。タイトルには『期待と展望』ってありますが、話が終わった今からのツッコミとか、混ぜっ返しとかも交えつつ、レッツ・ノスタルジア

 

第6話

今回の話は本田未央が『アイドル辞める!』と言う回であり、次回『やっぱアイドル続ける!』となるべく、その兆しを色々バラ撒く回でもあります。

アニメ感想日記 15/02/17 - イマワノキワ

 とか書いているが、この時の気持ちを正直に書くと『『やっぱアイドル続ける!』と為ってくれないと色々しんどいので、ここいらで一発超信頼できるところを見せておくれよスタッフー!』くらいの感じだった。ネガティブな空気を弄んで、『』付きの『シリアス』で重さを捏造するお話ってのも世の中にはたくさんあるわけで、そういう話じゃなよね? という期待込みの断言だった。結果第7話の見事な取り回しがあるわけで、無用な怯えではあったな。

同じものを準備し、同じ場所に立って『成功』と『失敗』を分けるものがあるのならば、それはやはり受け取る側の心の差なのでしょう。

アニメ感想日記 15/02/17 - イマワノキワ

 序盤最大のイベントである本田未央脱走は心一つで解決したけど、第13話で心一つではどうにもならない新田ぶっ倒れ事件があり、第22話以降は心一つをどうにかしようとしても、どうにもならない島村卯月の心の闇の深さが描かれる。キャラクターたちの成長にあわせて、人生の問題の様々な側面に切り込んでいるのは、このアニメの特徴の一つだと思う。解決するためのロジックと必要な答えが、問題ごとに違うのはフィクションであることに甘えていない感じがして、強い部分だなぁとか思う。

ということは、本田未央の『失敗』を『成功』に変えるためには、自分が『成功』していたのだと気づけば良い、ということになります。 それを気づかせるのが誰かは、第7話を待つことになりますが。

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 第7話だけを見ると本田の目を覚まさせたのはPなんだが、『失敗』が『成功』でもあったと気づくための立ち位置を探す隘路はこの後何度も繰り返されるモチーフ。一番わかり易いのは島村。本田自身もここの迷い路一本で一気に成長するわけではなく、色々迷いつつ、自分の長所を活かして『成功』しつつ進んでいくことになる。15人の物語が同時並列的・段階的に進んでいるのは、シンデレラガールズに特徴的なところだ。

本田未央は、賢さと優しさと脆さを持っている子なんですよ』と画面が囁き続けたように、今回の演出は島村卯月がどれだけ自己評価が低く、それを『頑張る』ことでしか解消できない不器用な心象を捉え続けます。 その不安定さもまた、第1話からずっと描写されてきた、彼女のパーソナリティです

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 この地雷は二期終盤で華麗に連鎖爆発することになる。見返すと、本当に卯月は自己評価が低い。

そして、本田未央と渋谷凛は、表面的には島村卯月を支えているようで、彼女の不安を理解しきれていない。 アイドルに憧れ、同期が全員諦め一人きりになっても諦めきれず、レッスンにレッスンを重ねて、それでもガラスの靴が届かない日々を過ごしてきた島村卯月。 彼女の不安を、『才能のあるド素人』渋谷凛も、『いつも元気なムードメーカー』本田未央も、表面的な繋がりとは裏腹に、理解できてはいないわけです。

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 第6話の段階で見せていたNGの表面性は、夏フェスに白紙宣言、秋フェスという試練を経ても(もしくは経たからこそ)解消されず、公園で行われた本田の贖罪で表面化することになる。『仲良しっ面で絆とやらを深めていっても、個人が抱えている問題点やコンプレックスに他人は簡単には踏み込めないし、それが凄まじくややこしい事態を引き起こしたりもするぜ』というニヒルな視点が透けて見えて、やっぱりこのアニメ根性悪いと思う。根性の悪さに引っ張られすぎず、あくまで軸は夢と正義のお話にしているところが素晴らしいわけだが。

