イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

魔法つかいプリキュア!:第6話『特訓! 魔法の杖! 先生はリコのお姉ちゃん!?』感想

天才児と劣等生が手を繋ぎながら歩いて行くアニメ、今週はリコのシスター・コンプレックス。
『優秀なみらいの背中を、出来ないリコが追いかける』という基本構図はこれまでと同じながら、複雑な感情をぶつける相手が具体的に出てきたり、運命の出会いをけなされたみらいが余裕をなくしたり、より踏み込んだ描写が見られました。
『今、おねえちゃんって言いました!』の食いつきの良さといい、実技試験に合格した時の吹き上がりっぷりといい、みらいはリコ好き過ぎだなぁ……良いぞ。

今週も『リコは出来ない子』という、これまでの話でも徹底されてきた描写を軸に話が展開していました。
しかしただポンコツなだけではなく、強く愛すればこそ捩じれていく感情の複雑さや、リコから姉だけではなく、姉からリコへの想いをしっかり描写したことで、奥行きのある悩みが巧く演出できていたと思います。
水操作の授業を上手く使って、姉の真似事である『像の玉乗り』は上手く行かず、『ペンダント』という姉から受け継いだ個性で困難を乗り越えるという具合に、コンプレックスをビジュアル的に見せていたのも良かったな。

優秀な姉がとても好きで、だからこそ姉のようには上手く出来ない自分に悩む今週のリコは、どう見ても話の主役でした。
主役だからこそ受け止められる話の重たさ、それを乗り越えた時の爆発力が今回の話しにはあったと思うので、来週以降リコの『できない子』っぷりにも変化が見えてくると、個人的には嬉しい。
基本構図をがっちり強調してくれるのは良いんだが、そろそろ変奏的なパターンがほしいところではある。


そういう意味では、今回みらいが見せた余裕の無さは、これまでの描写から半歩踏み出した演出だったと思う。
無論みらいは直情型で知識の足らないキャラとして設定されているのだが、これまでの所短所よりも長所が目立ち、足踏みしない真っ直ぐさで困難を打破していく役どころが多い。
今回も、みんなが尻込みした水操作の授業に最初に飛び込み、事態を進展させているのはみらいだ。

そんな『デキる子』みらいが焦るシーンがあったのは、常に成功しすぎて彼女に可愛げを感じないところまで近づいていた自分としては有りがたかったし、それが自分の問題ではなくリコとの関係性においてだったのも、彼女が何を大事にしているか見れてよかった。
姉から受け継いだペンダントを重荷と感じ、うっかり否定してしまうリコに対し、必死の形相で『それはあなたとわたしの絆だから!』と言葉を紡ぐみらいは、これまでの典型的な『賢い愚者』型主人公からはみ出した、彼女らしさを感じた。
思い返してみれば、ずっと魔法に憧れていた彼女にとって空から降ってきたリコはまさに運命の相手であって、その出会いを否定されるのは穏やかではないだろう。
そういう心の動きがちょっとお行儀の悪い、感情の噴出となって出てきたのは、とても良いことだと思う。
ドラマは常に、計算された破綻(とその修復)の中にあるのだろう。

個人的には今回見られた『リコが道を踏み外そうとしたことに、みらいが余裕をなくし焦る』という構図を、主客を逆転させて演じてくれると面白かろうな、と思っている。
新しい可能性であり直感の権化であるみらいに引っ張られてきたリコが、彼女のために彼女を引っ張る展開がどっか出てくると、役割交代のダイナミズムも感じられるし、お互いを思う気持ちも強く感じられる。
いや実際、みらいちゃんリコ好き過ぎだって……そのくらい派手にアピールしたほうが、あのポンコツ落とすには良いと思うけどさ。


『ふたり』にフォーカスした話の展開も変わらずで、級友も悪役もはーちゃんも、話の真ん中には立たない。
しかしジワジワと描写が蓄積されてきて、級友それぞれのキャラクターだとか、話の勘所を的確に煽るスパルダさんとか、味のある描写もあった。
話がややこしい方向に拗れそうになったら即座に泣き声をあげ、『自分より弱いモノ』をケアさせることでエゴの暴走を防ぐはーちゃんは、なかなか良く出来たデジタル赤ん坊だと思う。
生身の赤ん坊が持っているこっちの事情を考えない傍若無人さを制御するべく、デジタルアプリとして携帯電話に閉じ込め、欲しいタイミング以外は画面に出さないことに成功しているのは、これが玩具と連動していること含めて非常に上手いと思う。
児童の児童性を都合よく剪定し、その暴走を許さない制御が物語のスタンスとしてどうかってのは、まぁ別の話だ。
『甘い匂いがするモフ~』と言いながら、魔力と百合という話の中枢に必ず引き寄せられ、物語の進展をスムーズにしているモフルンといい、サイドキックの捌き方は異常に上手いな、このアニメ。

というわけで、リコがみらいの助けを借りて、大きな山を乗り越える話でした。
やっぱ比較的大きな試練があると、その当事者だけではなく助力者も魂の地金がよく見えて、キャラを好きになれるな。
みらいのリコちゃん好き好き病も堪能できたし、こういう感じの話がどっさり来てくれると俺に良しっ! て感じであります。