イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第2話『東方仗助! アンジェロに会う』感想

穏やかな街の穏やかな日常に伸びる影を、超常の力で払うアニメーション、今週は主人公最初の戦い。
映像にされて声がつくと最高にキツいサイコ殺人鬼と、ダイヤの魂が腹にズンッっと座った高校生との、知略と魂を尽くした戦いが切れ味鋭かったです。
ただ腐れサイコに知恵比べで勝って気持ち良いーッ!! ってだけではなく、非常にあっけなく身内を殺されることで、街に迫る影の濃さと痛みをちゃんと描写して、主人公の動機に切迫感を与えていたのが良かったな、やっぱ。

前回強調していたように、クソサイコがスタンドという異常な力を凶器に、杜王町を脅かしているこの状況は、仗助には直接関係がありませんでした。
しかし祖父をぶっ殺され、自分の無力を思い知らされたこと、何よりも警察官という『平和の番人』の使命を祖父から受け継いだことで、仗助にとってスタンドによる連続殺人は『俺の事件』になる。
『ジジイの志を継ぐ』という誓いが空言でないと証明するためには、一高校生として平和な日常を謳歌しつつも、クレイジー・ダイヤモンドという唯一無二の力を正しく使い、他人の平和も守る必要が今回生まれたわけです。
この当事者性が最初のエピソードでしっかり生まれているのは、良い導入だなぁと思います。

動機に重さを与えるのは常に能力(『お前だけが出来るッ!』という説得力)と敵の描写(『あいつだけはぶっ飛ばさないといけないッ!』という説得力)だとおもうわけですが、今回はその両方がしっかりしていました。
サイコ野郎が凶器を握りしめ、自分の母親に迫るその瞬間でも一切慌てず、『治す』という能力を有効活用して厄介な敵を封じ込める冷静な手腕。
身内を殺された激情を頑張って抑えこみ、為すべきことを為すために全力を尽くす落ち着き。
祖父の傷を癒やそうとする優しさと、それが届かない哀しみ。
今回の戦いで描写されたのは、主人公・仗助が戦いに必要な力を持っているだけではなく、それを正しく使うモラルも兼ね備えているということでした。

『水』の様々な形態を駆使した知略合戦も面白いのですが、むしろその倫理性の高さこそこのアニメの面白さなのだなと、祖父の死を前に立ち尽くす仗助に、承太郎が言葉をかけるシーンで思いました。
綺麗事を上から目線で垂れ流しにされるのではなく、実感のこもった言葉でしっかり確かめつつ、自ら傷を背負う戦いのの中でこそ、気高さを証明していく泥臭さもちゃんとある。
頭脳戦含めたアクションと、テーマとドラマがしっかり混ざり合い、お互いを引き立てる面白さを感じることが出来て、今回の攻防戦はとても良かったです。

スタンド能力は能力者にしか把握できないので、仗助の祖父に代表される『表の世界の正義』は有効な手が打てず、主人公たち正義のスタンド使いがどうにかするしかない』という構図も、今回よく見えました。
死刑という法正義の極北ですら捌けず、能力なしでは無残に狩られるしかない『悪』に対抗できるのは、同じ能力を持った主人公だけというのは、キャラクターの唯一性が高まる良い手段ですね。
そういう基本構造の強さがあるからこそ、スタンド能力の奇想、それがぶつかり合った時の広がりが上滑りせず、ドラマの中で盛り上がるという意味合いでも、今回しっかり仗助が活躍したのは良かった。
三部主人公である承太郎も、しっかり見せ場を譲って新主人公を立てる動きしてたしな。


正義の気高さを強調するためにも、またお話のテンションを維持するためにも悪役は悪くて怖くなければいけないわけですが、アンジェロは正直やり過ぎなレベルまでサイコ力が加速していて、非常に良かったです。
暴力行使を一切躊躇わないブレーキのなさと、蛇のようにじっと機会を待つ周到さ、『水』を使いこなす狡猾さが同居している危険さが、良く伝わってきました。
何より他人の血を流すことをなんとも思わない、むしろ快楽と感じる魂のクソっぷりがアニメになってより強調されて、見ていると『あいつだけはぶっ飛ばさないといけないッ!』という気持ちが自然と強くなる。

その悪辣さを強調する犠牲になった仗助の祖父ですが、出番はそんなに多くないとはいえ、印象的なキャラクターでした。
お茶目なジジイから一瞬で『正義の番人』に変わる凄みもありますし、死んだ後にその日常を偲ばせる『クローゼット』の描写をさり気なく入れてくるのも良い。
どーでもいい奴がどーでもよく死んだ所でお話しは盛り上がらないわけで、仗助が『爺ちゃんの遺志を継ぐッ!』と宣言して『よく言ったッ!!!』と感じることが出来るのは、コンパクトな描写でキャラクターに感情移入させる巧さの証拠だと思います。

『二階にも雨漏りしている』という説明シーンに祖父の仏壇を選ぶところとかも、このコンパクトな巧さの精髄だと思います。
仗助の祖父(の思いを背負った仗助)に視聴者が共感すると判っていればこそ、あえてドブゲロ人間のアンジェロにそれを蹂躙させ、視聴者の怒りを煽る。
そしてそれをわざわざ言葉で説明するのは興ざめだし尺も取られるから、あえてさっと流す。
何分原作が長大なので、尺をどう捌いていくかは大きな問題だと思いますが、この描くべきところと省略するところを的確に見極めた演出は、製作者の手腕を信頼する大きな手がかりになると思います。
構成と演出が、狙い通り機能している安心感というか。


と言うわけで、主人公・東方仗助最初の事件でした。
彼が主人公である理由が緊迫感のある能力バトルとともにしっかり語られ、能力の限界説明あり、脅威のヤバさ説明ありの、良い出だしでした。
お話が始まるにあたって必要な説明をしっかりしつつ、仗助が杜王町のサイコとの戦いを『自分の事件だ』と感じる当事者性を、バッチリ獲得しているのがほんとに良い。
ここら辺はジョジョの持ってるポエジーが凄く巧く働いてる部分で、切ない詩情がお話に奥行きを作っている一例だなぁと感じます。

来週からは虹村兄弟のエピソードが挟まって、また緊迫したバトルが続きますが、個人的には四部はゆるーい日常の楽しさも大きな魅力だと思います。
はやく頭の弱い男子高校生のキャイキャイ見てぇなと思いつつも、今回の仕上がりを見ているとシリアスなバトルも超おもしれーんだよなぁ……。
贅沢なジレンマに頭を悩ませつつ、来週の放送を心待ちにしたいところです。