必要以上に膨らんだ夢の風船を、現実という針で破裂させてあげなければいけない。

アニメ感想日記 15/02/17 - イマワノキワ

 第6話という比較的早い段階で、『夢』という金科玉条が持っている危うさを軸に据え、それに対する対処を持ってきたのは、お話がダダアマにならない上で良い構成だと思う。このパンチがよく刺さるように第5話(と第6話前半)までを比較的都合よく構成してあるので、視聴者としても不意打ちであり、記憶にも残る。

ここで風船を一度破裂させた上で、『高望みしなければ復活できない問題』としてCP復活を二期全体のテーマに持ってくるのは、単純なニヒリズムではない、『夢』を扱う上で大事なことをしっかりやっている証拠。

それはつまり『このお話に出てくる人間は、苦しみも哀しみもしない、血も涙も流さないお人形じゃないよ』という製作者からの表明だと、僕は受け取りました。

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 『縦』に長い話を展開した本田と島村が一番わかり易いけど、『天使もお人形も、この話にはいねぇ』ってのはシリーズ全体で気を配っていたところ。女の子のハラワタを茶化してネタにすることもなく、無いものとして逃げるでもなく、お話しの魅力的な苦味として描いたことは、お話を信頼するのに必要な誠実さとして大事だった気がします。

ラブライカが先取りした『成功』に、血塗れの少女達(と目付きの悪い不器用な青年)はどう辿り着くのか。

アニメ感想日記 15/02/17 - イマワノキワ

 辿り着くことそれ自体は前提だ。というスタンスを表に出したい発言だな、コバヤシくん。

 

 第7話

プロデューサーが前向きになれるきっかけが、彼自身が見出したアイドル、島村卯月の武器『笑顔』であるというのは、一話で印象的だったやり取りを的確に回収しており、趣深いところだと思います。 仲間もいなくなって、先も見えないままレッスン漬けの島村さんにかけた、プロデューサーが見た真実は、巡り巡ってピンチの彼自身を救うわけです。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 だがこの『笑顔』のありがたさこそが罠ッ……! 悪魔的奸智ッッ……!!ホントね、第7話から第23話へのロングパスは最高に綺麗に成功している。

7話までに個別回をもらっている唯一のキャラクターであり、基本的に物分かりよく描かれているプロジェクトメンバーの中でも『言う役』である以上、此処で頭になるのは前川しかいない。

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 前川の『言う役』っぷりは、第24話で島村に『プロ意識ねーなおまえマジ』という、嫌われ役確定ながらお話しの都合の良さを抜くためには、言っておかなきゃいけないセリフを言ってるところからも、最後まで継続する仕事。

前川の発言が遮られないのは、前川が主役の話か、前川が主役の問題解決に直接関わる時になります。

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 具体的に言うと第11話、第16話、第19話。

お話しの展開的な功労者でもあるので、前川は出番に恵まれたキャラだったと思う。しかし後半は前川が担当する都合の悪さというか、現実感をキャラが受け止める足腰ができてくるので、前川のめんどくせー小言も遮られることが減った印象だ。

失敗を預けて身を躱されたらどうしようと怯えるのは、15歳という年齢を考えなくても自然な反応かな、と思います。

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 この怯えは結局第23話でも解消されず、逆に最年少のみりあが第17話で乗り越えて美嘉を抱きしめている。人間関係の根本にある震えに関しては、年より資質ということなのかな。単純にみりあの人間強度が、年齢を遥かに超えて天才的だということかもしれんが。

誰もいないロッカールームとレッスン場、答えの返ってこない電話は、このままシンデレラプロジェクトが破綻した時の未来、絶対に到来してほしくない世界をちらりと見せる、サスペンスの手法。

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 ここの暗示は二期になって、常務の横車でプロジェクトルームを追い出される段階で現実になる。

何にもアツくなれない、クールで無気力な渋谷凛は、第一話でプロデューサーと島村卯月に掛けられた魔法を信じてアイドルの世界に飛び込み、そこで喜びを見出した。

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 渋谷の衝動主義に意識的になったのは第20話なんですが、見返してみると最初っからインパルス走る女でしたね、渋谷は。第7話でのプロデューサー問い詰めの苛烈さは、そのまんま第23話の島村問い詰めに繋がるポイントであり、好きなものほど傷つけてしまう不器用な女なのだろう。暴れん坊渋谷って感じだ。

