イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第70話『プリンセス・ファルル』感想

いろいろあって停滞したお話の流れを、ぐいっと引き戻す月間第二弾ッ! というわけで、遠くはプリパリから叙情性の核弾頭が今着弾!! というお話でした。
すっかり人間性溢れるスーパーアイドルとなったファルルや、ちびっこギャングから可愛いレディに変化したガァルル、そして束縛する親から見守る親へと進化したユニコンなど、色んな成長の見れる回となりました。
同時に怪盗ジーニアスも自らの野望に向け猛進しており、プリンセスチームの一角ファルルをころっと手中に収める大殊勲。
久々にボスっぽいことをして、悪役としての株が上がった感じがあります。
……でも無垢なるファルルをだまくらかすのは、おじさん関心しないな。


やっぱりファルルは存在感のあるキャラクターでして、一期のラスボスだったという以上にファンの気持に刺さる、印象的なキャラです。
彼女が展開した物語のインパクト、メッセージ性、綺麗さというのはやっぱり特異で、それが胸に残っているファン(というか僕)は、特別な扱いというのを期待してしまう。
それに違わぬ立派なエピソードに今回仕上がっていて、非常に満足でした。

ファルルは無機質であるがゆえの無垢さというか、機械のイノセンスの体現みたいなキャラであり、その純粋性が貫通してSFテイストまで獲得している稀有なキャラクターだと思います。
そんなファルルも死んで蘇り、造物主と和解し、妹まで出来てすっかり人間っぽい動きをするようになりました。
かといって彼女の特異性が失われたわけではなく、女の胎から生まれた『普通のトモダチ』とは違い、物質的なホームを持たない彼女はずっとプリパラで暮らし続ける。
夕日迫るプリパラに帰還していくファルルとガァルルの姿は、凄まじく刺さる切なさを持った良い絵だったと思います。

そこからすぐさま子守唄(あのファルルが妹のために子守唄!)に繋ぎ、人間型の妹ができてもずっと大事な妹のままの、ただの玩具のファルルののんの怪我がある。
あからさまに不審者なジーニアスと会話をしたのも、大切なファルルののんを助けてくれたからこそでしょう。
今回のお話の作り方は愛を知って生きて死に、蘇って人間になった新世代のピノキオに相応しい叙情性の連続攻撃が組み立てられていて、良いシーンの連続でムードを造っていたからこそ、ジーニアスのキザなセリフも浮かずにハマる。
ダンスシーンの幻想的な空気は、ちょっとプリパラらしからぬムーディーな雰囲気を巧く造っていて、ファルルが『騙される』のも已む無しという感想を巧く造っていたと思います。

偽物とはいえロマンスはロマンスであり、ファルルが『恋』まで知ってしまった展開を踏まえてのアレンジバージョンステージは、とても良かったです。
音もちょっと艶のある感じになっていて、今回の事件を踏まえた歌詞もグッド。
ストーリーの一部に食い込んでいるステージは、やっぱり印象に残りますね。

地味に今回面白かったのは、ファルル&ユニコン親子の親離れ・子離れの描写。
ニコンがファルル好き過ぎてカルマ溜め込み過ぎな馬だってのは皆さんご存知のところですが、そんなユニコンもいろんな経験を経て、ガッシリ握りこんでいた娘の手を離し、新たな挑戦へ送り出した。
ファルルもどんどん自意識を健全に発達させ、寂しさを覚えつつ一人で頑張る決意を固め、素敵な男性(偽)との出会いなんかも経験した。
姉が好き過ぎてかじりつく系妹ガァルルの成長も含めて、ファルル一家は確かに道を歩いているんだなぁと感じさせられて、温かい気持ちになれました。
『噛む』というガァルルの個性を矯正せず、『気持ちの良い甘噛』というソフトなギャグながら、そのままに伸ばしている着地のさせ方、ほんとプリパラらしくて好き。


今回のお話、もう一人の主役であるジーニアスですが、シビアな現代っ子には通じないキザ攻撃もピュアな機械のお姫様には有効。
ファルルの優しさを利用する形で、見事理想のチームの第一歩に近づき、久々にボスっぽいところを見せてました。
バルコニーでの出会いの流れ、他のキャラなら台無しになるギャグがぶっ込まれる所なんだけど、ファルルは一人だけ童話の世界の住人だからなぁ……ジーニアスの得意技と噛み合っちゃった感じだ。

ていうか『詭弁を弄して、子供の頭の良さに付け込む』『真実の目的を隠し、耳障りの良い事実を一部だけ伝える』『都合の悪い真実を公開された場合、自分に危害が加わると言って子供の優しさを利用する』などなど、実践的な拐かしのテクニックが満載でしたね。
アイツほんと、『真実は言っていないが事実の一部を言う』っていう詐術のテクニックに忠実で、どうしてファルル相手の時だけ本気だすかなッて感じだよ。
これまでギャグ時空の住人を相手にして学習した攻め方を、一気に使ってきたと見るべきか。

地味に委員長がジーニアス=プリンスである伏線に気付く描写があったり、進められるタイミングで進めていく意欲みたいのが感じられて、今回のお話は個人的な好みにバッチリでした。
やっぱ自分としては、話に軸はあってくれたほうが見ていて楽であり、グイグイ話が進んでいく今回みたいな話が要所要所にあると、見る足場に困らず良いなぁ、と。
あんま関係ないけど、シルエットで示された理想のチームにどう考えてもふわりがいて、ほんまプリンス君未練タラタラふわり好き過ぎ人間やな、と。
そこら辺ひっくるめて、ふわりとファルルを面通しすると同時に、ふわりとプリンスの関係を再話してたんかな。

というわけで、ファルルという大駒を使ったのに足りる、手応え十分なお話でした。
登場以来29話、やることといえば女にちょっかい出すのと、小中学生の財布からプリチケをギること、そしてプリパラを大真面目に見続けることだけだったプリンスも、ようやく会心の一発を入れた感じがあります。
そんな流れでやって来るのはらぁらの正妻、久々のなおちゃん話。
うむう、楽しみだ。