イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第9話『山岸由花子は恋をする その2』感想

『こ、これはラブコメじゃねぇ……一人の男と一人の女がッ! 『魂の力』を比べ合う闘争(バトル)だッ!!』系アニメーション、ヤンデレに死ぬほど愛されすぎる後編。
スタンド使いだから異能があるからとかそういうもんじゃねぇ身勝手さと人間観察力を誇る由花子の拘束を、康一くんがどうにか独力で突破するお話でした。
いかに相手が能登声でも、全く羨ましくならないハード・コア監禁っぷりでしたが、"エコーズ"もACT2に進化し、前回予言してたように『この別荘を出るときは、一回りも二回りも成長』する展開。
こうして並べてみると、形兆以降の展開はマスコット一般人だった康一くんを、ハードな戦場で前線張れる戦士に鍛えあげる試練なのだなぁ。

電話をかけたり相手をふっ飛ばしたり、"エコーズ"の多彩な活躍が目立った今回ですが、それを使いこなす頭のキレと度胸こそ最大の武器。
超やばいヤンデレ女に立ち向かうことを決め、彼女の邪悪な影響力を意味する『髪の毛』を切り捨てて覚悟を示すシーンは最高にクールでした。
『公衆電話の存在を思いつく→それを由花子に先読みされる→潜ませた"音"で電話をかける』という知恵比べの見せ方も良かったし、原作の美味しいシーンをより鮮烈に見せる仕掛けを、色々仕組んでくれているのは非常に良いね。

康一くんがスケールデカイのは、どんなに自分が非道い目にあってる最中でもその痛みに立ち止まることなく、その先を見据えることだと思います。
『公衆電話を使う』という解決策を思いついた時も、見つかったらどうなるかとかより先に『警官が殺されるッ!』という発想が出てくる辺り、優しいという言葉ではくくれない強さを感じる。
こういう器のデカさを細かく演出していればこそ、勝つだけではなく乗り越えてしまう決着の付け方も非常に気持ちよく受け止めることが出来るわけです。
"エコーズ"は音のスタンドなので、SEの切れ味が勝負どころになるわけですが、今回の"ボヨヨン"の"ボヨヨン"っぷりはマジ最高でしたね。


ACT1では精神的攻撃しか出来ず、故に『覚悟』を持ちすぎてる由花子には有効打にならない状況を一回見せて、そのピンチが康一くんの『覚悟』を促進してACT2に進化する流れも、テンポの良い場面転換で気持よく楽しませてくれました。
結局ジョジョの戦いを制するのは精神の強さなんだけど、その発現たるスタンド同士のせめぎ合いも一切妥協せず、ちゃんと盛り上がるよう組み立てているのが、あの『え? スタンド死んだの?』というシーンからよく分かる。
というか、精神の強さや性質が物理的戦闘力として反映されるスタンドの設定が巧いというべきか。

由花子はエゴイズムの権化たるキレた女なんですが、その眼力は圧倒的に本物で、ヘタすると仗助や億泰以上に康一くんの本質を見抜いています。
『情けない姿をしつつも、瞳の奥になにか強靭なものを宿している』『圧倒的な将来性を持つ』『本物の男』という分析はどれも正しくて、康一くんの結城と優しさに魅入られている視聴者には頷けることばかり。
間田のような『なんにも解ってないどチンピラ』を描くのも巧いし、由花子の『狂った賢者』っぷりも的確に描写できる幅の広さは、話のバリエーションにも繋がる所です。
何よりもやはり、色んな人間が面白く描けると物語に厚みがでて、飽きることがないわけで、由花子がただのプッツン女ではないことは大事だなぁと思います。

スタンドの設定があればこそ、由花子の髪の毛が『家を締め上げる』という無茶苦茶をやっても、『まぁ、あんだけごん太な精神してればそら強いよね……』と納得できてしまう。
強敵がいればこそ試練は試練として機能し、それを乗り越えた成長にも説得力が生まれるわけで、由花子のナチュラルな狂い方と"ラブ・デラックス"の『凄み』がしっかり演出できていたのは、康一くんを鍛えあげるドリルのラストに、とても相応しかったと思います。
ホラー映画さながらの演出や切れ味するどい表情作画、そしてブチ切れまくりの麻美子の演技と、由花子の『凄み』を見せるシーンも良かったし、そことの落差を作る可愛らしさの見せ方も相変わらずグッドでした。

そんな由花子を丸ごと飲み込む男に成長し、気付けば由花子が理想としたような『将来性のある男』になってて複雑……というオチの付け方も、相当好きです。
相手を倒すだけではなく、直したり癒やしたりすることで『日常』に帰還させる強さが主人公の資格になってるのは、仗助と同じだなぁ……とか思ったけども、由花子のキレた性格がこれで治るわけじゃあないのよね。
ただ、康一くんがただ殴り飛ばすだけではない決着を引っ張ってきたおかげで、由花子はその獰猛な精神に一種の方向付けが出来るようになるし、由花子のハード・コアな試練も悪い影響ばかりを康一くんに与えたわけではない。
こういう一種の公平性が男と女の間にあるのは、中々タフでジョジョらしい恋の描き方だなぁと感じました。


そんなわけで、精神力の塊のような厄介な女を乗り越え、康一くんがまた一つ輝きを増すお話でした。
今までは一方的に助けたり、互角の相棒として助けあったりしてた仗助&億泰の力を一切借りず、独力で窮地から脱出する展開が、彼の成長をよく表していたと思います。
億泰はアイス食って他人の心配してるだけだったなー……ホントあざといなあの高校一年生……。

そして来週は『日常の中の非日常』を描く第四部、その代表たるエピソードが来るッ!
起こっていることだけ見ると非常に地味なのに、なんとも言えないユーモアと生活感、意外性が溢れる僕も大好きなお話です。
原作のエッセンスをがっちり把握し、的確にアニメに作り変えてくれている第四部がどう見せてくれるのか、非常に楽しみです。