心情を吐露するこの発話が、新田とアナスタシアの間をリレーするように行われていることは、ラブライカが人纏まりの存在として作中扱われており、見ている世界に差異がない状態であることの証拠です。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 逆に言うと、第7話の段階でラブライカのラブライカ力の高さを印象付けられたからこそ、第13話での蘭子加入、第20話でのアーニャ離脱と、二人がついたり離れたりする運動に意味を持たせられているのだろう。*にしてもラブライカにしても、接点がないはずの二人を大爆発させるための前フリをジワジワ仕込んでいるからこそ、急に思えるコンビ結成がスムーズに受け入れられるってのも、終わってから気付けるポイントだな。

将来の夢を語る言葉は「ステージに立つ」「CDデビューをする」「ラジオ出演をする」「TVに出る」という、外的な要素の羅列で成り立っています。 同時に自分の笑顔と客の笑顔、仲間と一緒のステージという、内的な夢も語っているので、全てが空疎というわけではないのですが。 過剰に『頑張って』しまう姿と合わせて、この無根拠なポジティブさには危うさが潜んでいるんじゃないかと、僕は思ってしまいます。 それを刈り取るのであれば、鮮やかに容赦なく、優しく踏んでほしいものだと、僕は願って止みません

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 おうコバヤシ、島村さんの空疎さは、これ以上ないほど鮮やかで容赦なく、優しく踏みつけられたぞ。このアニメ期待したことはだいたい叶うから、期待しまくると良いよ。(届かないボトルレター)

それでも、強い意志を持って前を向き、守るべき少女たちに彼は、不確実な未来を確実だと、約束をするのです。 少女たちの背中を押すプロデューサーとして、それは絶対に必要な言葉であり、此処にたどり着くことでようやく、プロデューサーは物語役割の端緒に付きます。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 この失敗経験と、各ユニットのデビューエピソードを経てプロデューサーは更に積極性を強め、第18話で智絵里とかな子に、第23話で島村に、アイドルが望まない道をあえて用意し、より良い個性の発露に導く積極性を手に入れる。誰かに言われるまま流されるのではなく、自分の理想を信じて常務の用意した流れに棹さしたりする。全ての物語に確実に顔を出す分、Pちゃんの物語は一番分かりやすく、段階を踏んだ成長物語だといえるのかも知れん。

ここで不審者に間違わられ、警察の質問を受ける流れは、1話で凛ちゃんを説得した時の流れと同じであり、切れ味の良いコメディーに鳴っています。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 不審者コントを話の潮目が変わったというスイッチにする演出は、第24話でも使われる定番ネタ。お話の流れが強く視聴者の感情を押し流すアニメなので、そういうところ分かりやすく仕上げてくれるのは有り難い限り。

1話ストも鮮烈な印象の残るシーンであり、その残滓が視聴者にまだ木霊していることを確信し、対比効果を最大限発揮するべく張られたシーンセットです。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 運命の公園は第23話でもう一度使われる、運命の交差点である。

ここに向かう道も、1話でそうであったようにアイドルに満ちてはいるのですが、写っている顔ぶれが変わり、時間の変化を強調しています。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 こっちは最終回、一年が経ちCPが解散したエピローグでもう一度使われるリフレイン。同ポジの過剰さは、高雄イズムの真骨頂だと思う。

対して本田さんは『いつも明るい本田未央』を装う余裕が一切ない、決死の表情です。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 ここで無様な姿を晒したからこそ、しまむー問題に対処する時に仮面をかぶり続け、問題を良い方向に引っ張っていった頼もしさが目立つ。一方渋谷はここで見せた頑なさや自分第一主義が最後まで変化しなかった印象が強いので、映画マジね、マジお願いします。

