イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョーカー・ゲーム:第9話『ダブル・ジョーカー(後編)』感想

陸軍精鋭によるもう一つのジョーカー! 冴え渡る知略と知略!! 帝都を舞台に血沸き肉踊る超人スパイVS超人スパイッ!!! っていう展開にはならなかった、風機関エピソード後編でした。
前後編つうコトで前回の泥臭いダメダメっぷりを足場に、なにかさわやかなものが残る展開を期待していたわけですが、全編風機関をディスり続けて終わった印象。
個人的にはダメダメな人にダメダメだと言っても、言ってる側が格好良くはならないと思うわけで、惜しい展開だなぁと思いました。

鎖国された陸軍が内部の価値観で腐敗していく様子が、同じように前後編だった第1話・第2話でも描かれていたわけですが、佐久間さんはD機関に翻弄されつつもそこから学び、『スパイのやり方を取り込んだ軍人』として自分の足で立つ終わり方でした。
あれは佐久間さんを立たせたD機関の株も上がる爽やかな終わり方でしたが、今回は陸軍式にしがみついたまま、『必殺の信条』を自分に向けて自決しちゃうという終わり方で、なんとも虚無的でした。
結城中佐がさんざん『現場に死体が残ると怪しまれんだから、実利的な面から考えて殺人も自殺もNO』って言ってたのに、愚かな方法論を選びとってしまう袋小路っぷりがなんとも言えない。

『賢い陸軍は佐久間さんで描いたから、今回はD機関が唾棄し、結局変えられなかった日本的組織として陸軍を描こう』っていう狙いだったのかも知んないけど、オレはDボーイズ並にキレる奴らと集団VS集団で、『九大天王VS十傑集』みたいな総力戦する所が見たかったの!(結局煮えるシチュエーションで楽しみたいだけマン)
『こんなスーパースパイ集団がいながら、なんで日本は外交的悪手を打ち続けたの?』という疑問に、『上も同僚も民衆も、みんなバカだから負けました』というアンサーを出しておく回でもあったのかなぁ……。
風機関がD機関がボーイズ並に有能だと『こんだけの組織が2つあるなら、日本負けるはず無いじゃん』という疑問が浮かんできちゃって、『どれだけ諜報という局地戦で有能でも、外交という総力戦に負けた悲劇の特務機関』という全体像がボヤケちゃうかもねぇ。

風機関のクソダサスパイごっこっぷりは前編に引き続くよく演出されていて、クソみたいな隠語を剥き出しでパなす所とか、立ち回りが全般的に塩っぱい所とか『あ、こいつらダメだわ。最初からスパイの土俵乗っかってねぇわ』という印象は上手く出せていたと思う。
その印象を足場にしてボロクソに陸軍気質をDisる話なので、映像による印象操作が巧いのは良いことなんだが、そのテーマ自体に爽快感がないのはやっぱなぁ。
色々文句言いつつも、オレはD機関のスタイリッシュなスパイっぷりを気持ちよく楽しんでいたんだなぁと思い知らされた。


つうわけで、前回望んだ 

単純にクソダサ陸軍のダメダメスパイをボッコボコにしていい気になるだけではなく、それを踏み台にしてなにか広い景色を見せるような展開

ジョーカー・ゲーム:第8話『ダブル・ジョーカー』 - イマワノキワ

とはちょっと違った話になりました。

『見たかったものと違げーッ!!』ていう文句の付け方は、観客のエゴが暴走しまくっててあんま好きじゃないんだけど、せっかく『組織VS組織』という新しい側面からD機関を切り取れそうな題材だったのに、ライバルが勝手に自滅して終わっちゃって不完全燃焼な感じを受けました。

最終的にさすDで終わることが分かっていても、ちょっと不自然に敵が弱くなるところがあっても、やっぱり乗り越えるべき障害はそれなりに大きく賢く見えたほうが、爽快感はあるなぁと思いますね、やっぱ。
『爽快感はいらない。戦時日本の閉塞感、どれだけ未来を見据えてもどこにも行けない閉じた感じを出したい』ってのなら、Dボーイズが主役である必要もないしなぁ……。
個人的には、結構迷いがあるエピソードだったなぁという感想です、ハイ。