クッソ面倒くさい凛ちゃんの手を取ったのは、躊躇を乗り越え樹を一気に踏み越えてやってきた本田さんでした。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 ギリギリまで追いつめられて境界線を踏み出し、Pと渋谷の手を繋がせた本田の経験は、自分の本質に対する理解を強めたと思う。『何者でもない存在が何者かになるお話』としてデレアニを定義すると、本質ゆえの失敗とそこからの学習、実践とその失敗とそこからの学習と、段階を踏んだ成長を一番丁寧にやってるのは本田だし、自分が何者なのかを理解した結果を、社会なり身近な人間関係なりに還元できているのも本田自分の物語を終えた後、それを周囲にどう影響させていくかという余韻の部分までひっくるめると、二期も本田未央の物語だったといえるかも知れん。

これが序章においてメンター役を果たしてきた彼女の退場の示唆なのか、それとも「部外者だからなんだ!」と将来言うための布石なのかは、全然分かりません。 島村さんの危うさと同じように、いつか活かされる伏線なんじゃないかなと、個人的には思っています。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

「部外者だからなんだ!」と吠えることもなく、退場することもなく、美嘉は美味しいポジションを維持したまま一回主役をもらう高待遇でした。CPがガタピシ進むアイドル候補生集団だったころは、頼れる先輩としてガイド役を。ある程度成長して安定してからは、15人目のアイドルとしてキャラクターを掘り下げる動きが、それぞれ割り振られていた気がする。CP内部だとどうしてもお話が閉じ気味になって自由度が下がるので、メインで使える先輩枠が美嘉だったつーことか。

書いてみて思ったのは、アイドルマスターシンデレラガールズは狙いのハッキリしたアニメだ、ということです。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 思い返せばやっぱり、第7話までで1ユニットになるように一気に物語は構築されていて、『横』の相互的な広がりと『縦』のロングパスの巧さ、両方が綿密に張り巡らされた構成がここで(一応)完結するようになっている。 この話で自分はデレアニに更にもう一段階前のめりになったというか、女の子の感情を丁寧に掘り下げるだけではなく、それを実現するための冷静で緻密な計算が渦を巻いていると確信した気がします。

こういう頭デカチンな見方をするのもどうかなぁとたまには思うけど、そういう見方しかできないんだから、まぁしょうがねぇ。Pの言葉を借りれば『個性』ってやつか。

人間的な弱さも、アイドルへの憧れもしっかりと見せてくれた、シンデレラプロジェクトの仲間たちが、7話までに達成した成長を使って、今後どう飛躍していくのか。

アイドルマスターシンデレラガールズ 7話感想 - イマワノキワ

 この次の8話から11話までは個別のユニット話、12話はユニットをCPというプロジェクト単位まで引っ張り上げる話なので、一期最終話まで全体的な構造の話は待たされることになる。無論構造だけを楽しんでいるわけではないので、ユニット編は大体において最高でした。

 

 

第8話

その結果、前に出るスタイルそれ自体に変化はないわけですが、二話で片鱗を見せ五話で肥大化し六話で破裂し七話で再構築されたミーハーさが、なりを潜めています。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 とここでは思っていたんだけど、第12話では集団の中でのポジションが見える故に細かい感情の機微を取り落としたり、本田の完成はまだまだ遠い。精神的な変化が都合よく結果を連れてくるガッツストーリーを基本線として引きつつ、問題を乗り越えたと思ったら別の都合の悪さが顔を出す作りは、基本的に苦界であるリアルの生々しさを適切に料理した上で伝えてきていて、アイドルフィクションの一般的なラインを少し超えた魅力を出していた気がする。的確に都合よくて、的確に都合悪いというか。

勝手に盛り上がって、勝手に失望して仲間を振り回した本田未央は、過去に学んで己の背筋を正しつつも、彼女の強みである人間関係の視野の広さや、積極性を失うことなく人間的な成長を遂げているのです。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 ここで気づいたラインにそって本田は進んでいくんだけど、そのラインが最終話まで伸びているとは思っていなかったなぁ、この段階では。結構早い段階で伸びしろを使いきって、他キャラへのトス上げに専念するのかと思ってた。

前川は多田さんに辛辣なように見えて、このクソ真面目さから考えるとキツいこと言うのは心をひらいている証拠っぽい。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 前川はその女とユニット組んでイチャイチャキャイキャイ、♪ミクとリーナ、なかよくけんかしな ミクミクミク ニャーゴ リーナリーナロック♪って感じのトムジェリ百合を散々繰り広げた後、素敵なロックンロールの王子様に取られそうになったら『李衣菜チャン好みの可愛い女の子になるから……捨てないで……』みてぇなこと言い出す仲になるよ。……ほんとね、*の衝撃度は全ユニットでも最大だったマジ……マジ……。

今までの蓄積を活かしていたのはアナスタシアが顕著で、自身も言語コミュニケーションに難しさを抱えていたからこそ、悩める蘭子に一番最初に接触する役割を担っていました。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 序盤のアーニャは言語に困っている感じを強調してたけど、新田さんというパートナーを得てからコミュニケーションに問題なくなり、CPの優等生としてスルスルするんでいった。とは言うものの、ユニット人数の関係でボッチになったところをラブライドサンドされる流れの起点はここなわけで、どーでもよさ気なシーンに今後の展開の布石をさせるこのアニメらしい。

ここら辺は本田さんが見せた成長と同じく、七話までの物語で犯した失敗をどれだけ反省し、二度同じ過ちは繰り返さない人間に変化したのか、しっかり見せる意味合いがあります。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 同じ過ちはしないが、同根から発露した別の形の問題点はドシドシ出てくるアニメだということに、未だ気付いていない。

エキセントリックなのはあくまで作りのキャラであり、普段はフツーに喋ってフツーの服着てフツーに意思疎通する小器用さは、前川の仕事ということかもしれません。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 蘭子第一弾は熊本弁一本で話を進めていたけど、第13話の第二弾、第21話の第三弾と、みんなに判る普通の言葉を使っていくことで成長を見せていくことになる。キャラと素の乖離に関してはむしろ前川がきっちり拾い、ウサミン星人とのお話で完成させるわけだが、蘭子のキャラはエピローグまで一本伸ばしされ、否定されることはない。個性を全肯定して伸ばしていく方針は、(少なくともCP内部では)最後まで完遂される方向性だわね。

私物として色鉛筆とノートを持ってきたみりあと、自分の世界を『闇の預言書』と銘打たれたスケッチブックに書き記し続ける蘭子は、精神年齢的に近しいのかもしれません。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 すまんみりあ、この段階ではこのコバヤシ、君の大人らしさを完全に見落としておる。(リハク並みの節穴告白)

あのオチは今回の話を笑い混じりに、ソフトに着陸させるだけではなく、今後蘭子の言語をみりあが通訳し、真意を伝えるのに手間取らないための下準備にも為っていて、巧いなぁと関心しました。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 ここでの予想は完全に外していて、蘭子は如何に熊本弁『だけに』頼らず、他者に対して接近できる言語の選択が出来るようになっているのかという部分が、ストーリーの大きな軸になる。みりあちゃん通訳という外部装置がなくても、自分でどうにかするようになるという意味では、杏と蘭子の物語は近い気がする……っていうには、みりあちゃん通訳は単発ネタだったなぁ。CPのメンバー、結構早い段階で熊本弁をニュアンスで理解するようになるし。

艱難辛苦を経て物語の起点に帰ってくる構図は、非常に基本的であるが故に、こう言うふうに丁寧に描くと強い安定感と安心を覚えますね。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 『行きて帰りし物語』はエピソード単位だけではなく、第一話と最終話を綺麗につなげたシリーズ全体にも言える、デレアニの基本哲学。

丁寧なストレスコントロールを繰り返し、一話でしっかり神崎蘭子の物語が完結するよう、綿密な計算がなされたお話は、ニュージェネレーションの破綻と帰還というヘヴィなブロウを直前に食らっている分、柔らかく心地よいものでした。

アニメ感想日記 15/03/11 - イマワノキワ

 この記述を見るだに、蘭子のお話はここで完成! と思っているフシが見て取れる。確かに蘭子個人がクローズアップされる個人回はこれ一回だし、それでも十分なほどのエモーションがこのエピソードには詰まっている。のだが、チョイ役の仕草にも意味を過剰に込める演出力を活かし、蘭子の成長物語はこの後もドシドシと繋がることになるのだった。

 

第9話

そう言う例を鑑みると、今回のスパイス的な扱いは、必要なだけのリアリティを劇中劇に持ち込みつつ、それに引っ張られすぎない丁寧な立ち回りだったと思います。

アニメ感想日記 15/03/15 - イマワノキワ

 この回で見せた(見せすぎたとすら言える)アイドルバラエティのヤダ味は、後に『成人女性に園児スモック』という形で結実し、第18話で爆発することになる。掘り下げすぎればこの回のように過剰に時間を使うネタだし、毒が出すぎるので、あの一枚絵が持っている説得力は『CPサイドにも問題というか、足らないポインツがあるんじゃね?』と思わせる、最適な捌き方だったと思う。 

今まできらりに支えられ、怠ける姿をメインで捉え続けられた彼女への印象を、綺麗に反転させる見事な一手です。

アニメ感想日記 15/03/15 - イマワノキワ

 綺麗に反転させすぎた結果、天才杏ちゃんがCIを一方的に支え続ける構図が発生し、第18話で爆破しなきゃいけなくなるのであった。ここで感じていた『杏とアイドルバラエティの話としては良いけど、CIの話としては弱くね?』という感じが第18話で反転しなかった場合を考えると、本当第18話は自分の中で最重要エピソードなのだな。

このシーンがあるからこそ、杏が落ちかけた時智絵里が手を差し伸べ、白詰草というクイズの答えにたどり着き、アピールタイムで一つに揃った挨拶をこなす説得力、成長と融和のカタルシスが生まれています。

アニメ感想日記 15/03/15 - イマワノキワ

白詰草というクイズの答え』は、カエルさんのお呪いを否定しクローバーのお呪いに帰る第18話のエコーを考えると、無意識に何かを掴んでいる寝言な気がする。無論寝言ではある。

三人組でお話を回転させる時、『良い子・悪い子・普通の子』という古典的類型は非常に有効であり、『普通の子』は自動的に目立てない、ということなのかもしれません。

アニメ感想日記 15/03/15 - イマワノキワ

 かな子は可愛いから大丈夫だよ……というには、一期だけだと目立たない、いる意味薄いキャラだったと思う。逆に言えば、太くて食べてて可愛いことで目立ってる時点で、かな子は強いんだろうな。そういう『普通の子』がどういう気持で、どういう意地を持っていたのかが見えたっつー意味でも、第18話はゴッド。(狂信者の顔)

個人的な気がかりの話を続けると、今回杏の躍進の陰画として目立っていたのは、諸星きらりの不在だと思います。

アニメ感想日記 15/03/15 - イマワノキワ

きらりちゃんはオメーが思ってるほど弱い子じゃねーから!! 弱い部分もあるけどそこは子供チームがきっちりフォローするから!!! と来週の俺が叫んでいる。 CI-凸レーションにあんきらを分割しつつ、『これはこれで良い、良いっていうか最高です』という感想をちゃんと抱ける個別エピが入る。その上で第18話で杏のもろさをちゃんと描写し、それを拾い上げるきらりの唯一性も掬いあげるという構成の仕方は、だりなつでも共通だ。

 

 

第10話

この基本シフトを手短に見せているのがアバンでして、美嘉が茶化し、みりあちゃんは判っておらず、きらりは乗っかったり訂正したりして全体の流れを調整するという、凸レーションの基本的な立ち位置が既に見て取れます。 

アニメ感想日記 15/03/24 - イマワノキワ

 この話が優れているのは、『らしさ』だけではなく『らしくなさ』もちゃんと見せることで、誰か一人に過剰な負荷をかけない人間関係の構築に成功し、キャラクターの柔らかい部分も見せることに成功している点だと思う。第9話は『らしさ』は見せていても、『らしくなさ』まで飛び出すことが出来なかったので、第18話で補足したのかなぁ、とか思うね、後付の見方だと。

『クレープの原宿』という立地を観客と共有し、共感されやすいエピソードをMCの中に入れ込むことで距離を縮めるテクニックを、莉嘉は無意識のうちに掴んでいるわけです。

アニメ感想日記 15/03/24 - イマワノキワ

 これは第22話、鷺沢ぶっ倒れ事件の間をつなぐMCを莉嘉がやっていたシーンでも出てくる、彼女の強み。 

まぁあんだけ良い子達がいたら、俺だってモテたいわけで、何が言いたいかというともっとプロデューサーのモテシーン来いッ!! ってことです。

アニメ感想日記 15/03/24 - イマワノキワ

 あくまでPとしての節度を守っていたように思うし、渋谷・島村・神埼あたりは恋心抱いているようにも見えるし、それもまたプロデューサーとしての信頼関係のように見える。恋愛要素は核弾頭だと思うので、そうとも受け取れるけど明言はしない間合いを維持し続けたのは、巧い足運びだなと思います。

特にプロデューサーには尻尾ブンブン振ってるのが見えて、『これじゃ、蘭子じゃなくてワンコじゃん』っていう感想を持ちました。(ダジャレマンNEO爆誕)

アニメ感想日記 15/03/24 - イマワノキワ

 第22話の逆熊本弁でのエールで、蘭子とPの物語は完成するわけだが、蘭子はずっとP好きだし、第8話の少女漫画力を考えると当然の結果とも言える。それにしたって最悪のたぐいのダジャレだな、ダジャレマンNEOさんよ。

気丈な態度が折れかかるのが、自分のミスではなく他人の傷であるところに、きらりの精神性が垣間見れます。

アニメ感想日記 15/03/24 - イマワノキワ

 これは自分のミスでPが頭下げてる姿を見た島村さんが、心をベッキリ折る展開と重なる。『そのくらい感受性が強くて優しい子たちなんですよ』とも言えるし、『優しさという美徳も、時には自分を傷つける危うい武器よね』という闇色の指摘だとも言える。要素の両面性を掘り下げていくってのは、マイナスに見える部分をプラスとして捉える使い方だけではなく、このようにプラスな面のマイナスを掘り下げる使い方もしているのがデレアニ。 

お互いがお互いを支えあい前進するラブライカや、杏の天才性で道を進んでいくCIとは、また別の形かな?

アニメ感想日記 15/03/24 - イマワノキワ

 はっきり言え……『第9話でのCIの見せ方は、杏一本に頼りきりすぎて正直気に食わない』とな!! こうしてネガティブな感情をワンクッション挟んでしゃべるスタンスは、批評の鋭さという意味合いではそこまで良い方向性じゃねぇんだろうなぁ。なので感想としているわけだけども。

ネガティブなことを口にして自分にかかるバックファイアに耐え切れない程度に、僕が脆いということでもある。

このような多面性を見せることで、キャラクターはより魅力的に、より"リアル"に、視聴者に接近し、より好かれていくわけです。

アニメ感想日記 15/03/24 - イマワノキワ

 何度も言ってるけど、ポジティブでもネガティブでも両面から光を当てるデレアニのキャラの彫り方、それを全キャラクター全25話貫通し尽くした所が一番すごいところなのだ。

今は子供っぽい憧れが先行している(性的な意味も含めた)仄めかしの話術が、近いうちに大きな武器になると予感させる描写で、キャラ記号とのかみ合わせがとても良いと感じました。

アニメ感想日記 15/03/24 - イマワノキワ

 ここで感じた『子供っぽい憧れ』は、第17話における莉嘉の物語で、もっとも重要なキーワードになる。子供/大人という差異は結局精神や肉体といった個人的な要素ではなく、社会的な視線がどういう角度から己を貫通するかという、社会的取っ組み合いの結果として獲得されるものであり、その悪戦苦闘が第17話における莉嘉の物語だ。

結局『仄めかし』を武器として使いこなすのは本編中ではなく、姉と恋人つなぎしてたエピローグになるわけだが、本編は何者でもない少女が自分の武器に気がつくまでの物語なので、答えにたどり着くのは終わりで良いのだ。